大阪アジアン映画祭2018 日記5


IndieTokyoメンバーがリレー形式でお伝えしてきた「大阪市アジアン映画祭2018」日記も最後となりました。本日は、最終日の模様をお伝えします!

『マイ・カントリー マイ・ホーム』
2018年 ミャンマー・日本

監督:
チー・ピュー・シン

出演:
ウィ・モン・シュエー・イー
アウン・イェ・リン
ヤン・アウン
森崎ウィン
川添野愛

日本で生まれ育ったミャンマー人女子高生のナンが、2つの祖国への想いの中で葛藤し、成長する姿を描いた青春物語。彼女の父サイは、30年前にミャンマーの民主化運動に参加し国を追われ、日本に難民として移住した過去をもつ。自分を日本人だと思って生きてきたナンには、サイの祖国ミャンマーに対する強い思いが理解できない。しかし、ほかの日本に住むミャンマー人や、ミャンマーの親戚と触れ合う中で、彼女の祖国に対する想いは変わっていく…。

同じミャンマーからの移民であっても、バックグラウンドの違いによって想いは様々だ。サイ役を演じるミャンマーアカデミー賞常連のヤン・アウンが、祖国への変わらぬ愛情を真摯に演じ、作品に深みをもたせている。また、スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』の公開も控える森崎ウィンが、自身の生い立ちと重なる、幼少期にミャンマーから移住し日本で育った歌手という役どころを演じているのにも注目だ。

本作はどこか懐かしさを感じる青春映画であると同時に、政治的なテーマも扱っている。監督は、ミャンマー国内での劇場公開には検閲があるといい、政治的な言及は挑戦だったという。2016年のアウンサンスーチー政権発足後は、以前に比べて映画製作の自由度は高まったものの、検閲に時間をとられ公開を待っている作品も数多くあるそうだ。しかし、本作はエンターテイメント作品でもこうした表現ができるという可能性を示してくれた。ミャンマー映画界のこれからに期待が高まる。

本作は、2018年3月29日(木)9:00〜11:10
NHK BSプレミアムでの放送が決まっている。

『どこでもない、ここしかない』
2018年 日本・スロベニア・マケドニア・マレーシア

監督:
リム・カーワイ

出演:
フェルディ・ルッビジ
ヌーダン・ルッビジ
ダン
アンニャ・キルミッスイ
アウグストゥス・クルースニック

バルカン半島ではマイノリティーであるトルコ系移民のフェルディは、スロベニアで妻ヌーダンとゲストハウスを経営している。しかし、フェルディの女癖の悪さに耐えきれず、ヌーダンは家を出ていってしまう。妻の存在の大切さに気がついたフェルディは、マケドニアの実家にヌーダンを迎えにいくが、彼女は迎えに来たフェルディに無理難題を押しつける…。

というストーリーの本作だが、実は、これは全て即興で、5週間の撮影の中で生まれたシナリオだそうだ。出演者は、実際に現地で出会った、地元の人々。演技経験もほとんどない。リム・カーワイ監督が、実際にフェルディ(実名である)の経営するゲストハウスに泊まった際に、この美しいスロベニアの景色と、フェルディという人物を中心に、何か映画が撮れないかと思い立ったという。

しかし、『どこでもない、ここしかない(Nowhere, Now Here)』というタイトルと、「移民」というテーマだけは決まっていたそうだ。カーワイ監督自身、中国にルーツをもつ中華系マレーシア人であり、現在は大阪で活動をしている。「自分自身、どこにでもいるが、どこにもいない。」という。では、何が「ここしかない(Now Here)」という理由になるのか。そんなことを考えさせてくれる作品だ。

出演者の演技の自然さもさることながら、即興で作り上げたとは思えない、美しい構図にも魅了される。未知の土地を訪れた、監督の新鮮な驚きを追体験できるかのようだ。劇場公開が期待される。

『名前』(クロージング作品)
2018年 日本

監督:
戸田彬弘

出演:
津田寛治
駒井蓮

直木賞作家・道尾秀介が書き下ろしたオリジナル原案を、舞台演出家、脚本家、プロデューサーとしても活躍する戸田彬弘監督(『ねこにみかん』『狂い華』)が映画化。

経営していた会社が倒産し、逃げるように茨城にやってきた中村正男(津田寛治)は、体裁を保つため様々な偽名を使い、自堕落な暮らしを送っていた。そんなある日、彼を「お父さん」と呼ぶ女子高生、葉山笑子(駒井蓮)が現れる…。

メジャーからインディペンデントまで、数多くの映画やドラマで活躍するベテラン俳優、津田寛治が、うだつの上がらない正男を愛嬌たっぷりに演じる。オーディションで笑子役を勝ち取った駒井蓮は、なんと演技は本作がほとんど初めてだったそうだ。監督は、「撮影当時15歳の高校1年生だった彼女は本当にフレッシュで、新鮮な演技をしてくれた。素直になんでも指示を聞いてくれたけれど、まずは自分自身の演技を信じて、と伝えた」という。正男を振り向かせるため少し背伸びをしているような笑子が、最後には自分自身の力で前に向かっていく、その姿はまさに彼女の女優としての成長と重なる部分があったのだろう。また、演劇部に所属する彼女が、劇中劇というかたちで自分の殻を破っていく姿も、真に迫るものがあった。

脇を固める俳優陣や、深田晃司監督作品のカメラマンとしても知られ、戸田監督の『ねこにみかん』でも撮影を務めた根岸憲一の情感豊かな映像にも注目である。

本作は、2018年初夏、東京・新宿シネマカリテほかで公開予定。

また、観客賞は『恋の紫煙3』(パン・ホーチョン監督 香港・中国)に決定しました。

みなさんは、気になる映画は見つかりましたか?アジアの珠玉の作品を届けてくれる大阪アジアン映画祭、これからも注目です!

北島さつき World News&制作部。 大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。