フィルフィルのコンサート(「ジョン・ウィリアムズ2」)レポート


2018年8月18日に、FILM SCORE PHILHARMONIC ORCHESTRA(フィルム・スコア・フィルハーモニック・オーケストラ)の第4回目の公演「ジョン・ウィリアムズ2」が行われた。同オーケストラは、通称でフィルフィルと呼ばれている。
当日の開演は16:00からであったが、すでに開演の1時間ほど前から多くの人が会場の東京オペラシティコンサートホールに詰め掛けた。本公演の前に、15:15から「ロビーコンサート」が行われたからである。

「ロビーコンサート」のために、ロビーには半円形に椅子が並べられていた。開場と共にすぐに満席となり、立ち見の人たちが椅子の背後に重なるように並んでいた。さらに、オペラシティコンサートホールのロビーは、上の階からも下の階を見下ろせる設計になっており、そこからも多くの視線が向けられていた。
「ロビーコンサート」では、今回の公演のテーマであるジョン・ウィリアムズの数々の楽曲が、本公演の大規模なオーケストラとは対照的な小編成によって演奏された。合計で3組の演奏者たちが登場し、それぞれの楽器編成も異なっていた。

1組目には、映画『ハリー・ポッター』の衣装で8人の演奏者が登場。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ファゴット、クラリネット、フルート、オーボエによる管弦8重奏である。演奏曲目は、映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』から、「マージおばさんのワルツ(Aunt Marge’s Waltz)」と「ダブル・トラブル(Double Trouble)」の計2曲[#1]。

2組目には、4人の演奏者が登場。ファゴット4重奏である。演奏曲目は、映画『ホーム・アローン』から、「メドレー(Somewhere In My Memory~Holiday Flight~The House~Star Of Bethlehem)」の計1曲[#2]。

3組目には、7人の演奏者が登場。ホルン、コントラバス、クラリネット、ドラム、鍵盤ハーモニカによる混合7重奏である。演奏曲目は、映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から、「酒場のバンド(CANTINA BAND)」の計1曲[#3]。演奏の途中からは、演奏者はステップを踏みながら演奏をし、また観客からは手拍子が起こる一場面もあった。

「ロビーコンサート」では、演奏だけではなく、衣装で視覚的に楽しませてくれたり、観客を巻き込みながら場を盛り上げてくれ、コンサートに歓迎されている印象を受ける。オーケストラコンサートに対しては構えてしまいがちであるが、本公演前に「ロビーコンサート」でリラックスすることができた。

<「ロビーコンサート」の様子(2018年8月22日のフィルフィル公式Facebookの投稿より)>

16:00になり、本公演が始まった。今回のコンサートは、「ジョン・ウィリアムズ2」のタイトルの通り、ジョン・ウィリアムズの音楽のみで構成されたプログラム。3部構成で、「第一部 ファンタジー映画の音楽表現」、「第二部 ジョン・ウィリアムズと戦争映画」、「第三部 ハイライト・オブ・スター・ウォーズ」である。

映画『フック』からの「ネヴァーランドへの旅立ち」でコンサートは幕を開けた。FILM SCORE PHILHARMONIC ORCHESTRAは、アマチュア演奏家で結成されたオーケストラであるが[#4]、驚くほどにエネルギーが満ち溢れ、非常に質の高い演奏を披露する。日々の練習の成果が結実した姿を目の当たりにしているように感じられ、一層、心に演奏が響く。
フィルフィルの公式FacebookTwitterInstagram(クリックでそれぞれの公式ページに飛べます。)では、日々の練習風景や、コンサートに至るまでの舞台裏を紹介している。そこには、今回のプログラムのために、日々、課題を見つけて克服する様子が写真と共に投稿されている。

映画『シンドラーのリスト』からの「シンドラーのリストのテーマ」では、ヴァイオリンのソロ演奏をコンサートマスターである金子昌憲さんが担当。また、映画『7月4日に生まれて』からの「7月4日に生まれて」では、トランペットのソロ演奏を森山一輝さんが担当。繊細でありながらも力強く響くヴァイオリン、朗々と鳴り響くトランペットの音色がコンサートホールを包み込む。

今回のプログラムでは、合唱も大きな聴き所のひとつであった。映画『プライベート・ライアン』からの「戦没者への讃歌」、映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』からの「運命の闘い」、映画「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」からの「英雄たちの戦い」では、合唱団によるコーラスが取り入れられた。
「戦没者への讃歌」がオーケストラと合唱によって披露されたのは、国内では初のことであるという。
また、『スター・ウォーズ』における2つの合唱曲(「運命の闘い」、「英雄たちの戦い」)は、盛り上がりの場面であったいえる。後述しているが、第三部において「合唱を入れること」がプログラムの軸となっていたからである[#5]。

司会は、全楽曲にわたって伊藤さとりさんが務めた。映画のキャスト、映画の物語を楽曲ごとに解説してくれ、音楽の先にスクリーンに映し出された映像を想像させる。
また、「第二部 ジョン・ウィリアムズと戦争映画」では、フィルフィルの代表兼音楽監督である戸田信子さんが加わり、映画音楽について解説をしてくれた。映画『7月4日に生まれて』からの「7月4日に生まれて」と、映画『プライベート・ライアン』からの「戦没者への讃歌」では、作曲家のジョン・ウィリアムズ、監督のスティーヴン・スピルバーグの音楽に対する言葉がそれぞれ引用された。さらに、映画『1941』からの「1941のマーチ」の解説では、「ミッキーマウジング」という専門用語が飛び出す場面もあった。
戸田信子さんの解説を通して、どのように映画音楽が映像とシンクロし、その効果とはいかなるものなのかを考えずにはいられない。また、フィルフィルのオーケストラの演奏によって、改めてそれらのことを直に感じることができた。

