2013年に長編初監督し公開された「めぐり逢わせのお弁当」は、その洗練された語り口からヨーロッパ各国で成功を収めました。カンヌ映画祭批評家週間の観客賞受賞を始め多くの賞を受賞し、従来のボリウッド映画のイメージを覆したと言われています 。
インド・ムンバイを舞台に、600万分の1の確率で偶然に起こったお弁当の誤配送から始まる物語は、見ず知らずの男女が内緒で手紙を通じてやりとりをするという、さながら古典ハリウッド映画の舞台を現代インドに移したような映画です。
(DVD販売やレンタルも行われておりますので、是非機会があればご覧ください)

これ以降、短編「The Masterchef」(リンクをクリックすると見ることができます)を除いて監督作品がなかったリテーシュ・バトラ。彼の最新作「The Sense of an Ending」(原題)が2017年1月2日、パームスプリングス国際映画祭でワールドプレミア上映されました。
気になるその映画の内容、評価について、いち早くお届けいたします。

「The Sense of an Ending」とはどんな映画なのか


「The Sense of an Ending」はイングランドの小説家ジュリアン・バーンズの同名小説を原作に、ロンドンとブリストルで撮影が行われ、制作されました。

あらすじ


退職し、離婚して独り身の男、トニーは、苦痛と喪失、そして奥底にある感情を隠して暮らしていた。しかし彼の親友であり、不可解な自殺をしたエイドリアンから遺言として日記を譲り受けることとなったとき、彼自身の過去の感覚が蘇る。その日記は彼の初恋相手、ヴェロニカが所持しているのだが、彼女は日記を渡すことを拒むのだった。

映画化の難しさと海外評価


原作が出版された2011年にこの本を読んだとき、監督は自身の生まれ育った環境や、これまでの人生を投射でき、大好きになったといいます。そこから監督のオファーが来たときは断ることができなかったそうです。
しかし、映画化にあたっては困難なことも多く、「本を映画にすることだけに集中することはできません。あるときには、映画を、それ独自のものとして作らなければならないのです。我々は物語と登場人物については、変えさせていただきました。やらなければならなかったのです。本というのは意識内に流れるものです。本に忠実であろうとするためには、一人の人間が立って最初から最後まで本を読む様子を撮影するという方法もありますが、そんなことはできません。人と人との関係性の中から本の中身を伝えていく必要があるのです。」と、映画独自の表現を模索していたことを話しています。

監督が初めて原作を基に作られた本作は、海外サイトでは好意的に受け止められているようで、
IndieWIREのSteve Greeneは
「何にもまして、“The Sense of an Ending”は何気ない瞬間の鋭い観察者としてのバトラを強固なものにした」
と日常に根ざしたシーンの演出を評価しており、
TheWrapのRay Greeneは
「リテーシュ・バトラは人間の相互関係における絶妙なニュアンスをつかんでいる。」
と関係性の描写を高く評価しています。

日本ではまだ公開の予定や配給についてアナウンスはありませんが、こちらで予告編を見ることができます。

また、今年中には、なんともう1本の監督作がNetflixでストリーミング配信されます。こちらはケント・ハルフの「Our Souls at Night」を原作に、アメリカで作られたようです。
いずれも日本公開日が決まっていないものの、今年は2作の監督作が公開される リテーシュ・バトラ。
日本公開の情報が入りましたら、またご紹介させていただきます。

参照
http://lunchbox-movie.jp/

Ritesh Batra On Film-making And Life After ‘The Lunchbox’


https://www.psfilmfest.org/2017-ps-film-festival/films/the-sense-of-an-ending
http://www.bbc.co.uk/bbcfilms/film/the_sense_of_an_ending

‘The Sense of an Ending’ Palm Springs Review: Jim Broadbent Gets Swept Up in Past Romance

(本文)

髙橋壮太
髙橋壮太 イベント制作会社に勤務しながら、自主制作映画を作っています。現状、台本を書こうかどうしようか、そんなレベルのアイデアが1つあるだけ。今年の目標は「新作1本は作る」です。


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