7月12日より開催される第23回東京国際レズビアン & ゲイ映画祭。昨日上映プログラムも発表され、今年も盛り上がりを見せそうです。今回は映画ではなく、公式コラボイベントとして渋谷のアツコバルーで上演される朗読劇『8 -エイト-』(1)から、アメリカのショウビズ界による法への働きかけの実例を見ていきたいと思います。
『8 -エイト-』の原作『8 』は、提案8号をめぐる裁判を題材にしています。「提案8号(Proposition 8)」とは結婚を男女間に限定し同性婚を禁ずる規定を盛り込んだカリフォルニア州憲法の修正案のこと。カリフォルニア州では2008年に同性婚が認められましたが、同年に行われた住民投票で「提案8号(Proposition 8)」が可決されたことによって、また同性婚が違法に。これに対し、2組の同性カップルが提訴し、同性婚支援グループと協調して争っていました。法廷での争いは4年の歳月を経て結果が二転三転。最終的に2013年6月28日、カリフォルニア州の連邦高裁は、州内で同性婚を禁止していた法律を無効としたのです。(2)
この歴史的な裁判を2011年の段階で『8 』として戯曲化した脚本家が、アカデミー賞最優秀脚本賞 を受賞した『ミルク』やクリント・イーストウッドが監督した『J・エドガー』の脚本を手がけた、ダスティン・ランス・ブラックです。彼はLGBT活動家でもありハリウッドで最も影響力のあるオープンリー・ゲイのひとり。『8』は何度も再演され、2012年には平等権を求める全米基金(The American Foundation for Equal Rights)のチャリティーでは、ブラッド・ピットやジョージ・クルーニーなど豪華な俳優陣によって上演されました。この一夜限りのキャストでのステージはYoutubeにアップされています。(3)この演劇が日本で演じられるのは、翻案しているとはいえ珍しいことですし、日本での同性婚の未来について、また広く差別について考えるチャンスでしょう。
また少し目線を変えると、「提案8号(Proposition 8)」にまつわる争いは法に対してショウビズが力を持ちうることを示しています。実は「提案8号(Proposition 8)」を題材にした作品は他にもあり、今年2014年のサンダンス映画祭でもライアン・ホワイトとベン・コトナー共同監督の『The Case Against 8』がUS ドキュメンタリー部門の監督賞を受賞しています。(4) ショウビズ界のメッカ、カリフォルニアで起こった争いということもありますが、問題を作品化することによる議論の喚起と、ショウビズ界の有力者による働きかけが人権を抑圧する法的な決定を覆したことは否定できません。この事実は現在の日本に住む私たちにとっても、希望と呼べるのではないでしょうか?
蜂谷智子
(1) http://tokyo-lgff.org/2014/about/8intokyo
(2) http://en.wikipedia.org/wiki/California_Proposition_8_(2008)
(3) http://www.youtube.com/watch?v=qlUG8F9uVgM&feature=share
(4) http://www.sundance.org/festival/stories/award-winners/


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