『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』レビュー第1弾!


11月16日の公開に先立ち、『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』の試写が爆音上映で行われた。上映前には、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏のトークショーも開催された。

『ボーダーライン』シリーズを2010年代最高のシリーズ映画だと言う同氏は、この作品について、「絶望とエンタメの両立は可能だ」と語った。
2015年に公開され、アカデミー賞3部門ノミネートを果たした『ボーダーライン』。アメリカとメキシコの国境で繰り広げられる壮絶な麻薬戦争を描いていた作品だ。続く今作では、物語は新たなステージに進む。

しかし今作では、前作からのスタッフ交代が目立った。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、主演のエミリー・ブラント、音楽のヨハン・ヨハンソンは皆離脱している。(音楽についてはWorld News[698]『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ』におけるヒルドゥル・グズナドッティルの音楽を参照してもらいたい。)

スタッフの交代が目立った中で、脚本家は前作に続きテイラー・シェリダンが担当した。宇野氏は『ボーダーラインは脚本家シェリダンの映画だと言っていい』と、スタッフ交代の不安を感じさせない今作に太鼓判を押した。

今作で脚本家を務めたテイラー・シェリダン。役者出身の彼は、今年公開された『ウインド・リバー』で初監督を務めたことでも注目を浴びたが、『最後の追跡』(2016)ではアカデミー賞脚本賞にもノミネートされている。そんな彼の脚本デビュー作が前作『ボーダーライン』だった。
宇野氏はシェリダンを、「常にボーダーを描いてきた脚本家」だと語る。西部劇の『最後の追跡』、ネイティブアメリカンとアメリカ社会の闇を描く『ウインド・リバー』と共に、メキシコとアメリカの国境問題を描いた『ボーダーライン』は、フロンティア三部作ともいわれている。
劇中では、このような西部劇の現代版ともいえる構図の中で、単なる麻薬カルテルの戦争には収まらない過酷な闘いが繰り広げられる。問題はより複雑化し、困難を極めていく。より一層国境を感じさせる作品となった今作に、宇野氏は『トランプ当選後の映画という印象』と語った。

しかし主演が変わったことで、物語の視点は大きく変わった。
エミリー・ブラント演じる女性が壮絶な麻薬戦争に巻き込まれていく様子を描いた前作とは異なり、今作では過酷な世界でアンチヒーローとして戦い続ける男たちが力強く描かれ、深い印象を残す。やはり前作に引き続き、アレハンドロ(ベニチオ・デルトロ)とマット(ジョシュ・ブローリン)の存在感は抜群だ。今作の二人は強く残酷でありながら、人間味が色濃く出ており、どこか感情移入してしまうようなキャラクターとなっている。それぞれのキャラクターの掘り下げもさることながら、この二人の関係性も見どころだ。
それに加え、新たに過酷な状況に巻き込まれていく若者達の姿がしっかりと描かれている。国境付近の混沌とした世界で物語を進めていくのは、次世代を担う若者達でもある。

シェリダンは、ボーダーラインを3部作構想で考えているという。しかし、ロケーションマネージャーだったカルロス・ムニョス・ポータルが、ナルコスの撮影中にマフィアに殺害されるという事件も起きているため、先が読めない状況だ。
物語の更に先を期待させるエンディングに次回作を期待したいと思う。

 

◇作品情報◇
原題 Sicario: Day of the Soldado
2018年/アメリカ映画/122分/字幕翻訳:松浦美奈
監督      ステファノ・ソッリマ
脚本      テイラー・シェリダン
プロデューサー ベイジル・イヴァニク
        エドワード・L・マクドネル
        モリ―・スミス
        トレント・ラッキンビル
        サッド・ラッキンビル
製作総指揮   エレン・H・シュワルツ
        リチャード・ミドルトン
        エリカ・リー
撮影監督    ダリウス・ウォルスキー
衣装デザイン  デボラ・リン・スコット
編集      マシュー・ニューマン
音楽      ヒドゥル・グドナドッティル
特殊効果    マイケル・マイナダス
美術監督    ケヴィン・カヴァナー
配給      KADOKAWA
提供      ハピネット/KADOKAWA
公式HP     https://border-line.jp/

小野花菜
早稲田大学一年生。現在文学部に在籍しています。趣味は映画と海外ドラマ、知らない街を歩くこと。