映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの裁判が、今週、ニューヨークとロサンゼルスで同日に開始された。性的な違法行為を行ったとして、80人以上の女性から訴えを起こされているが、ニューヨークの裁判で扱われるのは、そのうちの2件の容疑についてのみである。映画界の重鎮であったワインスタイン氏は、「多大な苦痛を与えた」ことを認めているが、全て合意の上であったと語っている。裁判所の外では、女優のロザンナ・アークエットとローズ・マッゴーワンを含む告発者たちが、ワインスタイン氏は責任を取るべきだと声を上げていた。もし有罪が認められれば、終身刑を宣告される可能性もある。しかし、ワインスタイン氏の弁護団は、強固な弁護を進めていくことを明言している。[1]

 

 一方、ロサンゼルスでは、別の2人の女性からの訴えに関する容疑で起訴されており、もし有罪判決が下されれば、最大28年の懲役刑を宣告される可能性がある。ロサンゼルス地方検事のジャッキー・レイシーは声明の中で次のように語っている。「証拠により、被告が自身の権力と影響力を利用して被害者たちに接近し、暴力的な犯罪を起こしたということが明らかにされると我々は信じている」。そして、「進み出て、勇敢にも何が起きたかを詳しく語ってくれた被害者たちを私は称賛したい」と検事は付け加えた。「性的暴行を受けた全ての被害者たちが、前進していく過程で強さを身につけ、回復してくれることこそが私の希望だ」。[2]

 

 奇しくもその前日に行われたゴールデン・グローブ賞の授賞式では、ワインスタインあるいは#MeToo運動への言及もほとんどなされず、司会のリッキー・ジャーヴェイスが辛辣なジョークとして触れたのみだった。「今夜、カメラの前のみなさんだけではなく、この部屋には、世界的に有名なテレビや映画業界の大物が来ています。みなさんそれぞれ違う経歴をお持ちですが、共通点が一つ。みんなローナン・ファローを恐れているということです」「次のプレゼンターはネットフリックス『バード・ボックス』の主演俳優です。何も見ないように振舞うことで生き延びる人たちの映画です。そう、ハーヴェイ・ワインスタインの時のように」。これらのジョークは気まずい沈黙で迎えられたが、この状況こそが、数年前に盛り上がった楽観的な未来予測に反し、目立った進展が何も起こっていない、旧態依然のままのハリウッドを表しているのではないだろうか。[3]

 

[1]

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-51011028

 

[2]

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-51013974

 

[3]

https://www.theatlantic.com/entertainment/archive/2020/01/harvey-weinstein-haunted-golden-globes/604480/

 

画像:Pixabay

 

 

佐藤更紗

国際基督教大学卒。映像業界を経て、現在はIT業界勤務。目下の目標は、「映画を観に外へ出る」。


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