絶賛開催中!『メナヘム・ゴーラン映画祭』初日レポート


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先日14日から東京はシネマート新宿、大阪はシネ・ヌーヴォにて絶賛開催中の『キャノンフィルムズ爆走風雲録』公開を記念した『メナヘム・ゴーラン映画祭』

この映画祭開催に至った経緯と熱い作品紹介は大寺さんが

http://indietokyo.com/?event_blog=メナヘム・ゴーラン映画祭

『キャノンフィルムズ爆走風雲録』については滝本龍くんと永山桃さんがそれぞれレポートしてくれましたので、私は初日舞台挨拶の様子をお伝えしたいと思います。

http://indietokyo.com/?event_blog=『キャノンフィルムズ爆走風雲録』-―ハリウッド

http://indietokyo.com/?event_blog=キャノンフィルムズ爆走風雲録

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こちらがイスラエル人ドキュメンタリー監督/プロデューサーで、本作の監督ヒラ・メダリアさん。とても気さくな、しかし創作に対しては強い信念を感じる素敵な女性でした。

上映後には客席から活発な質問が飛び交い、映画製作の裏話なども飛び出しました。皆さんすでにご承知かとは思いますが、このドキュメンタリーは80年代ハリウッドに乗り込み、大旋風を巻き起こしたイスラエル出身の映画監督メナヘム・ゴーランヨーラン・グローバス、そして彼らが背負うキャノンフィルムズを追ったドキュメンタリーです。

上映の後に行われたレセプションパーティーにてこの作品を撮ろうと決めたきっかけについて監督に伺うと、『あの2人と出会い、というよりも私が会いに行って、あまりに正反対の2人の性格、だからこそそこに生まれる化学反応に惹かれて、会った瞬間これを映画にしなければいけない!と思ったの』とおっしゃっていました。

オープンに何でも話してくれるメナヘムに対して、人になかなか心を開かないヨーラン。彼と関係を築き、真意を話してもらえるまでには随分と時間がかかったとか。なにせ最初にインタビュー承諾の返事をもらったものの、その後6ヶ月間はインタビュー会場に現れたにも関わらず「今日は忙しいから受けられないよ」と言って帰ってしまうことも多かったそうです。

そんな2人はどんな質問に対しても全く違う回答を返し、「あれはこうだった!」「いや、こうだ!」などと喧嘩になってしまうので、監督は2人を同じ部屋には入れておけない、と判断したとのこと。そんな訳でお互い単独のインタビューによって映画が構成されていますが、そんな2人がついに顔を合せるシーンが2つ登場します。何とそのうち1つは撮影初日に、もう1つは最終日に撮ったラストカットだそう。そう考えるとなんだかとても感慨深いですね。

ネタバレになるので言いませんが、このシチュエーションでこれをやらせるなんてズルイ!と思うような、これこそ映画館、という微笑ましいシーンが登場するのでぜひご覧になって「これのことか!やられた!」と思ってください。

また別のお客様からは、「映画の中に入りきらず、カットせざるをえなかったシーンや、インタビューしたかったけれども出来なかった人などはいましたか?日本人としてはショー・コスギさんのインタビューが聞きたかったのですが!」との質問も。

それに対して監督は、「もちろん使いきれなかった素材はいっぱいありますが、私の映画づくりの哲学として、ストーリーラインの筋を一本通す、というものがあり、だから一つのエピソードを何人もに語らせることは出来なかったのです。どのエピソードを誰が話すべきなのか、よくよく吟味して編集しました」とのこと。またインタビューについては、インタビューしたけれども作品には使われていない人もいれば、したかったけれども出来なかった人もいたそう。しかしヴァン・ダムだけは絶対に話を聞かなければ!と何ヶ月もコンタクトを取り続けたそうです。

「あらゆる手を使って彼から話を聞こうとしたものだから、私は彼の周りの人間ほぼ全てを知っていたのよ。プロデューサーでしょ、家族でしょ。とにかくどこにでも電話をかけたの。彼はいつも「分かった、インタビューを受けるよ、でも来月ね」「今月は撮影があるから」「今週はミーティングで」って言うのよ。だから何ヶ月にも渡って電話し続けたわ。だって「ノー」とは言われていないんだもの!そうでしょう?」

