『スター・ウォーズ』シリーズに最初のLGBTのキャラクターを!

そう訴えるのは、今年6月にオーランドのナイトクラブ襲撃で恋人を亡くした、ドリュー・レイノネン。彼の恋人は、『スター・ウォーズ』の大ファンでした。犠牲者への追悼の意を込めて、LGBTのキャラクターをこの人気シリーズに登場させることは、多様性を認め、ヘイトクライムをなくすことに貢献すると彼は考えています。*1

これは、おそらく実現不可能なことではありません。『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』の監督、J・J・エイブラムスは、この痛ましい事件の数ヶ月前に、ファンからの「シリーズにもっと多様性を」という声に対して、前向きなコメントをしています。

「僕にとって、『スター・ウォーズ』シリーズの魅力の一つは、無限の可能性なんだ。したがって、LGBTのキャラクターを拒む理由はどこにもない。」

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実際にエイブラムスは、彼が手がけるもう一つの人気シリーズ『スター・トレック』の新作、『スター・トレック:ビヨンド』では、メインキャストの一人、ヒカル・スールーに同性のパートナーを登場させました。スールーは、同シリーズ初めてのLGBTのキャラクターになります。 オリジナルとなる1960年代のTVシリーズでスールーを演じたジョージ・タケイは、2005年にゲイであることをカミングアウトし、現在はLGBT差別撤廃の活動もしています。彼は、自身の演じたキャラクターが、新作でゲイとして描かれることについて、オリジナルのスールーに変更が加わることには難色を示しながらも、ゲイのキャラクターの登場に喜びました。*2

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こうしたLGBTのキャラクターのハリウッド大作への登場は、今年のトレンドです。『インディペンデンス・デイ:リサージェンス』では、ゲイのカップルが登場しました。また、メインキャストが全て女性ということでも話題になった『ゴーストバスターズ3』では、そのうちの一人がレズビアンです。

これまでも、ハリウッド映画にLGBTのキャラクターは登場してきましたが、それらのほとんどは、ユーモアのためにパロディ化され、ステレオタイプなイメージが強調されたものでした。しかし、今年公開されるこれらの作品では、いたって自然なかたちで、LGBTが登場しているのです。 『インディペンデンス・デイ:リサージェンス』のローランド・エメリッヒ監督は、「今回、ゲイのカップルを登場させたが、彼らがゲイであることについて大げさな扱いはしていない。いつかは、ゲイがメインキャラクターにいても、誰も疑問をもたなくなるようにしたいんだ。」とコメントしました。*3

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しかし、こうしたトレンドを続けていくには障害もあります。The Pew Research Centreの調査によると、本国アメリカでは、31%の人々が同性愛に反対しているとの結果が出ました。同性婚に関しては、18〜29歳の若者では73%が賛成というのに対し、50〜64歳ではその数字は47%まで下がります。50歳以上が劇場鑑賞者の37%をしめるアメリカの映画業界では、無視できない結果です。また、近年ハリウッドのマーケットとして重要な中国では、現在も同性愛への偏見が強く、政府の検閲も厳しいのが実情です。*4

しかし、LGBT活動家のレイ・ブラッドフォードは、ハリウッドの大作が、LGBTがどのように社会にとけこんでいるかを世界に伝えることはとても重要だと主張します。*5

LGBTにかかわらず、影響力の強い作品が、すすんで多様な人々を、より自然なかたちで登場させることは、差別のない社会の実現に向けて意味があるはずです。ハリウッドは、こうした状況を打破し、多様性をもった作品を作り続けることができるのでしょうか。

 

*1 オンライン署名サイト、chabge.orgにて賛同者募集中。2016年8月12日現在、11,455人の署名が集まる。

https://www.change.org/p/kathleen-kennedy-make-this-orlando-lgbt-victim-into-a-star-wars-character

*2 ジョージ・タケイは、『スター・トレック:ビヨンド』のスールーについて、「シリーズ50周年の記念作品でもある新作で、ジーン・ロッテンベリー(シリーズの生みの親であるプロデューサー)の作ったキャラクターに変更が加わるのには賛成し難い。特に、スールーは、ゲイである以前にアジアを代表するキャラクターとして、充分に多様性を象徴していた、完成されたキャラクターだったからだ。スールーがゲイであるならば、全く新しいキャラクターとして、彼にゲイとしての人生がしっかりあったように、演じてほしい。」とコメントした。 スールー(『宇宙大作戦』として日本で知られるオリジナルでは、「カトウ」)という名は、フィリピン沖のスールー海からとってつけられた。スールーが日本人とフィリピン人のハーフのアメリカ人であるのは、ロッテンベリーのアジアへの思いが込められている。

http://www.hollywoodreporter.com/news/george-takei-reacts-gay-sulu-909154

*3

https://www.theguardian.com/film/filmblog/2016/jun/23/why-independence-day-resurgence-gay-couple-denied-close-encounter

*4,5

https://www.theguardian.com/film/2016/aug/04/ghostbusters-star-trek-beyond-gay-characters

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http://collider.com/star-wars-7-the-force-awakens-deleted-scenes-jj-abrams-interview/

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http://collider.com/sulu-gay-star-trek-beyond/

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https://uk.movies.yahoo.com/roland-emmerich-lines-up-new-sci-fi-movie-195512717.html

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http://www.whatsontheredcarpet.com/2016/07/star-trek-beyond/

北島さつき World News&制作部。 大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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