
5月9日、ガーディアン誌上に公開された手紙で、俳優、映画製作者、アーティスト、ジャーナリストたちが、イギリスの映画館に向けてイスラエル政府が支援する映画祭をボイコットするよう訴えた。イスラエル大使館も参加するSERETロンドン・イスラエルTV映画祭をイギリスの多数の映画館が迎えることに対する抗議の手紙に、ケン・ローチやアキ・カウリスマキ、リアム・カニンガムをはじめとする36人が署名している。同映画祭は今年で7回目の開催となる。署名には、トロント国際映画祭などで受賞し、今回の映画祭の上映作品の一つでもある『In Between』監督のMaysaloun Hamoudの名前もある。監督はイスラエル在住のパレスチナ市民で、「『イスラエルには文化と宗教の多様性がある』というイメージづくりのために私の映画、あるいは私の名前を使われたくありません。」と述べ、彼女の作品の出品を取りやめた。
以下が、ガーディアン誌に掲載された手紙の全文である。
「ガザ地区において、多くの非武装で抵抗する市民たちがイスラエルの狙撃兵たちによって殺される一方で、今週、イスラエル大使館と世界シオニスト協会が共に支援するSERETロンドン・イスラエルTV・映画祭がロンドン、ブライトン、エディンバラの会場を占拠するだろう。それは映画の魅力を利用し、『文化と宗教のるつぼ』としてのイスラエルのイメージの促進に励むだろう。
イスラエルは、パレスチナ人の表現・報道の自由を否定している。4月6日、パレスチナ人カメラマンのYaser Murtajaがガザ地区の「祖国帰還大行進」1を撮影していた際にイスラエルの狙撃手によって射殺された。同じ日に、報道関係者であることを示すジャケットを着ていたにもかかわらず、6人のフォトジャーナリストがイスラエル軍の攻撃によって負傷した。その後、写真家のAhmed Abu Husseinが射殺された。このようなことは珍しい出来事ではない。昨年、イスラエル軍は139人のジャーナリストを襲撃し、33人を拘留した。イスラエル軍が施設を破壊したケースは27件に及ぶ。17のメディアの支部を閉鎖した。つまり、パレスチナ人のジャーナリストや映画製作者たちは民族的背景に基づく構造的な迫害の被害者なのである。
このような残虐な現実を、アート、メディア、文化的なものによって覆い隠し、一見好ましいものに見せかけようとしているのである。わたしたち映画製作者、ジャーナリスト、そしてアーティストはイギリスの映画界、メディア、そして文化的な団体が、基本的な倫理規範を守るよう求める。構造的かつ大規模な人権に対する暴力を犯す政権が支持する国家的な式典としての映画祭によりどころを提供するのを拒むべきである。」
Dr Bashir Abu Manneh Academic
Candace Allen Writer, director
Leah Borromeo Journalist and film-maker
Prof Haim Bresheeth Documentary film-maker
Victoria Brittain Author and journalist
Liam Cunningham Actor
Dror Dayan Documentary film-maker
Helen de Witt Film programmer
Tam Dean Burn Actor
Gareth Evans Curator, producer
Yasmin Fedda Film director
Simon Fisher Turner Composer
Maysaloun Hamoud Film director
Ashley Inglis Screenwriter
Aki Kaurismäki Film director
Peter Kennard Artist
Helena Kennedy QC Barrister, broadcaster
Michel Khleifi Film director
Peter Kosminsky Writer, director, producer
Paul Laverty Screenwriter
Mike Leigh Writer, director
Ken Loach Film director
Hettie Macdonald Film and television director
Miriam Margolyes Actor
Laura Mulvey Professor of film
Rebecca O’Brien Film producer
Andrew O’Hagan Writer
Maxine Peake Actor
Omar Qattan Film producer
William Raban Professor of film
David Roger Production designer
Juliet Stevenson Actor
Saeed Taji Farouky Documentary film-maker
Harriet Walter Actor
Roger Waters Musician
Susan Wooldridge Actor and writer
1「祖国帰還大行進」・・・IRIB通信によると、パレスチナ保健省は5日土曜未明、「パレスチナ・ガザ地区にて6回連続での金曜日開催となった、4日金曜の祖国帰還をアピールする大行進で、1143人のパレスチナ人が負傷し、そのうち83人はシオニスト政権軍の銃撃を受けた」と表明している。また、救命部隊は、数百人のパレスチナ人が催涙ガスの影響で呼吸困難を起こしていると発表。祖国帰還の権利を訴える平和的な大行進は、今年の3月30日金曜の「土地の日」にちなみ、ガザ地区で開始され、現在も続いている。この抗議行進で、これまでにパレスチナ人50名がシオニスト政権軍の銃撃により殉教、ほかおよそ8000人が負傷している。
Is a film festival sponsored by the Israeli government an incident of ‘art-washing?’
http://www.seret-international.org/category/london-2018/

澤島さくら
京都の田舎で生まれ育ち、東京外大でヒンディー語や政治などを学んでいます。なぜヒンディー語にしたのか、日々自分に問い続けています。あらゆる猫と、スパイスの効いたチャイ、旅行、Youtubeなどが好きです。他にもいろいろ好きなものあります。
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