大阪アジアン映画祭2018日記4


 

■『牌九(パイゴウ)』2018/インドネシア/87min.

 

 

 

 

 

 

監督:シディ・サレ

出演:アントニー・シー、イリーナ・チュウ、イケネ・パァレンティーナ、

    チー・ジャン・タン、フェルディ・ソライマン

 

 監督はシディ・サレ、もともと撮影監督やプロデューサーとして活躍しており、『空を飛びたい盲目のブタ』(Babi buta yang ingin terbang, 2008)はその代表作である 。オムニバス作品Belkibolang(2011)への参加を機に監督としても映画制作に関わるようになり、これまで四作の短編を生み出してきた。そして長編第一作目となったのが、今回上映された『牌九』である。

 

 シスカは元恋人エディが結婚するとの情報を聞き、式に潜入し邪魔することを試みる。式場でシスカを見かけたエディは、彼女がよからぬことをしでかすに違いないと察し、婚約者ルーシーの目を盗みどうにかしてその場からシスカを追い払おうとする。ルーシーの父リムは裏社会のボスであり、彼もまた何かを企んでいる様子。本作は、それぞれの秘密を抱えた登場人物が起こす行動によって進行する、サスペンス・ドラマである。

 

 上映後の舞台挨拶によると、今作の構想は2015年から始まったようである。アイディア自体は監督のものであったが、そこからは主演のイリーナ・チュウ、プロデューサーのトゥケン・ジーと話すなかで具体的なものにしていった。監督は今作の特徴としてまず「華人系インドネシア人の支配する社会を描いたこと」を挙げた。政治的、民族的問題を抱えるインドネシアにおいて、そのような社会を描いた作品はあまり見られないという。今作では、リムをボスとする組織で中国語が話されていたり、赤色のもので祝いの場が装飾されていたりと、至る所で中華系の雰囲気が醸し出されている。その中でもとりわけ目に入るのは円卓の存在だ。食事のシーンや打ち合わせのシーンだけでなく、何度かインサートされる牌九(牌九牌を用いたゲーム)シーンにおいても、ゲーム台である真っ青な円卓が真上から映されている。

 

 さて、映画の題名ともなっている「牌九」だが、これは相手の手中が見えずこの先どう展開するのか分からないという状況のメタファーとなっている。それぞれの陰謀はどのような結末を迎えるのか、牌九シーンは具体的にどう物語と関わっているのか、全てが明るみになるラスト・シーンにおいてわれわれは、本作においてサスペンスとそれに対する緩衝材のような「ゆるさ」とのバランスが心地よく保たれていたという事実に改めて気付くことになるだろう。

 

【次回上映】

3/17(土)21:10 シネリーブル梅田シネマ4

 

 

原田麻衣

WorldNews部門。

京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程在籍。研究対象はフランソワ・トリュフォー。

フットワークの軽さがウリ。時間を見つけては映画館へ、美術館へ、と外に出るタイプのインドア派。