今月の21日にサンダンス映画祭が開催される。
上映される作品のコンペティション部門の多さ、幅広いジャンル、国境を超えたセレクションは映画界においても高い評価を受けている。30年の時を経て知名度が大きく上がり2016年度は12,000件以上もの応募があった。しかしその中から上映作品として選出されるのは長編作品では120作ほど。(*1) いかに狭き門であるかがよくわかる。同時に将来の映画界の育成として様々なプログラムも実施している。インディペンデント映画にも大きなチャンスとなる映画祭だが近年の映画やドラマの上映環境が変化してきたことによって応募者の多様性や大手ストリーミング会社の参入などが見られるようになった。
2016年度のドラマの上映作品にはアマゾンやネットフリックスなどの大手映像配信会社によって資金や制作をバックアップされたものなどが増えている傾向にある。この中でも代表的な例は動画配信サービス会社のHulu制作、今映画祭でプレミア上映となる『11.22.63』だろう。監督は『LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語』のケヴィン・マクドナルド。世界中から集めた同じ日に撮られた映像をある一日として編集した作品で2011年度のサンダンス映画祭で上映され高い評価を受けた。この作品はサンダンス映画祭で上映と同時にYouTubeでも配信されるという映像の新たな時代の幕開け的存在である。(*2)『11.22.63』のプロデューサーはJ.Jエイブラムスと本作品原作者スティーブン・キング、主演はジェームズ・フランコやクリス・クーパー、サラ・ガドンなど豪華なキャストが並ぶ。もし時間を遡ってケネディ大統領の暗殺を止めることができたら…というスリリングなタイムスリップストーリーで9エピソード完結の作品となっている。(*3)
また、他にもAmazonプレミアム・ビデオから配信される『The New Yorker Presents』にも注目したい。アメリカ中で愛され読まれ続けている週刊誌『ザ・ニューヨーカー』をドキュメンタリーとして映像化。様々なジャンルの監督（アレックス・ギブニー、ロバート・プルシーニ、シャリ・スプリンガー・バーマン等）を迎え、ドキュメンタリーから短編映画、コメディ、詩、アニメーションなどを含む2エピソードを毎週配信していく予定だ。映画祭では初めの2エピソードをプレミア上映する予定。本誌のエッセンスを凝縮しそれらを映像と活字を共存させる新しい試みである。(*3,4)
これらの大手会社から出品される作品とは正反対のポジションにあるのが『The Skinny』。フェミニストでYouTubeスター（になりたい）Jessie Kahnweilerが様々な出来事を通して過食症と自分の体と向き合っていくドラマ。Kahnweiler自身が脚本・監督を務め、クラウドファンディングで資金を集めて制作されたというインディの代表的作品である。今作品はRefinery29というメディア会社(*5)とコメディアンや監督（『午後3時の女たち』）として知られるジル・ソロウェイが設立したWifey.TV(*6)という女性のための映像ネットワーク会社により動画配信されることが決まっている。今回の映画祭では1エピソード10分のものを6エピソード連続で上映する予定だ。元々YouTube映像作家として活動していた彼女の作品がインディ映像配信会社の目に止まり、動画配信するプラットフォームを確立したことによってより多くの人々に届くようになった。(*1,3)
時代の変化とともにさまざまなスタイルで撮られた幅広いジャンルや今までとは違った上映スタイルをも柔軟に取り入れ進化していくサンダンス映画祭。新しい形態を持つ作品のラインナップにもこれから注目していきたい。
*1 http://www.indiewire.com/article/sundance-announces-competition-and-next-lineups-featuring-returning-favorites-and-a-secret-director-20151202?page=2
*2 http://www.imdb.com/title/tt2879552/?ref_=nv_sr_1
*3 http://dotorg-prd-assets.s3.amazonaws.com/pdf/film-guide/SFF16_FilmGuide_Web_Jan6.pdf
*4 http://www.imdb.com/title/tt4115864/?ref_=fn_al_tt_1
*5 http://www.refinery29.com/
*6 http://wifey.tv/
画像1 http://www.tvguide.com/news/hulu-11-22-63-trailer-james-franco/
画像2 https://www.kickstarter.com/projects/1179494099/the-skinny
mugiho
早稲田大学在学中。
日本国内を南から北へ、そして南半球の国を行き来していまはとりあえず東京に落ち着いています。ただただ映画・活字・音楽・書くことが好きな人間です。物語を語るということが好きなものにすべて共通していて映画もそこに一番惹かれます。知識などもなくまだまだ学ぶことがたくさんありますが自分なりの映画の見方を持ちながらどんどん学んでいきたいです。好奇心旺盛で飽き性な人間で集中力が乏しいのがいまの課題。最近、短編を書き始めました。
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