復帰作『ローガン・ラッキー』の東京国際映画祭での公開に合わせ、6年ぶりの来日も決まっているスティーブン・ソダーバーグ監督。そんな彼の新作『Mosaic』は、HBOと共同製作したドラマで、なんと視聴者が自らの選択により物語を追っていくことができる、インタラクティブな体験型アプリもリリースされるという。アプリは無料で、来年1月のテレビ放映に先んじて、11月にはダウンロード開始する予定だ。

3年がかりのプロジェクトだったという『Mosaic』は、オリヴィア・レイクというあるセレブリティーの殺人事件の謎を追うクライムミステリー。HBOでは6時間のテレビシリーズとして放送されるが、アプリでは7時間のエピソードが楽しめるという。

アプリでは、ストーリーは14のエピソードに分割されている。メインページのストーリーマップを参照しながら、ユーザーは自分の好きなエピソードから見ることができる。そして、そこで語られるストーリーの中にある事件の”手がかり”を見つけていく。最後には、どのキャラクターのエピソードが一番見たいかを選ぶ選択肢が表示される。まるで、自分が刑事になって参考人の話を聞きながら、捜査をしているような気分になりそうだ。

監督は、シャロン・ストーン演じるキャラクターを中心にエピソードをつなぎ、「自分で作り上げた物語に執着することで、人々の人生が消費されていく」さまを描きたかったという。

「このドラマのテーマは、残酷にも誰かの夢やアイデンティティが破壊された時に起こるエネルギーについてです。そんな時、みんなきっとそれぞれ違った反応をする。自分の内に向けて爆発する人もいれば、外に向けて爆発する人もいるでしょう。」

「シャロン・ストーンは、2度と戻らない大事なものを失った女性を、ギャレット・ヘッドランドは、自らのアイデンティティを手にしはじめた男性を演じます。そんな2人の相反するエネルギーがぶつかった時、片方は壊されてしまうのです。」

ソダーバーグ監督は、ずっとストーリーよりも登場人物のキャラクターに興味があったとし、今回の試みは、ストーリーラインに沿うことに固執せず、より自由にキャラクターを掘り下げることを可能にしたという。ある一つの出来事を、視聴者は異なるキャラクターの視点によって体験していく。全く同じシーンを、異なる人物が語るエピソードで見せるために、3回ずつ撮影したこともあったそうだ。

「視聴者が物語を追っていけばいくほど、登場人物と時間を過ごせば過ごすほど、テレビドラマとは対照的に、小説を読んでいるかのような感覚におちいるでしょう。複数の視点で出来事を体験することは、普通のスタイルで物語を見るよりも深い体験になると思います。最後には、あなたは自らが選んだキャラクターの心の中に入り込んだような気持ちになる。それこそが私の目指すものであり、『Mosaic』が他の映像体験とは全く異なる理由です。」

ソダーバーグ監督は、今作がこうしたスタイルの草分け的な作品になることを願っている。『Mosaic』がうまくいけば、新作の製作も視野に入れ、今後はコメディなど他のジャンルでもこのスタイルを取り入れていけないか考えているそうだ。キャラクターに重きをおくソダーバーグ監督だからこそ作ることができた、新しい映像体験。今後が楽しみなプロジェクトだ。日本版のリリースは未定だが、興味のある方はぜひアプリをダウンロードしてみてはいかがだろうか。

参照
http://www.indiewire.com/2017/10/mosiac-steven-soderbergh-hbo-interactive-branching-narrative-1201884623/
http://www.indiewire.com/2017/10/mosaic-trailer-stephen-soderbergh-hbo-details-1201884541/
http://www.refinery29.com/2017/10/175566/hbo-mosaic-app-steven-soderbergh

北島さつき
World News&制作部。
大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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