【東京フィルメックス2018日記】⑦(板井)


 

 東京フィルメックスのレポートをお届けいたします。

 第7回目は、11月22日(土)に上映された中江裕司『盆唄』、ブリランテ・メンドーサ『アルファ、殺しの権利』2作品を紹介します。

・中江裕司『盆唄』BON-UTA : A Song from Home

 日本 / 2018年 / 134分

 中江裕司『盆唄』は、東日本大震災以後、原子力発電所の事故のために帰宅困難区域となった福島県双葉町の人々3年間を追いかけたドキュメンタリーである。映画は、震災から4年が経過した2015年から始まる。双葉町には、毎年の夏祭りに披露され受け継がれてきた「盆唄」があった。しかし、帰宅困難区域となった現在、夏祭りの開催とともに盆唄の継承が危ぶまれていた。そんなとき、ハワイへと移民した日系人たちによって、福島の盆唄がマウイ島で100年以上も受け継がれ独自の発展を遂げているという話を聞く。双葉町の人々は、双葉の盆唄を披露し、継承するためにハワイへと向かうのだった。

 この映画は、プロデューサーを務めた写真家の岩根愛さんが双葉町の写真を撮影していたことがきっかけとなって製作されたという。途中、富山から移住してきた家族の話がアニメーションで挿入されるのだが、観客の想像力をかきたてるため、再現ドラマにはせず、アニメーションにしたという。双葉町の人々を撮影するということは、否応にも辛い状況が映ってしまうことになる。中江監督と岩根プロデューサーは、未来に向けていかにして撮るべきかということを考え、なるべく前向きに楽しくしている場面を中心として構成したという。そして、この映画で伝えたかったのは、「結局みんな移民なのでは?」ということであったという。

 映画内で披露される盆唄に自然と身体が踊り出すに違いない。本日は胃腸の調子が悪く、途中腹痛で10分程度抜けてしまったのが悔やまれる。

 中江裕司『盆唄』は、来年2019年2月15日(金)から公開される予定とのこと。

・ブリランテ・メンドーサ『アルファ、殺しの権利』Alpha, The Right to Kill

フィリピン/2018/100分

 フィリピンの映画監督であるブリランテ・メンドーサの最新作『アルファ、殺しの権利』は、マニラの貧困地域を舞台として、麻薬摘発を行う警察組織と、売人たちの姿を描いた作品である。主人公の警察官のエスピノは、薬の売人イライジャの協力を得ることで麻薬取引の大物である男の居場所を突き止める。SWAT隊を指揮しつつ組織のアジトへと突入した警察は、激しい銃撃戦の末、大量のギャングを殺害しながら組織を殲滅させることに成功する。しかし、エスピノとイライジャは、捜査官が来る前に現金や薬物が入ったカバンを盗み、現場をあとにするのだった…

 貧困や国家権力への問い、弱者が強者によって搾取される社会構造などが描かれているこの作品は、サンセバスチャン映画祭で審査員特別賞を受賞している。臭気が漂う雑然としたマニラの街の様子が、激しく生々しい手持ちキャメラの映像によって描き出されている。

 ただ、設定ミスなのかはわからないのだが、劇場内の音響が大きすぎてかなり気になってしまった。そのせいか、映画の最初のシーンのアフレコのアラがとても目立っていたような。

板井 仁
大学院で映画を研究しています。辛いものが好きですが、胃腸が弱いです。