『セックスと嘘とビデオテープ』『オーシャンズ』シリーズなどのスティーブン・ソダーバーグ監督の最新作『Let Them All Talk(原題)』が来月10日より動画配信サービスHBO Maxで配信される。
 
配信に先立ってHBOが公開した情報によれば、本作はメリル・ストリープ演じる著名な女流作家アリスが過去の傷を癒すために友人2人と共に出かけたクルーズ旅行の様子をコメディタッチで描いた作品で、ソダーバーグ監督とHBO Max共同プロジェクトの一環で製作されたものである。オスカー受賞監督であるソダーバーグは、2013年に長編映画の監督としては引退を宣言し、主にプロデューサーとして実に多くの作品の制作に携わってきたが、2017年公開の『ローガン・ラッキー』を皮切りに再び長編映画の監督に復帰し、本作のように動画配信サービスやウェブ媒体に活躍の場を移して映画を作り続けている。直近では動画配信サービスQuibiで自身が制作総指揮をとるドラマ『Wireless(原題)』が公開されている。また、ソダーバーグは、HBO Maxと別の長編映画『No Sudden Move(原題)』製作においても協働して作業を進めていることが明らかになっている。
 
そんな人気監督の最新作として期待の高まる本作だが、その他にも魅力的な要素が満載である。主演のメリル・ストリープは、昨年ベネチア映画祭のプレミアで上映されたNETFLIXオリジナル作品『ザ・ランドロマット —パナマ文書流出—』(2019)でもソダーバーグ監督とタッグを組んでいる。彼女はまた、同名のブロードウェイ・ミュージカルを下敷きにしたライアン・マーフィー監督の映画『ザ・プロム』(2020)の主演も務め、Apple TV Plusで配信されている子供向け短編アニメーション作品『ほら、ここにいるよ このちきゅうでくらすためのメモ』の音声も担当しており、ソダーバーグ監督と同様に、映像業界において様々な形態での作品作りに意欲的に関わり続ける存在であると言える。
 
新型コロナの感染拡大による外出自粛の影響を受けて、自宅にいながら映画鑑賞を楽しむことのできる動画配信サービスはますます急速に広がっている。なかでもNETFLIXオリジナル作品に代表されるように、配給会社独自の色合いを前面に押し出した作品作りも盛んであり、こうしたオンラインサービスでの作品配信は、単に映画をレンタルすることという枠にはもはや収まりきらない。先行きが予測不能で製作にも支障が出るような現在の社会状況の中で、ソダーバーグやストリープのようないわば中堅の監督・俳優らが新しい形態での作品作りに意欲的であることは、これからの映画界の希望とも言えるのではないだろうか。
 
また余談ではあるが、本作は人気若手俳優ルーカス・ヘッジズの最新作でもあることに触れておきたい。劇中でひょんなことから叔母である作家とその2人の古い友人との旅行に同伴することになり、結果的に彼女が過去を吹っ切り、次作を執筆する手助けをしていくことになる甥を演じるヘッジズは、日本でも『mid90s』『WAVES』『ハニーボーイ』などの出演作が続々と公開され、その度に話題になるなど、その人気は鰻登りで同世代の他の俳優と一線を画す。彼が出演する作品はそれだけで一定の評価が得られること確実との評判もあるほど、名実ともに期待される若干23歳の俳優のこれからにも引き続き注目していきたい。
 
 

宮田佳那子

World News担当。大学では社会学を勉強しています。ドイツ映画が好きです。最近はハネケ作品にハマり中。


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