【東京フィルメックス2018日記】⑥(板井)


 

 東京フィルメックスのレポートをお届けいたします。

 第6回目は、11月23日(金)に上映されたラミン・バーラニ『華氏451』、アモス・ギタイ『ガザの友人への手紙』+『エルサレムの路面電車』の3作品3作品を紹介します。

・ラミン・バーラニ『華氏451』Fahreanheit 451

 アメリカ / 2018年 / 102分

 アミール・ナデリが脚本を担当し、ラミン・バーラニが監督を務めた『華氏451』は、本を読むことが禁じられた世界で、本を燃やす焼火士という職業に就く男モンターグの姿を描いている。ハイテク化が進んだ近未来の世界。焼火中隊は、ダーク・ナインというサイトに本のデータをアップロードする読書家たち(「ウナギ」という蔑称で呼ばれる)を見つけてはそれを焼き尽くす。この様子は火炎ショーとして、本を読まない「純国民」(ネイティヴ)たちの娯楽の一つとして生中継される。しかしモンターグは、自分の行いが果たして正しいことであるのかを苦悩しはじめるのだった…

 レイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』の映画化であり、過去にはフランソワ・トリュフォーが映画化を行なっている。脚本のナデリによると、焼火士の炎でしか明るくならないような暗い世界の空気感は、トリュフォーにあったロマンチックな要素を排すことで形づくられ、それによってより現代のアメリカ的な問題を描くことに成功したという。

 悪役であるモンターグの上官は、かなりの読書家らしいことが示唆されるが、そのような人物が純国民の幸福のために国家に奉仕する存在として描かれているところが興味深かった(それはまるでニック・ランドのよう)。小説では登場しないハーモニカのシーンは、ナデリ『ハーモニカ』のオマージュであるという。

 この作品はカンヌ映画祭でワールドプレミア上映を飾った。この映画は劇場公開の予定はないものの、(小説版で諸悪の根源とされていたテレビの)スター・チャンネルで放映されるという。

・アモス・ギタイ『ガザの友人への手紙』A Letter to a Friend in Gaza

イスラエル/2018/34分

 カミュの『ドイツ人の友への手紙』のオマージュとして製作された『ガザ友人への手紙』は、イスラエル政府によるガザ封鎖への抗議のためのドキュメンタリーである。今回のフィルメックスでは、ギタイの『エルサレムの路面電車』と併映された。パレスチナ人俳優のマクラム・フーリー、イスラエルの女優ヒラ・ヴィドア、アモス・ギタイたちが、パレスチナ問題をめぐるさまざまなテクストを朗読する、という内容である。また、ガザの写真がコラージュされ、パレスチナの悲惨な状況が映し出される。また最後には、カミュの『ドイツ人の友への手紙』が朗読される。

・アモス・ギタイ『エルサレムの路面電車』A Tramway in Jerusalem

イスラエル、フランス / 2018 / 90分

 ヴェネチア映画祭でも上映されたアモス・ギタイの新作『エルサレムの路面電車』は、エルサレムを東西に走る路面電車を舞台に、さまざまな乗客たちのエピソードをオムニバス形式のようにしてつなぎ合わせた作品である。それぞれのシーンは、乗客たちの顔のクローズアップの長回しで捉えられている。

 映画内では、七つの言語と、多様な人種、多様な宗教のものたちが登場する。監督によるとこの作品は、さまざまな人が偶然的に乗り合わせる路面電車を舞台にすることで、エルサレムという街を表現しながら、普段なら隣り合わせにならない人たちを隣り合わせにすることで、未来に開かれた共同体のあり方の可能性を描いたのだという。また、さまざまな人々が出演しているため、撮影現場自体が対話の場になったという。それは、楽観的な未来像ではあるが、あらゆるものたちが共存共栄しうるような、理想的な共同体のあり方を見出そうと試みることであろう。

板井 仁
大学院で映画を研究しています。辛いものが好きですが、胃腸が弱いです。