東京フィルメックス日記2018⑤(鳥巣)


1117日から1125日に開催された第19回東京フィルメックスにて、閉会式と鑑賞した作品「アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト(原題)をご紹介したいと思う。 

上映前に行われた閉会式では、各賞の受賞者が発表された。

観客賞に中国と日本の合作「コンプリシティ」(近浦啓監督)、学生審査員賞に「ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)」(ビー・ガン監督)、スペシャル・メンションに「夜明け」(広瀬奈々子監督)、審査員特別賞に「轢き殺された羊」(ペマツェテン監督)をそれぞれが受賞した。

最高賞である最優秀作品賞は、「アイカ」(セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ 監督)が受賞した。

審査員長のウェイン・ワン監督は総括として「このような素晴らしい映画祭が日本にあって、皆さんはとてもラッキーだと思います。どの作品も秀作で、1日に23本観て、今年はとても恵まれた年でした。」と述べた。

 

中国、フランス / 2018 / 141
監督:ジャ・ジャンクー (JIA Zhang-ke)
配給:ビターズ・エンド

ヤクザな稼業で金を稼いでいるビンと、その愛人チャオ。裏社会に生きる男女の18年間にわたる関係を山西省、長江流域、さらに新疆にまで至る壮大なスケールで描いた作品。これまでのジャ・ジャンクー作品の集大成とも言える傑作。

製作に3年かかったという本作。舞台が広い中国のなかでも転々と変わる為、何千キロもの移動を重ねながら撮られたという。これまでのジャ・ジャンク―の作品すべてを総括し、キャリアのまとめとして作られたかのようだ。ただ決して総集編のような単純なものではなく、厚みがあると感じるのは、撮影を担当したフランスの名カメラマン、エリック・ゴーティエによるものかもしれない。すべての絵が確立されていて、忙しいであろう彼を3年もどうやってつかまえていられたのだろうと勝手に想像してしまった。

拳銃やヤクザの闘争は「青の稲妻」「罪の手ざわり」を思わせ、チャオがビンを探して長江をくだるあたりは「長江哀歌」だし、ネタばれにならないと思うが、決して格式ばらない彼らしいユーモアとして、UFOが飛んでくるシーンもあるのである。

凛としたチャオを演じたチャオ・タオは今までになく美しく、圧倒された。個人的には顔立ちが夏目雅子に似ているなと感じ、彼女の代表作である「鬼龍院花子の生涯」での熱演を思いだした。それと反するような、男の強さと共に、情けなさだったり弱さだったりを体現するリャオ・タン。現時点でのジャ・ジャンク―監督の男女観を表しているようだ。

タイトルの「アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト(原題)」に疑問を感じていたが、作中にビンとチャオが火山のたもとで会話をするシーンがあり、灰も作られた瞬間は白いんだろうかという話からきている。深みとセンスがあり、とても印象的だった。キャリアの総括のような作品を撮ったのち、ジャ・ジャンク―が今後どのような作品を撮るのか、とても楽しみだ。また本作は、ビターズエンドによる国内配給が決定、来年には公開予定だ。

 

個人的に映画祭を通して思ったことは、暗い展開なのはわかっていたが「アイカ」は圧巻だったということと、完売状態であった「ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)」を鑑賞できなかった為、それが残念だったことだ。完売になる新人監督の作品はなかなかないし、素晴らしい作品すぎて、さっそくリアリーライクフィルムズ、ガチンコ・フィルム シネフィルによる国内配給が決定、来年夏に公開予定だ。また、授賞式にかぎると受賞時の「夜明け」の広瀬奈々子監督の繊細な表情にとても胸をうたれた。これからきっと才能をのばしていくに違いない。今後の東京フィルメックスにも期待したい。

鳥巣まり子

ヨーロッパ映画、特にフランス映画、笑えるコメディ映画が大好き。カンヌ映画祭に行きたい。現在は派遣社員をしながら制作現場の仕事に就きたくカメラや演技を勉強中。好きな監督はエリック・ロメールとペドロ・アルモドバル。