ウクライナで13人のバスの乗客を人質に取った男が−ホアキン・フェニックスがナレーションを務める動物の権利保護を訴えるドキュメンタリー映画の推薦−という要求をし、同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領がしたがったことで、人質は全員無傷で解放された。

バスと乗客を占拠したときに人質犯は銃とグレネードで武装しており、警察と12時間の膠着状態が続いた。ウクライナ保安庁は彼を44歳のマクシム・クリボシュ氏と特定した。内務省大臣のアルセン・アバコフによると、クリボシュ氏は刑務所に服役をしていた、また保安庁によると彼は”過激な見解”を伝播していた、とのこと。またアバコフによると、東部のハルコフという街で共犯者が勾留された。

シュールなやり方で人質の解放を保証したゼレンスキーはクリボシュ氏と電話で話し、彼の要求のうちの一つである、2005年のドキュメンタリー映画Earthlingsの推薦に同意した。ゼレンスキーは要求に沿って、自身のファイスブッページに6秒の動画を投稿した(その後削除された)。

クリボシュ氏に人質の解放を説得するに際して、22日、現地時間の午前9時に警察はルーツクの中心街を包囲した。

警察によると、クリボシュ氏は複数発発砲をし、バスの外にグレネードを放り投げたが爆発しなかった。

彼はある街の公共の場に爆弾機器を仕掛け、遠隔で発火できるなどと脅した。警察は付近の住民に家や職場の外に出ないよう注意を喚起した。

実際に機器が見つかったかどうかは明確にされていない。

クリボシュ氏の要求には、ある政治家が彼がテロリストだと述べたことが含まれていた。過去に詐欺や違法な武器所持の判決を受けて10年間の服役の経歴がある。

アボコフは記者に対して、彼を「想像上の世界を作り上げ、そのための復讐をでっち上げた、不安定な男だ」と言った。取材に対し「彼には自身の想像上の正義と、人間の命の価値観がある」とも付け加えた。

 

事件の後に本作の監督ショーン・モンソンはコメントをVariety誌に公表した。

”アースリングスはすべての生き物に対する哀れみといった感情を本作のメッセージとしているため、恐怖を生む行為を支持、また許容することはしません。映画の内容は、何億万匹という無防備な動物に対する継続的な屠殺行為であり、それは人間の健康に有害なだけでなく、地球温暖化の最大の原因でもあります。”

”しかしながら、私たちは目覚めた人々に対して、恐怖によって恐怖を呼び覚ますことはしません。この辛い体験によって影響を受けたすべての人々、また彼らの家族、そして一つの生命も失われないことを確実にした権力者へさえ、私たちは同情しています。すべての(生き物に)暴力がなくなることと共に私たちが前に進みますように。”

May we move forward with non-violence toward all.

ゼレンスキー大統領は交渉の際にクリボシュと7〜10分ほど話をし、妊婦、怪我人、子供を含む3人の人質から解き放つように説得した。

その後、ゼレンスキーは短い動画を投稿することに同意した。そして「(Earthlingsを)みんな見てください」とコメントを発表した。

人質が解放されるとゼレンスキーはFacebookに動画を投稿した。

”いま、ようやく家族はバスの中で苦しい時間を過ごした親族と抱き合うことができる。人の命は最優先する価値があります”

 

参考リンク

‘Earthlings’ Director Responds to Ukraine Incident: ‘We Do Not Cause Terror to Awaken People to Terror’

https://www.bbc.com/news/world-europe-53489527

https://www.abc.net.au/news/2020-07-22/ukraine-hostage-release-president-promotes-joaquin-phoenix-movie/12479416

 

画像:ETIENNE LAURENT/EPA-EFE/Shutters

 

伊藤ゆうと

イベ ント部門担当。平成5年生まれ。趣味はバスケ(閉館した)”藤沢オデヲン座”で「恋愛小説家」を見たのを契機に 映画を観始める。Podcastを作りながら国際関係・政治などジャーナリズムの勉強中。


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