「第8回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」レビュー第14弾『ウィリーナンバー1』


『ウィリーナンバー1』の感想

 

主人公のウィリーは、50歳のおっさんだ。

しかも、ニートである。

そして重要なことに、

ウィリーは「はげ」かつ「でぶ」である。

 

父親と母親と、双子の弟ミシェル。

これが家族構成だ。

双子のミシェルはもちろんウィリーとそっくり。しかしながら父親と母親までウィリーそしてミシェルに似ている。

ここがまずもっての素敵ポイントである。

みんなそっくりでみんな太っている家族、これで映画の強度はいや増してしまう。

 

 

フランスの、たぶん超田舎だろう、父と母が鳥をサバいて内臓を引っ張り出している冒頭の描写から、その田舎度は伺える。

ウィリーはそんな田舎の実家に暮らし、日々落ち葉を掃除する仕事をしているブルーカラーワーカーである。落ち葉を掃除し、ミシェルと車の中で無駄話をする。このルーチンが彼の「幸せな」人生なのである。

 

 

その彼の人生が、劇的に変わってしまう。

双子の弟ミシェルの自殺によって。

 

 

納屋の梁で、首を吊ったミシェル。

ミシェルがなんで自殺したのか、ウィリーにはわからない。彼は幸せだったはずなのに、いったいなぜなのだ。

 

 

そして父親に言われたある言葉がキッカケとなって、彼は実家を出ることになる。「コドゥベック(実家から9キロ離れた町)に行き、アパートを借り、スクーターを買って、友達を作る!」これが彼の新たな夢なのである。

 

 

近親者の死、しかも己の分身でもある者の死、という重い出発点をもち、しかも父親のセリフから察するに、なんらかの発達障害的なものを主人公がもっている映画「ウィリー ナンバー1」は、しかしながら、どっこい、コメディ映画である。

憧れの町コドゥベックに行っても、一向にモテないは結構嫌な性格だわなウィリー、スーパーに勤めても同僚とケンカばかり、友達ができたと思ってもケンカやいじめばかり、重い出発点からの、ウダツの上がらない展開。そんな話が見事なコメディになってしまうのはなぜか?その答えを手っ取り早く3つのキーワードに集約してしまうのなら、それらは

「はげ」

「でぶ」そして

「はだか」である。

 

はげ、でぶ、はだか、

これらは一般的に、ネガティヴなパワーワードとして世界に君臨していることが多い。

しかしながらそれら3つをすべて味方につけて愛くるしさに変えることができるパワーを持つ男が、われわれの主人公ウィリーなのだ。

 

とにかく意味もなくはだかになるシーンはことごとく傑出している。

 

そんなフィジカルな愛おしさに加え、その肉体をどういったシチュエーションに置けば面白いのか、監督の演出におけるコメディのセンスとタイミングはバッチリだ。

 

それでいてときおり、弟の不在イコール弟の存在が作品内に揺り返ってきて、シンプルで美しく、かつ「なんでもない」情景とともに、我々の心を急に鷲掴みにしたりもする。

コメディのタイミングをわきまえつつ、そのうえでそのタイミングと表裏一体としての哀しみのタイミングを捉えることで、監督は作品に絶妙なバランスを与えている。

 

 

社会的なテーマや労働者階級の悲哀をコメディに錬金させるその手腕には、アキ・カウリスマキ監督にその親戚関係を見出してしまいそうになる。主人公が英語を勉強しているシーンは、もう「パラダイスの夕暮れ」のペロンパーを思い出してしまう。カウリスマキ監督がおそらくトリュフォー監督「夜霧の恋人たち」のレオーが英語を勉強してるところをペロンパーに引用しているなら、フランス人が発明した「面白い人が外国語喋ると面白い」セオリーを、フィンランドを経由して「ウィリー ナンバー1」が再びフランスに戻してきた感がある。ちょっと無理矢理なこと書いてしまいました。

 

 

そして最後に特筆したいのは音楽の使い方である。スクーターを買った!というシーンのケバいユーロビート、友達と車で聞くケバいユーロビート、ときおり流れる80年代テイストが効いたシンセビート、このダサさからの!ダサさ、から、の!

 

セルジュ・レジアーニ!!!!

 

もう一回声に出して書きたい、

 

セルジュ!

レジアーニー!!!

 

 

 

私が好きなフランスの歌手はジョルジュ・ブラッサンスとセルジュ・レジアーニ。

わたしの2代マエストロ。

 

俳優としても最高だけど歌手としても最高なレジアーニ。

あの曲をああいう風にフルで使う監督は最高にいい人だと思う。最高だ。最高なんだ。

愛なんだ。

 

私の自由…

 

 

「ウィリー ナンバー1」はオンライン、マイフレンチフィルムフェスティバルで見れます!19日まで、急いで★

 

 

【執筆者紹介】

 

 

 

アントーニオ本多

 1978年1月2日生まれ。2005年にプロデビュー。DDTプロレスリングを中心にそれなりに活躍。特に好きな映画監督はヴェルナー・ヘルツォーク。イタリアンポップスにやや詳しい。

 

 

 

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まだまだ期間中は、12本の長編映画と、11本の短編映画も無料配信されています!

また、2月2~4日にはアンスティチュ・フランセ東京にて、映画祭配信作品の上映も予定されていますよ。

【第8回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル】

開催期間 :2018年1月19日(金)~2月19日(月)

料金 :長編映画-有料(各配信サイトの規定により異なる)、短編映画(60分以下)-無料

配信サイト:青山シアター、アップリンク・クラウド、VIDEOMARKET、ビデックスJP、DIGITAL SCREEN

短編のみ :GYAO!、ぷれシネ

長編のみ :iTunes、Google Play、Microsoft Store、Amazon Instant Video、Pantaflix

※配信サイトにより配信作品や配信期間が異ります。

公式サイト www.myfrenchfilmfestival.com

アンスティチュ・フランセ東京

スクリーンで見よう!マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル

indieTokyoのメンバーによるレビューブログも続々と続きますよ!お楽しみに!