「第32回水戸映画祭」シンポジウムレポート


2017年9月16日(土)から18日(月・祝)にかけて、水戸芸術館のACM劇場にて第32回水戸映画祭が開催された。昨年まで同時開催をされていた水戸短編映像祭は、今年は行わず、劇場公開された映画を中心に構成されてた内容だった。また、ゲストを招いたシンポジウム、ゲストトーク、音楽のライブ等イベントも行われた。
この映画祭を運営しているのは、NPO法人シネマパンチ。毎回ボランティアを募り、地元で暮らす人達を中心に運営している。

初日の16日のシンポジウムは、テーマを「水戸の映像文化と水戸映画祭のこれから」として様々な立場の方が水戸映画祭のこれからについて話した。

オープニング・シンポジウム
『水戸の映像文化と水戸映画祭のこれから』

シンポジウムに登壇したのは全部で6名。
磯崎寛也氏(一般社団法人いばらき社会起業家協議会理事 NPO法人シネマパンチ理事)を進行役に、
・高橋靖(水戸市長)
・遠山昇司(映画監督・プロデューサー)
・大寺眞輔(映画批評家 IndieTokyo主宰)
・樋口泰人(映画・音楽評論家 boid主宰)
・平島悠三(水戸映画祭ディレクター NPO法人シネマパンチ代表)
の5名がトークした。

冒頭は水戸で「ポイントホープ」というアートプロジェクトを行っている遠山氏の短編映画「冬の蝶」の上映から始まった。

上映後にまず高橋市長から「新市民会館」についての説明がなされた。水戸芸術館の隣に建設される予定の新市民会館は、東日本大震災で被災して以来使用を停止していた水戸市民会館の代わりとなる、新しい会館だ。北関東の多くの都市には2000人規模のホールがあるのだが、水戸にはまだなく、県内の他のホールは設備面で充実しているとは言えない状態であった。新市民会館は最大収容人数2000人、他にも500人規模の映画上映にはちょうど良いサイズのホールが備えらえた施設となる。
高橋市長は建設に意欲を示した。

新市民会館の話題が”どこで行うか”という映画祭の骨格を決める内容であったのに対して、他のゲストから話されたのは”何を行うか”という中身の話であった。平島氏から今回水戸短編映像祭中止に至った理由が「賞を受賞したから商業への道が開かれるわけではない」ことと「応募数の減少」だと話され、各人が自身の意見を述べた。

遠山氏は映画監督の立場から、映画祭に参加するメリットは「いかに次回作につなげるか」ということだと話した。大きくは2点あり、1つは交流会の実施。水戸映画祭でも実施されているが、特に映画プロデューサーとの交流が監督にとって重要であることを説いた。もう1点はカタログについて。いかにカタログを広く流通させるのかの大切さについて話した。自身が参加されたとある映画祭では、カタログが無料で書店に流通していたという体験談を交えた話をした。

ここで大寺氏は、映画祭を行う事で得られるメリット・デメリットを、出品する監督の立場と映画祭側からの立場で挙げた。監督としては、賞金が得られるというメリットがある一方で、賞金目当ての監督もおり、そこから先の展望が見えないのではないかという面がある。また映画祭側としては、人が集まることで街が賑わうことがメリットであり、デメリットとしては賞金額が小さいと与えてもあまりインパクトが無くという点が挙げられた。
また、大寺氏は、ヨーロッパにおける映画祭の目的について話した。ハリウッドの無いヨーロッパでは映画産業の賑わいを映画祭が担っているという。そのため映画祭のクオリティを担保する映画祭コーディネーターが大切だと話した。
もう1点映画祭の目的として挙げられたのが、日本ではまだ有名ではないが、ヨーロッパで評価されている監督を紹介するということだ。自身が主宰したジョアン・ペドロ・ロドリゲスのレトロスペクティブ開催時の体験談を交えながら話した。監督と直接やりとりし、配給、宣伝、監督の日本への招致等、大変な労力はあるものの、水戸の人々ではできるのではないかと話した。

樋口氏はインパクトのある映画祭の企画について話された。「映画を見ることも映画を作ることだ」という思いで作られた爆音映画祭、とことん「これは観たい」という強烈な個人の思いによって開催されている金沢映画祭、他にも映画の一部を上映し続きを上映するかどうかは観客の拍手の大きさによって決める映画祭等、紹介された。
また、始めは小さな音楽祭から始まり今は映画祭・音楽祭・IT関係の巨大展示も兼ねるSXSW(South by Southwest)を紹介し、水戸映画祭の今後へのヒントを与える内容であった。

最後のまとめとして市長は芸術文化によって「街にたくさん仕掛けがあるようにしたい」と話し、今後の芸術文化の発展を願った。

(本文)

髙橋壮太
イベント制作会社に勤務しながら、自主制作映画を細々と作っています。昨年開かれた第20回 水戸短編映像祭のコンペ部門で、拙作「あなたが響く」を選んでいただいたご縁でIndieTokyoに加入しました。