大阪アジアン映画祭2018日記3


 

 映画祭3日目の昨日は、ナワポン・タムロンラタナリット監督『ダイ・トゥモロー』石原海監督『ガーデン・アパート』を観てきました。どちらも以前から楽しみにしていた作品です。

 

『ダイ・トゥモロー』(Die Tomorrow)2017/タイ/75min.

 

 

 

 

 

 

 監督:ナワポン・タムロンラタナリット

 出演:サニー・スワンメーターノン、パッチャー・プーンピリヤ、

    シラート・インタラチョート、ラッタナラット・ウアタウィークン、

    モーラコット・リウ、ゴーンラミット・ワチャラセティアン 他

 

 ナワポン監督の作品といえば、これまで日本でも第26回東京国際映画祭にて『マリー・イズ・ハッピー』(Mary Is Happy, Mary Is Happy, 2013)が、第11回大阪アジアン映画祭にて『フリーランス』(FreelanceHam puay…Han phak, Ham rak mor, 2015)と『あの店長』(The Master, 2015)が上映されており、その都度注目を集めてきた。そして今回、2年ぶり2回目となる大阪アジアン映画祭に出品されたのが、監督にとって長編第6作目となる『ダイ・トゥモロー』である。本作は2012年から2016年までの間に新聞に掲載された幾つかの実話をもとにしたもので、「死」そして「人生最後の日」がテーマとなっている。

 

 真っ黒な画面、左上の端に小さくタイマーが示され、秒速よりも速い均等な音が鳴り響く。オフの音を効果的に使用するオープニング・シークェンスは、そういえば『マリー・イズ・ハッピー』でも印象的だった。しばらくすると、「地球上では1秒間に2人が死亡する」という事実が示され、タイマーの横には時間の経過とともに死者数がカウントされていく。時折画面にあらわれるこの表示は、今この瞬間にも絶えずどこかで誰かが死を迎えているということをわれわれ観客に意識させる。

 

 映画を構成するのは、「人生最後の日」に関する6つの物語、「死」について問うたインタヴュー、そして先にも述べた黒い画面に示される文字や数値である。6つの物語はフェイク・ドキュメンタリーの形式をとり、それぞれ「人生最後の日」と後日談のパートに分かれている。おおよそ1:1の画角で示される前者の映像からは、誰もが日常の生活を撮影し投稿できるインスタグラムを思わずにはいられない。ここでの映像がある種の衝撃をもたらすのは、死があまりにも唐突に訪れているからである。「人生最後の日」の映像に映る被写体は、その日が自分あるいは近しい人の最後の日になることなど知る由もない。しかし確かに死というものは監督のいうとおり、「私たちが考えているよりも実際には身近なもの」なのである[*1]

【次回上映】

3/15(木)21:20 シネリーブル梅田シネマ4 ◎ゲスト登壇あり

 

 

『ガーデンアパート』2018/日本/77min.

 

 

 

 

 

 

 監督:石原海

 出演:篠宮由香利、竹下かおり、石田清志郎、鈴木悠、石原もも子

 

 石原海監督は、現在東京藝術大学に在籍している現役の大学生であり、これまでUMMMI.の名で様々なヴィデオ作品を発表してきた。2011年(当時16歳)には、初の短編映画がイメージフォーラムフェスティバルヤングパースペクティブ部門で入選し、2013年にはポンピドゥーセンター主催のオーディオビジュアル・フェスティバルであるオールピスト東京に入選するなど早くからその才能をみせている。そして今回、長編第1作目となったのが「壊れそうな愛」そして「孤独」を描いた『ガーデン・アパート』である。

 

 物語は三人の男女——若いカップルのひかりと太郎、そして太郎の叔母である京子——の一晩を描いたものである。ひかりは太郎との子どもを妊娠しているが、バイト暮らしの二人には金銭的な余裕がない。そこで太郎はひかりに内緒で京子——彼女は若くして夫を亡くしアルコールに溺れ狂気的な言動を繰り返している——にお金を借りる。二人の前に京子が現れ事情を知ったひかりは、今度は太郎に内緒で京子のもとへ行く。

 

 まずもって目に入るのは、常に奥行きそして幅を感じさせる立体的な空間作りである。とりわけ、京子が螺旋階段を上り下りしてみせるシーンや画面奥から手前へと車が直進してくるシーンは特徴的だといえる。また、空間に仕切りを作ることで立体感を生み出している場面もある。例えば、ひかりが京子の同居人である世界とランジェリー・ショップに侵入し一夜を過ごすとき、二人の空間は試着室の内と外で区切られており、ひかりが太郎に向かって「一人になりたい」と告げるときには画面中央寄りに存在する棚が二人を隔てている。「孤独」というテーマを思えば、こうした空間を分ける装置は、人と人との間に置かれた境界線と捉えられるかもしれない。

 

 そしてそのような空間に、照明や音響が物語上の演出という範囲のみに収まることなく同居していることにも注目したい。映画だけではなく、ヴィデオ作品やインスタレーションを手がける石原監督だからこそ作ることのできる映像がそこには広がっていた。

 

【次回上映】

3/16(金)18:45 シネリーブル梅田シネマ3 ◎ゲスト登壇あり

 

 

原田麻衣

WorldNews部門。

京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程在籍。研究対象はフランソワ・トリュフォー。

フットワークの軽さがウリ。時間を見つけては映画館へ、美術館へ、と外に出るタイプのインドア派。