ローレーヌ・スカファリアの監督作『ハスラーズ』の米国での興行収入が、先月13日の公開からわずか2週間で8000万ドルを突破した [1]。

この映画は、ニューヨークのストリップバー・Scoresで起きた実際の事件に関する記事 “The Huslers at Scores”を基に作られており、コンスタンス・ウーやジェニファー・ロペス、カーディ・Bら演じるストリッパーが、ウォール・ストリートで働くエリート顧客から大金を騙し取っていくというあらすじである。

本作は、批評家から高評価を与えられており、ロペスは彼女のキャリア史上の中でも最高の演技を見せたとして絶賛されている [2]。一方、陰の立役者としてこの映画を支えた重要人物がいる。それは、ジャクリーン・フランシス ―― “Jack The Stripper”の名で活躍する現役のストリッパーかつ文筆家・イラストレーターだ。

本作で、フランシスはキャストだけではなく、セックス・ワーカーの描かれ方に関するコンサルタントをも務めた。彼女は、本作の俳優や制作者に向けて、主流メディアにおけるセックス・ワークの表象と闘うよう助言した。

フランシスは、ストリッパーに関する多くの映画が「問題含みであり、物事を悪くしており (…) 悲観的で哀れみを誘い、ストリップを行うことの動機を病理化するようなナラティブを用いている」と批判している。彼女によると、このようなナラティヴは、セックス・ワークの実態を全く捉えておらず、セクシュアリティに関する自己表現というストリップの側面を無視している。さらにフランシスは、ストリッパー及びセックス・ワーカーを単に無力な犠牲者として描くことは、彼/彼女らに対する偏見の増長に繋がりうると指摘している [3]。

フランシスは、セックス・ワーカーを「生き抜くためにベストを尽くし、起業家精神を持つ」者と考えている。ストリッパーの実態を忠実に描くため、また、ストリッパー役を演じる役者たちが気分良く仕事をできるようにするため、彼女はコンサルタントとしての自らの仕事に尽力した[3]。

IndieWireの記事によると、ストリッパーたちからの本作への評判も概ね良いようだ [4]。日本での公開日は未だ発表されていないが、公開されたらストリッパーの描かれ方に注目しながら鑑賞するのも面白いだろう。

参考記事

[1] https://www.indiewire.com/2019/02/highest-grossing-indie-films-2019-1202031574/

[2] https://www.indiewire.com/2019/09/jennifer-lopez-hustlers-oscar-buzz-reaction-1202172137/

[3] https://variety.com/2019/film/news/hustlers-real-life-stripper-comfort-consultant-1203335248/

[4] https://www.indiewire.com/video/hustlers-strippers-video-reactions-watch-1202177810/

伊藤紗瑛
東京出身。現在都内の大学院修士課程でフェミニズムの研究をしています。映画と読書と音楽と散歩と犬が好き。


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