『ボーダーライン:ソルジャーズデー』レビュー第2弾!新作は「リプリーのいない『エイリアン』」?


『メッセージ』『ブレードランナー2049』の鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督し、アカデミー賞にもノミネートされた前作の続編を撮るというのは相当のプレッシャーがあったに違いない、などという心配は余計なお世話だったらしい。ステファノ・ソッリマ監督曰く「脚本を読んだとき、私の感性と特異性を失わない作品だと確信した」と自信に満ちた答え。「もちろんヴィルヌーヴを尊敬している。天賦の才に恵まれた監督だ。でも、監督にはそれぞれ個性があるだろう?それは指紋みたいに違うんだ」と語るソッリマ監督は『エイリアン』と『エイリアン2』の違いを引き合いに出し、「完全に異なるタイプの監督(リドリー・スコットとジェームズ・キャメロン)が、ともに完璧なスタイルを持った作品をつくりあげた。『ボーダーライン:ソルジャーズデー』もそれと同じだ」と自分の指紋をくっきりと残した出来映えに満足のようだ。

 

前作では、新入りのFBI捜査官を演じたエミリー・ブラントが光った。ほとんど事情を知らされないまま、CIA捜査官マット(ジョシュ・ブローリン)と元検事の殺し屋アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)の常軌を逸した行動に翻弄され、善悪の「ボーダーライン」に直面して苦悩する彼女は、観る側の心情そのもの。次に何が起こるのか、誰が敵で味方なのかわからない状況に彼女もろとも巻き込まれる感覚が興奮を呼んだ。しかし本作にエミリー・ブラントは登場しない。「リプリーのいない『エイリアン』」のようなものである。

 

この点についてソッリマ監督は「エミリー・ブラントは本当に素晴らしかった。前作での彼女はいわば『道徳的な視点』。マットとアレハンドロは彼女の目を通して語られ、常に彼女の道徳的なジャッジが下されていた。本作では、そういったフィルターを取り払い、二人のキャラクターを観客がみずからのジャッジに基づき知ることに主眼を置いた。だからこそ、観客は二人の意外な一面を発見して驚くだろう」と語る。「ソルジャーズデー」は、文字どおりマットとアレハンドロ、二人の兵士を深く掘り下げて描くことで、前作を継承しつつ新たな側面を見せる作品だ。

 

では、本作の見所はどこにあるか?

 

◆男くさい怒濤のアクション祭り!

道徳の鎖から解き放たれたおっさん二人が、前作以上に好き勝手放題暴れまくる。「デル・トロ撃ち」として話題を呼んだ、予告編にも出てくるガンアクションをはじめとする銃撃戦。砂漠を走る車の隊列に迫るヘリといった迫力推しの場面。「兵士」の物語であるがゆえのディテールへのこだわり、作戦時の細かな役割分担描写は、好きな者にはたまらないだろう。「兵士」である彼らには当然コマンダーがおり、全てはその命令次第。理不尽な指令に唇をかみしめて従うマットに共感し、それでも自己の信念を貫き通すアレハンドロに拍手喝采したくなるはず。

 

◆実は女子萌え要素も満載!

作戦の行きがかり上、アレハンドロは誘拐した麻薬王の娘を連れ、単身で国境越えを目指す。突然、目の前に現れた強そうだが仏頂面のおっさんと、負けん気の強いお嬢さんの逃避行という、おっさん好きには沼の予感しかない展開。前作ではクールにエミリー・ブラントをいたぶっていたデル・トロが一転、少女を守らんと満身創痍で泥と血にまみれて這いつくばる。ある意味、めちゃくちゃ格好悪いが、最高にカッコイイ…胸キュンの瞬間が押し寄せる後半はデル・トロに釘付け!

 

前作よりエンターテインメント度が抜群にアップしているが、根底には、トランプ時代のアメリカが抱える「国境問題」がシビアに描かれている。そんな社会派要素も取り込みつつ、派手なアクションを盛り込んだシンプルかつ力強い物語で、誰もが楽しめる作品になっている『ボーダーライン:ソルジャーズデー』。次作での新たな展望を予感させるラストに加え、デル・トロがエミリー・ブラントに対し「3作目について素晴らしいアイデアがあり、きみはその中で大きな役割を果たすことになるだろう」と語ったと伝えられていることからも、ファン必見の一作だ。もちろん本作から観て前作に戻るという逆鑑賞も「世界観は同じだが全く違う作品」だから可能。まずは『ボーダーライン』という世界を劇場で体感してみよう。その臨場感、スピーディな映像がもたらす興奮のあとだから訪れる、やるせなさ。これぞ『ボーダーライン』である。

◇作品情報◇
原題 Sicario: Day of the Soldado
2018年/アメリカ映画/122分/字幕翻訳:松浦美奈
監督      ステファノ・ソッリマ
脚本      テイラー・シェリダン
プロデューサー ベイジル・イヴァニク
        エドワード・L・マクドネル
        モリ―・スミス
        トレント・ラッキンビル
        サッド・ラッキンビル
製作総指揮   エレン・H・シュワルツ
        リチャード・ミドルトン
        エリカ・リー
撮影監督    ダリウス・ウォルスキー
衣装デザイン  デボラ・リン・スコット
編集      マシュー・ニューマン
音楽      ヒドゥル・グドナドッティル
特殊効果    マイケル・マイナダス
美術監督    ケヴィン・カヴァナー
配給      KADOKAWA
提供      ハピネット/KADOKAWA
公式HP     https://border-line.jp/

小島ともみ
80%ぐらいが映画で、10%はミステリ小説、あとの10%はUKロックでできています。ホラー・スプラッター・スラッシャー映画大好きですが、お化け屋敷は入れません。