三宅唱『きみの鳥はうたえる』(2018)レビュー第2弾・永山桃


「僕」、佐知子、静雄。

佐知子(石橋静河)の起こした些細な出来事をきっかけにし、「僕」(柄本佑)と静雄(染谷将太)と佐知子の3人で過ごす夏が始まった。3 人は同じような雰囲気を纏っていて、仲良くなるのは至極自然のように思える。

世の中のしがらみに嫌気がさしていて、できるならば面倒な事は見なかったこと、知らなかったことにしたいし、それで済むなら喜んでそうする。そこに罪悪感もないし、何も感じない。感じていてもそれを見ないようにして生きていける。

「僕にはこの夏がいつまでも続くような気がした。9月になっても10月になっても、次の季節はやってこないように思える。」

冒頭の「僕」のセリフは、「僕」の感じている空気感でこの映画に充満する空気感でもある。

3人の関係をはじめとして全てのことが靄がかかったように曖昧にみえるのは暑い夏のせいか、いや、流れる時間に逆らって「僕」がそう感じているのだ。

「僕」と佐知子は関係を持つが、その間柄は 時に恋人であるが時には違うというような曖昧な関係だ。

佐知子は「僕」とも静雄とも同じようにお酒をのみ、クラブで踊り、はしゃぎ、笑う。

彼女は2人の間をゆらゆらと水の中にいるように泳ぎ、わたる。 クラブで踊るシーンの彼女は特に満たされ、美しい。そう思うと3人はまるで暑い夏の中、水の中で泳いでいる魚のようだ。見ているこちら側からは水面がゆらゆらと揺れて、キラキラと光でひかっているように見える。透き通った水の中、ヒラヒラとヒレや尾を動かして泳ぐ魚。水の中は美しいだけではなく、時には敵も現れるし他の魚と喧嘩もする。魚たちは泳ぎ続け、その時間は永遠とも思える—。

しかし私たちは流れる時間を止めることは出来ない。

当然のように夏は終わる。

時間は流れているから。3人の過ごす時間にも季節の終わりとともにそれはやってくる。

彼らが出会い、3人の夏が始まった時から、終わりに向かってゆっくりと彼らのペースで泳いでいたのだと思う。

何にも干渉されないように見える彼らも、時間と、無意識に起きている内面の変化には逆らえない。

3人で過ごした夏は、1年後、そしてまた1年後とやってくる夏の中の1ページだ。

でもこの夏は、それぞれの中に特別なものとして映り、何かが変わった大切な夏でもある。

 

 

函館シネマアイリス開館20周年記念作品

『きみの鳥はうたえる』

2018年 / 106分 / 2.35 / カラー / 5.1ch

出演|柄本佑 石橋静河 染谷将太 足立智充 山本亜依 柴田貴哉 水間ロン OMSB Hi’Spec 渡辺真起子 萩原聖人
脚本・監督|三宅唱
原作|佐藤泰志(『きみの鳥はうたえる』河出書房新社 / クレイン刊)
音楽|Hi’Spec
企画・製作・プロデュース|菅原和博
プロデューサー|松井宏
撮影|四宮秀俊
照明|秋山恵二郎
録音|川井崇満
美術|井上心平
助監督|松尾崇
ラインプロデューサー|城内政芳
アソシエイトプロデューサー|寺尾修一
衣裳|石原徳子
メイク|石川紗織
小道具|平野藍子
キャスティング|神林理央子
スチール|鈴木淳哉、石川崇子
制作主任|小林大地
製作|函館シネマアイリス
制作|Pigdom
配給|コピアポア・フィルム、函館シネマアイリス
宣伝|岩井秀世、大橋咲歩

©HAKODATE CINEMA IRIS

永山桃

早稲田大学4年生。個人的に染谷将太さんの大ファンなので、『きみの鳥はうたえる』は最高でした。そして冒頭で、彼が人を殺せるんじゃないかと思わせるような感じだったことがとても印象的。
あとは猫が好きだけど、柴犬をかっています。ワンワン!