東京国際映画祭日記1『マリリンヌ』


 

 第30回東京国際映画祭開幕を来週に控え、コンペティション部門及びワールド・フォーカス部門に出品された作品のうち、数作品がプレス向けの内覧試写で上映された。「東京国際映画祭日記」と題したこの特集ページでは、映画作品の紹介やイベントの様子などを随時更新していきたいと思う。映画祭終了までお付合いいただければ幸いである。

 

 さて、最初に取りあげたいのは、ギヨーム・ガリエンヌ監督作品『マリリンヌ』(Maryline, 2017)だ。

 マリリンヌの夢は女優になること。小さな村の閉鎖的な家庭で育った彼女だが、父親の死をきっかけにパリへ出ることを決意する。しかし、ひとり飛び込んだ映画産業の世界では、稀に喜びをかみしめる時はあってもほとんどが辛い経験だ。屈辱的な出来事に遭遇しても、無口で遠慮がちな彼女に、他者へ不満をぶつけるための言葉などない。言い表せないもどかしさを抱えながら、それでも夢を掴もうとする若い女性の姿がそこにある。

 メガホンをとったのは、ギヨーム・ガリエンヌ。コメディ・フランセーズの会員として活躍する実力派俳優で、『イヴ・サンローラン』(Yves Saint Laurent, 2014)や『セザンヌと過ごした時間』(Cézanne et Moi, 2016)など多数の映画作品にも出演している。2013年には、監督デビュー作にして脚本・主演を務めた『不機嫌なママにメルシィ!』(Les Garçons et Guillaume, à table, 2013)で第39回セザール賞最優秀作品賞を受賞し、注目を集めた。本作はそれに続く長編第二作目となる。

 

 物語の着想は、ガリエンヌ自身が10年以上前に聞いた話から得たのだという。「これは15年以上前から撮りたいと思っていた物語なんだ。ある女性が自分の人生を私に語ってくれてね、それが忘れられなかった」(*1)また、今年8月、アングレームで行われたフランス語圏映画祭(Festival du Film Francophone d’Angoulême)でのインタビューでは製作動機について以下のように語っている。「無口な人には惹きつけられる。というのも、私はおしゃべりで、話すことが好きだからね(……)うまく表現できないことに苦しみ、理解に達していない他者を怒らせてしまうという苦悩を描いてみようと思ったんだ」(*2)

 そうした複雑な演技の要求される主人公マリリンヌ役に抜擢されたのがアデリーヌ・デルミーで、彼女もまたコメディ・フランセーズの役者である。ガリエンヌとは映画『イヴ・サンローラン』や舞台『Les Damnés』(2016)(*3)で共演しており、ガリエンヌのテレビ映画作品『Oblomov』(2017, フランス、ドイツでは10月25日に「アルテ」で放送予定)にも出演している。『マリリンヌ』が公開されるやいなや彼女の演技は話題となり、例えばル・パリジャンの記事では以下のように書かれている。「彼女は目がくらむほどのパレットを広げる。時に笑い時に苦しみ、爆発的な喜びもあれば抑圧された怒りもある。美しさ、醜くさ、面白さ、彼女はあらゆる感情を表現するのだ。アングレームフランス語圏映画祭でも彼女の演技は絶賛だった」(*4)

 

 さて、この映画には「言葉」(mots)という単語がよく出てくる。言葉をもっていなかったマリリンヌが女優として言葉を自由に操るようになったとき、彼女に見える景色はどのようなものだったのか。東京国際映画祭での上映日程は以下の通りである。

10月27日(金)12:05 TOHOシネマズ六本木ヒルズScreen9

10月29日(日)10:25 EXシアター六本木

 

 

(*1)http://madame.lefigaro.fr/celebrites/dans-son-nouveau-film-maryline-guillaume-gallienne-depeint-la-durete-du-monde-du-cinema-161017-134812

(*2)https://youtu.be/LyqF8zc3wQo

(*3)ルキノ・ヴィスコンティ『地獄に落ちた勇者ども』を舞台化したもの。演出はイヴォ・ヴァン・ホーテが手掛けた。

(*4)http://www.leparisien.fr/week-end/retenez-son-nom-adeline-d-hermy-13-10-2017-7324392.php

 

原田麻衣
WorldNews部門
京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程在籍。フランソワ・トリュフォーについて研究中。
フットワークの軽さがウリ。時間を見つけては映画館へ、美術館へ、と外に出るタイプのインドア派。