とチャーミングに身振り手振りを使ってその時の状況を話す監督。情景が目に浮かんでくるようで思わず笑ってしまいました。

そして編集もほぼ終わりかけていた頃に、とある友人がヴァン・ダムに会う機会があるかもしれない、との情報。そこでカメラとマイクを託して送り出したそうです。そしてついに、ほんの短いインタビューに成功。その時ヴァン・ダムはプールに浮かんでいたという話。

しかしリリースフォームのサインには一つの条件が。完成した作品を見せること、それに納得したら、映像の使用許可を出そうじゃないか、というもの。そこで彼のインタビューを取り込んだ完成品を送ったところ、観た直後に慌てて電話がかかってきたそうです。

「こんなにいい作品ならなんでもっとちゃんとインタビューしてくれなかったんだ!もっと長く喋ったのに!」

全く、困ったものですね。しかし映画が完成した後、メナヘムのご家族にヴァン・ダムから個人的なメッセージの伝言を預かったというヒラ監督。

あわや「B級映画」と括られ、大ファンを抱えると同時に時に批判の対象となることもあるキャノンフィルムズですが、そこからスターになった俳優たちがいるのことも事実。彼らに最初の一歩を提供したというのは間違いないのです。ヴァン・ダムの素晴らしいところは、他の俳優たちとは違い、色々な思いを抱えながらもその感謝を忘れずにいることだ、と監督はおっしゃっていました。

会場にはキャノンフィルムズのTシャツを来て来場した往年のファンの姿も。上映後には監督のサインを求めて長い列ができていて、みなさんキラキラとスクリーンを見つめる映画少年に戻ったかのような目をしていました。

私個人としては、とにかくメナヘムの澄んだ目と、前に向かうエネルギー、純粋すぎる映画への愛が強烈で、なんと始まって3秒で泣いてしまいました。というよりも涙が垂れてきました。あの華やかな世界を、実際に生きた人間の人生を通してみることで、映画や人生について深く考えさせられてしまったのです。

そしてそんなメナヘムの姿を観て、なぜか「スカイライト」(デイヴィッド・ヘアー)の主人公キーラの有名な台詞を思い出して胸が苦しくなってしまったのでした。何年もの間会っていなかった昔の恋人とさんざん色々なやりとりをした後、ようやく愛を告げた直後の台詞です。

It’s what Alice said. you’ll never grow up. There is no peace in you. I know this. For me there is no comfort. There’s no sense of rest. The energy’s wonderful. Oh God, I tell you the energy’s what everyone needs. but with the energy comes the restlessness. And I can’t live in that way.

アリスもそう言っていたわ。あなたは永久に大人にはならない。あなたの中に平和はないの。分かってるのよ。でもね、私にとってそれは心地よさがないということ。心休まる場所がないということなの。熱があるのは素晴らしいことだわ。そうよ、全くよ!それこそ全ての人間が必要とするものだわ!でもね、熱があなたに留まることを忘れさせるの。私はそうは生きられない。

 

ここに出てくる「restlessness、留まることをしらない、静寂を知らない」という言葉がどうしてもメナヘムと重なって頭にひっかかってしまったのでしょうね。素晴らしい戯曲なので気になった方はぜひ読んでみてください。

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ちなみに映画祭ラインナップの中でのおすすめとして、アート系映画の好きなヒラ監督は『バーフライ』の名をあげていましたが、メナヘム自身は『サンダーボルト救出大作戦』が一番のお気に入りだったとか。常々『あの映画はアカデミー賞を受賞するべきだった!』と言っていたそうです。自分の最高傑作を聞かれると必ず『次回作』と答えていたメナヘムが、次点として必ずあげていた映画だとか。ぜひご覧になってください!

梶原香乃 東京の下町生まれ。江戸っ子。東京/イギリス育ちの役者。はらわたのある映画女優になりたい。