[731] 画家の描くゴッホの一生 ジュリアン・シュナーベル監督最新作『永遠の門 ゴッホの見た未来』


Willem Dafoe as Vincent Van Gogh in Julian Schnabel’s AT ETERNITY’S GATE.
Photo credit: Lily Gavin

世紀を代表する画家ゴッホ。彼の孤独な画家生活から謎の死を遂げた最期まで、彼に関する様々な物語が語られてきた。彼を主人公にしたジュリアン・シュナーベル監督最新作『永遠の門 ゴッホの見た未来』(At Eternity’s Gate)ではゴッホが晩年を過ごしたフランスのアルルとオーヴェル=シュル=オワーズでの出来事をウィレム・デフォーを主演に描く。

『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)でアカデミー賞ノミネート、ゴールデングローブ監督賞を受賞したジュリアン・シュナーベルはニューヨーク出身の画家であり監督である。ジャン=ミシェル・バスキアやエリック・フィッシュルと並んでアメリカの新表現主義を代表するアーティストの一人として知られている。友人であり同志であったバスキアの伝記的映画『バスキア』(1996)で監督デビューしキューバ出身の作家であり詩人であったレイナルド・アレナスの自伝映画『夜になるめに』(2000)でヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。

ゴッホの最期に関してあらゆる説が渦巻く中で監督は彼自身よりも彼の絵を通じてゴッホという人物に迫っていきたいと思っていたよう。インタビューでは「最初に提案された脚本はあまりにもありふれたもので面白くなかった。それより、ゴッホ本人よりも彼の作品に注目してみようと思いました。彼の絵を見たときにかき立てられる心の内を映像化したかった」と答えている。

監督自身が画家としても活動し絵について知り尽くしていることから今作をただの伝記映画にしないということはとても重要であったようだ。
「彼はどのようにしてこれらの作品を描いたのか?どれくらい俗世から離れなければいけなかったのか?どれくらいの自然が周りに必要だったのか?」

実際、作中に登場する絵の多くは監督自身によって描かれたものだ。ゴッホに扮するウィレムが風景を見ながら描いているシーンでは手のショットだけを監督のものにしたと言う。「アート部門が送ってきた作品はとても使い物にならなかったので自分で描くしかなかった。あの有名なパイプを加えた自画像も壁にかかっているゴーギャンの作品もそれぞれの役者をモデルにしながらも原画に近づけないといけなかった。でもとても楽しめたよ」

よりゴッホという存在を浮き彫りにしていくために、構成にもこだわったと話す。一人称で語られるスタイルは観客自身たちがその場にいるかのような錯覚を生み出すためだと言う。医者がゴッホに対して「君は人と絵を混同している」と伝え、彼が「絵の存在は私である」と答える場面では観客たちがまるで自分に言われているかのような感覚に陥る。作中に登場する真っ暗な画面でモノローグが流れ続ける部分では観客たちに夢と現実の狭間を体験してもらいたかったという。「朝起きて、まだ何も言う前に色々な思考が頭の中を駆け巡っているみたいな感じだ。でもすべて沈黙の中で行われる。それをオーディエンスに映画館で体験してもらいたかったんだ。」

ゴッホが自分の絵であったように監督は映画そのものであり、これらを切り離すことはできない。長い間ゴッホについて撮ることを避けてきた監督がなぜいま、今作を作ろうと思ったのか。「不可能だろうと思いました。でもゴッホとアルトの展覧会に足を運んだとき、今作での共同脚本家であるジャン=クロード・カリエールは(『昼顔』『勝手に逃げろ/人生』などの脚本を手がけたフランスを代表する脚本家)この歳になってこんな体験をするとは思っていなかったと話していました。まるでゴッホが私たちに話しかけているようだった、と。みんなが彼に聞きたいこと、その答えを自分たちで見つけていくことができる。これは何か新しいことができる絶好の機会だと思いました。」

ゴッホの突飛なエピソードとは裏腹に彼の絵はどれもとてもよく考え抜いて描かれていると話すのは画家であるからこそ見えるゴッホの一面だ。「彼の絵は頭のおかしな人間の描いたものではありません。どれもちゃんとした手法や構図を意識して描かれています」


芸術家として作品を作り上げていく過程をここまで現実的に描き出すことを可能にした監督の背景はゴッホの物語にまったく新しい視点を生み出したのだ。

絵と共に生きることはきっと、世界との向き合い方を模索していくことなのだろう。

mugiho
夜の街を彷徨い、月を見上げ、人間観察をしながらたまにそれらについて書いたり撮ったり

参考:
https://variety.com/2018/film/festivals/julian-schnabel-on-doing-some-van-gogh-paintings-himself-for-at-eternitys-gate-1202927306/

https://variety.com/2018/film/global/at-eternitys-gate-benoit-delhomme-julian-schnabel-1203030416/

https://cineuropa.org/en/interview/361156/

https://www.indiewire.com/2018/11/julian-schanbel-at-eternitys-gate-van-gogh-interview-1202022668/

http://www.artnet.com/artists/julian-schnabel/


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