プログラムをどのように決めたのかについて、フィルフィルの公式Facebookにおける2018年8月15日の投稿で、その一部を知ることができる。「第三部 ハイライト・オブ・スター・ウォーズ」のプログラムの選曲の経緯についてである。それによれば、フィルフィルメンバーのコアな『スター・ウォーズ』ファンの6名が会議を行った。彼らは「スター・ウォーズ・サポーターズ」と呼ばれている。略して「スタサポ」である。実は、今回のコンサートの中でも、「スタサポ」の話題が少し挙がった。
「合唱を入れること」を必須項目として、そこから今回のプログラムのコンセプトを探ったという。そして、「戦いの曲集」、「エピソード7&8曲集」、「ライトモティーフ解説」などのアイデアが出る中で、最終的に「今までの全エピソードから重要なポイントを曲でおさらいする」というコンセプトに落ち着いたということだ[#6]。
また、プログラムの中の1曲であった映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』からの「THE REBELLION IS REBORN」は、日本国内では初演であった。

アンコールは、合計で3曲。主席指揮者の奥村伸樹さんがダース・モールの衣装とライトセーバーを身につけて登場。一瞬暗くなり、弦楽器の演奏者たちの弓が、青、緑、赤に光ってからそのまま演奏が始まるという驚きの演出があった。もちろん、これは弓をライトセーバーに見立てている。

1曲目は、映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』から「運命の闘い」。本プログラムにも組み込まれていたので、2回目の演奏であったが、『スター・ウォーズ』において、合唱が1つの軸となっているプログラムならではと感じる。

2曲目は、Tribute To The Film Composers。この楽曲は、2002年の米アカデミー賞の授賞式の際に、ジョン・ウィリアムズの指揮のもとで演奏された。様々な年代、作曲家の映画音楽で構成されている。

3曲目は、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』から「彼こそが海賊(He’s a Pirate)」(抜粋)。この楽曲は、フィルフィルの次回公演のテーマのヒントを提示するために演奏された。また、別のヒントとして提示されたのは、ひとりというよりは集団であること。ハンス・ジマーをはじめとする作曲家たちが所属するリモート・コントロール・プロダクションズの音楽であろう。
フィルフィルの代表兼音楽監督である戸田信子さんは、リモート・コントロール・プロダクションズに所属するハリー・グレッグソン=ウィリアムズと仕事をした経歴を持ち[#7]、さらに、詳細はまだ明かされていないが、最近では「日本発未来形アクション3Dアニメ」の音楽のために、リモート・コントロール・プロダクションズで仕事をしたことを自身のTwitterで報告している[#8]。
リモート・コントロール・プロダクションズをよく知る戸田信子さんの監督のもとで、フィルフィルのメンバーたちによって演奏される公演に期待が高まる。次回公演は、2019年3月10日に中野ZERO大ホールにて。

アンコールが終わると、写真撮影の時間がある。ステージ上の演奏者、そしてステージ近くにコスプレをした観客が迎え入れられる。今回は、『スター・ウォーズ』シリーズの音楽が演奏されたこともあり、その作品に合わせたキャラクターのコスプレが目立った。観客はカメラを手に持ち、撮影を開始。撮影の間は、オーケストラで「帝国のマーチ」を演奏してくれた。

終演後は、ロビーで演奏者たちと観客の交流があった。特に、フィルフィルのコンサートではコスプレをした観客がたくさんいたが、その中で多くの交流が生まれていた。

最後にフィルフィルのコンサートのパンフレットについて触れたい。パンフレットは、販売ではなく、入場者に無料で配られる。しかし、内容はとても充実している。ジョン・ウィリアムズの紹介、演奏者たちの名前、すべての演奏曲目の詳しい解説が書かれている。解説監修は戸田信子さんであるが、フィルフィルのメンバーたちが執筆している箇所も多くある。
パンフレットの楽曲解説のページには、「フィルフィルのメンバーとの出会いを築いてくれたジョン・ウィリアムズ・ファンクラブ会長、神尾保行氏へ敬意と追悼の意を込め、彼の言葉や解説の一部を掲載させていただきました」と記されている[#9]。戸田信子さんは国内だけでなく、海外でも活躍を続ける作曲家。戸田信子さんは、神尾保行さんがジョン・ウィリアムズとの出会いを与えてくれたことをきっかけに、この世界に足を踏み入れた[#10]。この一文において、神尾保行さんに対する戸田信子さんの深い思いを受け取らずにはいられなかった。

<FILM SCORE PHILHARMONIC ORCHESTRAの各リンク>

ホームページ:https://www.filmscorephil.com/

Facebook:https://www.facebook.com/filmscorephil/

Twitter:https://twitter.com/filmscorephil

Instagram:https://www.instagram.com/filmscore_phil_orchestra/

参考:

https://www.facebook.com/filmscorephil/videos/1840224992728435 [#1][#2][#3]

https://www.filmscorephil.com/aboutfilphil [#4]

https://www.facebook.com/filmscorephil/posts/2038378959547101 [#5][#6]

https://www.nobukotoda.com/biography [#7]

https://twitter.com/_filmscore/status/1005628123809918976 [#8]

「ジョン・ウィリアムズ2」のパンフレットより [#9]

https://www.facebook.com/nobuko.toda/posts/1491360207624940 [#10]

宍戸明彦
World News部門担当。IndieKyoto暫定支部長。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程(前期課程)。現在、京都から映画を広げるべく、IndieKyoto暫定支部長として活動中。日々、映画音楽を聴きつつ、作品へ思いを寄せる。