第2回 新文芸坐シネマテーク


新文芸坐シネマテークVol.2
ポルトガルの俊英 ミゲル・ゴメス

ペドロ・コスタは、ポルトガル映画について次のように書いたことがあります。
「オリヴェイラ、ローシャ、レイス、モンテイロ、この4人は誰もがたったひとつしかないピースであって、それぞれの後継者はいません。つまり、ポルトガル映画は「不思議な事件」の産物なのです。」

今回、新文芸坐シネマテークで紹介するミゲル・ゴメスもまた、間違いなくそうした「不思議な事件」の産物でしょう。誰もそれまで見たことがない、誰もその着想を理解できない、でも同時に、まさにこれこそ誰もが見たいと待ち望んでいたと強く確信させられる映画、それこそがミゲル・ゴメスの作品であり、オリヴェイラやローシャへと連なるポルトガル映画であり、「不思議な事件」の産物であり、今世界中で起こりつつある新しい世代の新しい映画であるのです。

ポルトガルには、ミゲル・ゴメスがいます。ペドロ・コスタがいます。ジョアン・ペドロ・ロドリゲスがいます。いや、ポルトガルだけではありません。フランスには前回シネマテークで上映したケシシュがいます。アラン・ギロディーがいます。『若き詩人』という美しい処女作を撮り上げたばかりのダミアン・マニヴェルもいます。アメリカにも、『リヴァイアサン』の二人がいます。いや、日本にだって…

彼らに共通するのは、いずれも資金的トラブルを抱え、映画が現在の世界で存在するための様々な困難や苦悩に直面しながらも、まさにそうした難問それ自体を作品の豊穣さへとそのまま結びつけるかのような、そのしたたかさと強さにあるように思います。だからこそ、彼らはこの現代社会の中で、奇跡のように美しい「不思議な事件」を幾つも起こすことができるのです。

新文芸座シネマテークは、こうした「不思議な事件」を紹介し、その傍らで共に闘う場所でありたいと考えています。彼らが闘い続ける限り、これからも美しい映画は作られ続けます。そして美しい映画がある限り、それを上映する映画館、そしてそれを見る私たち観客もまた必ず存在し続けるのです。

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『自分に見合った顔』
2004年/108年/カラー/ブルーレイ/日本語字幕付き
監督:ミゲル・ゴメス/脚本:ミゲル・ゴメス、マヌエル・モゾス、テルモ・シューロ/撮影:ルイ・ポサス
出演:ジョゼ・アイロザ/グラシンダ・ナヴェ、カルロト・コッタ
「30歳までは神から授かった顔、その後は自分に見合った顔になる」というアイディアをベースに、その人生に対するフェアさと軽いパロディの感覚を表現したミゲル・ゴメスの長編処女作。当時34才だったゴメス自身の個人的感慨を、グリム童話「白雪姫」をモチーフとした奇想天外なフィクションに接合し、『熱波』を予見する大胆な二部構成で描き出している。シリアスさと奇妙な賑やかさが共存した傑作として、海外ではジャック・リヴェットやゴダールとも比較されている。

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『私たちの好きな八月』
2008年/149分/カラー/35㎜/日本語字幕付き
監督:ミゲル・ゴメス/脚本:ミゲル・ゴメス、マリアナ・リカルド、テルモ・シェーロ/撮影:ルイ・ポサス
出演:ソニア・バンデイラ、ファビオ・オリヴェイラ、ジョアキン・カルヴァリョ
ゴメスはこの作品のシノプシスにこう書いている。「ポルトガル山間部、その八月は沢山の人々とイベントで賑わいを見せる。花火やカラオケやビールや子作り。もしその地に趣いた映画監督が祭りの陶酔に抵抗し映画作りを続けられたなら、それはこういう作品になるだろう。『私たちの好きな八月』は、父と娘、そして娘のいとこの感動的な物語。愛と音楽の物語」。ドキュメンタリーがいつの間にかメロドラマへと移行する、真夏の夢のようなあまりにも美しい作品。

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ミゲル・ゴメス
1972年ポルトガル、リスボン生まれ。リスボン映画演劇学校で学んだ後、96年から00年までポルトガルのメディアで映画批評を執筆。並行して短編映画を製作し、オーバーハウゼン映画祭、ベルフォール映画祭で受賞。ロカルノ映画祭、ロッテルダム映画祭、ブエノス・アイレス映画祭、ウィーン映画祭にも出品された。04年に初長篇作品『自分に値する顔』A Cara que Mereces を監督。08年には『私たちの好きな八月』を発表。カンヌ映画祭監督週間で上映され絶大な反響を引き起こす。三作目となる『熱波』はベルリン国際映画祭でアルフレッド・バウアー賞、国際批評家連盟賞をW受賞し、日本でも13年に公開された。

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新文芸坐シネマテークVol.2
ポルトガルの俊英 ミゲル・ゴメス

12/19(金)19:30~
『自分に見合った顔』(2004/108分/BD)+講義
(22:20終了予定)

12/26(金)19:00~
『私たちの好きな八月』(2008/149分/35mm)+講義
(22:30終了予定)

講師:大寺眞輔(映画批評家)
入場料金:一般1300円、前売・友の会1100円

※当日は整理番号順での入場(開場は上映開始15分前)
※整理番号付き前売券は11/22(土)より当館窓口にて販売