ジョアンナ・ホッグ監督の最新作『The souvenir(原題)』が、先日開催されたサンダンス映画祭にてワールドシネマ部門グランプを受賞し、注目を集めている。同作品は、今年1月に開催されたベルリン国際映画祭でも上映され、いま話題を呼んでいる作品の1つである。

『The souvenir』は、エグゼクティブプロデューサーにマーティン・スコセッシも名を連ねた、ジョアンナ・ホッグ監督、オナー・スウィントン・バーン、トム・バーク、ティルダ・スウィントン出演の、イギリス80年代を舞台にした作品である。ある一人の映画学校に通う女学生が、ある一人のカリスマ的であるが信用ならない男と激しく恋に落ちる物語だ。

ジョアンナ・ホッグ監督は、1960年生まれのイギリスの映画監督であり、これまでにも、『Unrelated(2007年)』や『家族の波紋(原題:Archipelago、2010年)』を手がけている。本作は、ホッグ監督の実際の学生生活を元に膨らませた作品であり、作中には実際の彼女の日記や手紙、そして彼女がこれまでにスーパー8で撮った映像も使用しているという。監督はそれについて、イギリスの映画サイトScreen Internationalにて以下のようにコメントしている。

「この物語はこの数年の間頭の中にあったわ。エキシビジョンの後、マーティン(・スコセッシ)に私は次に何をやるべきか、尋ねたの。私には2つのアイデアがあったわ。1つ目は、ゴーストストーリーを作ること。そしてもう1つが、この作品よ。私は自伝的な記憶から物語を作り始めたわ。記憶を辿るとき、私は、覚えていない曖昧な記憶にフィクションの要素に引き継がれていくことに気づいたの。それが面白かったわ。現実とフィクションが混ぜこぜなの。この曖昧なもやのようなものが、この物語で探検したものの1つよ。」

また、サンダンス映画祭上映時には、この映画で郷愁のための映画ではないと語ったというホッグ監督について、Film Commentのインタビューにおいて以下のように語っている。

「この作品はセンチメンタルになりうるものです。でも、センチメンタルは私にとってそんなに興味深いものではありません。とはいっても、やっぱり撮影時にはとても懐かしい気分になりました。当時の日記を振り返って読んで、その当時のアイデアや自分の感情について考えてみると、それを何らかの方法で再体験したいと思うのはちょっとした痛みを胸に感じます。 また20歳になりたいと言っているわけではないですが、でもおそらくそこにはちょっといい部分もあると思うんです。それはノスタルジアであり、でもそれを映画の中に滲み出させたくはなかった。何となくそれはベールで包み込むようなことなんです。」

今作品で主人公ジュリーを演じたオナー・スウィントン・バーンは、ジュリーの母親役として登場するティルダ・スウィントンの実の娘であり、スィントン親子が母娘役を演じていることにも注目だ。ティルダ・スウィントンはまさに、日本でも公開され話題を呼んでいる『サスペリア』にて一人三役を演じたばかりで、今注目されている女優の一人である。

『The souvenir』は、A24による配給が決まっており、続編も既に準備中であることが公表されている。日本での公開にも期待したい。

参考

三浦珠青

早稲田大学文化構想学部4年生。熊本育ちの十一月生まれ。趣味は映画と読書


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