2015年のドン・ハーツフェルトの短編アニメーション『明日の世界』はたった16分の中で完璧な未来のビジョンを構築した。惜しくもその年のアカデミー短編アニメ部門では『ベアー・ストーリー』に敗れたが、他の数々の映画祭で賞を受賞し、依然として批評家の評価は高い。
 その『明日の世界』の続編となる”The World of Tomorrow : The Burden of Other People’s Thoughts”が”Fantastic Fest”で上映され、注目を集めている。
 最新作はハーツフェルト作品の代名詞の棒人形と、簡素でありながらどこか風変わりなタッチの描写でまだ見たことのない観客の関心を引く傍、引き続き前回からの試みである記憶、意識に対する考察、クローンとオリジナルの人間の差異などの問題をさらに深く考察することに成功している。
 『明日の世界』では4歳の少女エミリーの前に未来から彼女のクローンが訪れ、技術の発展により「死」が存在しない未来へ旅をする。第1作がひたすら「思考」の端まで至る旅だとすると、第二作は壮大な内側への、人間の無意識への旅と言えるだろう。(タイムスリップSF作品だが)わかりやすく紡がれた時間の移動は一回の鑑賞ですぐ理解できるだろうが、ハーツフェルト作品の難解な部分を余すことなく味わいたい人にとっては複数回の鑑賞が必要になるだろう。
 第1作の主な登場人物は限りなく少なく、大まかに言えば「エミリー」一人だけだ。エミリーはハーツフェルトの姪である4歳の女の子をモデルにして作り出されたキャラクターで姪も実際に声として出演を果たしている。ハーツフェルトは彼女のがお絵かきしている時の音声を録音し、映画に利用した。幼い女の子のイキイキとした声は音楽的で、非常に聞き取りにくいのだが、それさえこのキャラクターの愛すべき特徴となっている。前作が制作された時4歳だった姪も、今作時にはちょっとだけ大きくなり、「より彼女自身に対して意識的になった」と監督。彼女の語る言葉が大きくなるにつれ、複雑となって行く。それゆえ、今作は「前作より若干複雑」になったそうだ。
 この作品が最後になることはないと強く断言している彼は、姪からインスピレーションを受けて作品に反映させるこの手法を気に入っていて、『6歳の僕が大人になるまで』のように姪の成長をエピソード式に追って行く作品にする方法をとるか、それとも第3作には全く姪を登場させないアイディアもあるという。どうやら第二作で登場させたいくつかの登場人物について、次回作で追って行きたいとも考えているそうだ。

 本作はアメリカ国内で今年中に上映される予定だが、日本での公開は未定だ。

 

 

 

 

 

 

【参考】

https://io9.gizmodo.com/world-of-tomorrow-episode-two-is-a-mind-melting-must-s-1818701718

http://www.indiewire.com/2017/09/world-of-tomorrow-episode-two-the-burden-of-other-peoples-thoughts-review-don-hertzfeldt-1201879517/

http://collider.com/world-of-tomorrow-2-review/#don-hertzfeldt

http://uproxx.com/movies/world-of-tomorrow-2-review/

http://fantasticfest.com/about

 

(本文)

奥村耕平

大阪の大学生。服と映画が好きです。アッバス・キアロスタミを中心にテヘランでイランの映画について研究してます。

 


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