ソダーバーグとクロエ・グレース・モレッツによる銃乱射事件を描いた舞台

現在、男性中心主義社会やそこで生まれる文化、そしてミソジニー(女性嫌悪)を巡って大きな議論をアメリカで巻き起こしているサンタバーバラ銃乱射事件ですが、その概略については[World News #026]の記事で既に則定さんがリポートしてくれています。
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この議論の中で、つい先日までニューヨークのPublic Theaterで上演されていた一つの舞台が話題となっていました。
それは、映画監督業からの引退を発表したスティーブン・ソダーバーグが演出を務め、彼の作品『コンテイジョン』や『サイド・エフェクト』で脚本を担当したことで知られるスコット・Z・バーンズが戯曲を書いた「ザ・ライブラリー」という作品です。
主演には、これも映画ファンにはお馴染みのクロエ・グレース・モレッツが出演しており、このキャスティングは日本でも話題になりました。

「ザ・ライブラリー」は、コロンバイン銃乱射事件に取材した作品です。しかし、『ボウリング・フォー・コロンバイン』や『エレファント』などとは異なり、犯人が中心として描かれたものではありません。主人公は、虐殺を生き延びた生存者の一人です。病院ともモルグとも判別できない場所で昏睡状態から目を覚ました彼女は、友人たちが虐殺の被害者となってしまったことを知ります。しかし、それと同時に彼女は、一人のクラスメイトによって、自分が犯人たちの手助けをしたと告発されていることも知るのです。自分だけが助かるために、他のクラスメイトたちの隠れ場所を犯人たちに告げ口した、と。

彼女は反論しますが、その時本当に何が起こったのか、自分の記憶にさえ自信を持つことが出来ません。一方で噂は噂を呼び、彼女は世論を巻き込んだ大きな議論の矢面に立たされます。その中で、同じ事件の被害者の母親が最も強烈な批判者として現れる。その母親は、亡くなった自分の娘をヒロインにした本を書き、映画化の際にはその監修もつとめる。そしてその中で、主人公は犯人たち以上に罪深い存在として描かれるのです。

「ザ・ライブラリー」は、銃乱射事件という大きな悲劇と、そしてそれを取り巻く人々や社会、文化の中で二次的、三次的に生み出されていくさらなる悲劇を描いた舞台です。この作品は「将来起こるべき事実に基づく作品」と銘打たれていましたが、それはまさに現実となってしまったようです。

大寺眞輔
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