アベル・フェラーラの最新作『ウェルカム・トゥ・ニューヨーク』が開催中のカンヌ国際映画祭で非公式上映された後、直ちにフランスでVOD(Video on Demand)配信された。(#1)

フランスでは、映画館で公開後数ヶ月はストリーミング配信できない決まりがあり、これをバイパスするため、製作会社Wild Bunchはフランスで同作を劇場公開しないことに決め、同社が運営するFILMOTV(#2)やiTunesなどを通じてカンヌでのプレミア上映直後に配信開始するというスキャンダラスな方法を取った。

フランスではVOD配信はまだ映画の主なリリース方法として認められておらず、映画館からの抵抗も強い。しかし、Wild Bunchはその新たな可能性を実験するため、マイナーな作品ではなく同社が製作した今年最大の話題作の一本をVODオンリーで配給するという大きな賭に出たのだ。

Wild BunchはVODという呼称を好まず、これをEcinemaと呼びたいと述べている。(#3)現在、フェラーラへのインタビュー映像が特典で付いて、6.99ユーロ(およそ1000円)で視聴可能だ。

フランスの映画作家やプロデューサーらからなる組合ARPは、Wild Bunchの試みをサポートするとの声明を発表している。インディペンデント作品や作家映画を多くの観客に届けるための多様な試みは歓迎されるべきだ、とのことだ。(#4)

『ウェルカム・トゥ・ニューヨーク』は、フランス社会党に所属し、IMF専務理事を務めたドミニク・ストロス=カーンのスキャンダルにインスパイアされた作品である。同氏は2012年のフランス大統領選における有力候補とも目されていた大物政治家だが、訪問中のニューヨークで強姦容疑により逮捕され失脚した。

主人公はジェラール・ドパルデューが演じている。監督のフェラーラも含めた顔ぶれもまたスキャンダラスだ。共演は、ジャクリーン・ビセット。

大寺眞輔
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#1
http://www.telegraph.co.uk/culture/film/cannes-film-festival/10838245/Gerard-Depardieu-Im-almost-a-porn-star.html
http://www.24matins.fr/cannes-2014-welcome-to-new-york-premiers-retours-spectateurs-97825
#2
http://www.filmotv.fr/
#3
http://blogs.indiewire.com/theplaylist/abel-ferraras-welcome-to-new-york-going-vod-only-in-france-could-be-late-addition-to-cannes-lineup-20140418
#4
http://www.deadline.com/2014/05/cannes-abel-ferraras-sex-scandal-pic-welcome-to-new-york-penetrates-la-plage/
#5
http://www.wildbunch.biz/films/welcome_to_new_york


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