
イーサン・ホークがポール・シュレイダー監督の最新作”First Reformed”の演技で
ゴッサムインディペンデント映画祭の主演男優賞を獲得した。
他に主演男優賞として選出されていた作品は「ブラッククランズマン」アダム・ドライバー、
“Can You Ever Forgive Me?”リチャード・E・グラント、“Leave No Trace”ベン・フォスターや、
“Sorry to Bother You”ラキース・リー・“キース”・スタンフィールドなどだ。
また主演女優賞は「ヘレディタリー/ 継承」トニ・コレットが受賞した。
オーストラリア映画界隈はヴェネチア国際映画祭で審査員大賞を受賞した”The Nightingale“に続き朗報が多い。
舞台上でイーサン・ホークが「芸術の力」を提唱したスピーチが話題になっている。[*1]
私達は、今、政治的かつ精神的な指導力の欠けた時代のもとに生きています。
そうした時代には、とてつもない重荷が芸術に課されることがあります。
しかし私達は、今この部屋にいるあなた達や、どこかにいるはずのアーティスト集団は、
普段であれば閉じてしまうような心を開き、柔軟な発想を保つことができるでしょう。
限られたものの考え方をしてはいけない。アーティスト集団の一員として、共感や同情をする人として、
私達のやるべきことをしましょう。環境や教育、人種差別などがあまりに見過ごされています。
それは間違っており、看過できません。
真実を守る必要はない、その下に生きていくのです。真実がきっとあなたを守ってくれるでしょう。
私の母親はよく私に言いました。
現政権に警鐘を鳴らす彼の力強いスピーチは本映画祭の一つのハイライトであり、
アカデミー賞主演男優賞に向けてイーサン・ホーク自身を助けることになるだろう。
同賞の前夜に開催される2019年インディペンデントスピリット賞にも彼はノミネートされており、
今の時代にインディペンデント映画が占める役割はますます重要になっていると思われる。
First Reformedはイーサン・ホークのキャリアベスト作である、とIndieWireの記者はスピーチを受けてそう語っている。
GQ、New York TimesやThe Film Stageなどのイーサン・ホークのインタビュー[*2]をIndieTokyo黒岩幹子が翻訳した。合わせて読んでいただければ、近年の彼のキャリアの躍進が感じられるだろう。
こうしたニュースを受けて、VUTURE誌のオスカー賞予想ではゴッサムインディペンデント映画賞を以下のように位置づけた。[*3]
アイオワ、ニューハンプシャーなどの映画祭に並び、ゴッサムはアカデミー賞の前評をはかる上で欠かせ
ない。上記の映画祭はインディペンデント映画のみが出品可能となっており、同映画祭の批評家の意見は
とても厳しいからだ。しかしながら今年度のインディペンデント映画ファンの観衆は一致団結しているわ
けではない。驚きを持って2018年度の作品賞に迎えられたのは、クロエ・ツァオ”The Rider”だからだ。
ゴッサム賞を得た作品は4度アカデミー作品賞に選ばれたが、他の4度はノミネートさえされていない。
(中略)近年は「ゲット・アウト」「レディ・バード」や「ムーンライト」といった作品がゴッサムイン
ディペンデント映画祭で受賞をしており、翌年のアカデミー賞に向けて、ゴッサムが追い風となることが
ある。恐らく本年度の審査員は小規模の映画にも敬意を表したのだろう、さもなければ今季は全く
無視されてしまったかもしれない映画だからだ。賞レースの予想において常に心にとめておくことは、
「ゴッサムはゴッサムに帰す」ということだ。
近年のA24プロダクションの活躍はめざましく、各賞を総なめにすることがしばしば起こっている。そうした中で
インディペンデント映画とは何か問い詰めるのは、IndieTokyoの使命のように思われる。
*1 IndieWire
https://www.indiewire.com/2018/11/ethan-hawke-gotham-best-actor-speech-value-art-dark-times-1202023461/
*2 Indie Tokyo
http://indietokyo.com/?p=8915
*3 VULTURE
https://www.vulture.com/2018/11/oscars-2019-gotham-awards-results.html

伊藤ゆうと
イベ ント部門担当。平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)”藤沢
オデヲン座”で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の
勉強中。
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