
今月中旬頃、フランスの保健大臣(日本では厚生大臣に当たる)であるAgnès Buzynは以下のような物議を醸す発言をした。それは映画における喫煙表象を禁止すべきだという内容であり、「私はフランス映画における喫煙の重要性を理解していない。」「(それは)社会におけるタバコのイメージを堕落させており、」「私はこれらの事態に関して断固たる行動を求める」とまで言っている。
2020年にさらなるタバコの値上げを控えたフランスにとって、保健大臣によってこのような発言が実際になされ、そして物議を醸したという土壌は十分に理解しうるものだろう。
そして実際映画の側としても事態は準備されていたといってよいだろう。
例えばLa Ligue contre le cancer(対ガン同盟)による近年の調査によると「フランス映画の新作の70%において少なくとも1回は喫煙する人物が登場し、推進しているとまでは言えないとしても、多かれ少なかれ子供や青年たちの喫煙の矮小化に寄与して」おり、映画は「タバコ消費に関してミスリードな宣伝を行っている」のだという。
また世界保健機関(WHO)は昨年、喫煙を扱った映画に対して成人規制を要求した。それによると「2014年に配給されたハリウッド映画の44%が喫煙する人物を含んでおり、映画こそがタバコ推進における”last frontier”である」とし、「喫煙する青年の37%がそのような映画を見ることで喫煙の習慣を身につけてきた」のだという。
もちろんこのような潮流は以上のように今に始まったことではなく、フランス映画における喫煙表象の排斥運動に関しても今回が初めてのことではない。
例えば2015年において、フランスのアルコールとタバコに関する政策法であるエヴァン法(Loi Évin)がフランス映画にも及びうるであろうことが取り沙汰され、第七芸術(映画)におけるタバコ使用の禁止という考えが議会での議論の中で取り上げられていた。
また同様に2009年においてはパリ交通営団の広告代理店であるMétrobusが喫煙を扱った映画を彼らの宣伝手段として用いることを拒否すると発表し、ジャック・タチのレトロスペクティブにおけるポスターの中で、『ぼくの伯父さん』の有名なイメージであるパイプが黄色い風車へと差し替えられた。
そして再び、そのような喫煙表象の禁止を推進する動きが浮上したわけだが、Le Figaroによれば「多くのものがこの”probable”な禁止を理解できない」と思っており、以下のような人々の証言を引いている。
「私が喫煙に関して絶対に賛成できないのと同様に、私たちが馬鹿馬鹿しさを通り越しているとも思う。しかし一体、彼らはいつになったら大した考えもない法制化をやめるのだろうか?世界は確かに完全ではないが、映画における喫煙の排斥は明らかにグロテスクである。」
「私は喫煙には反対だが、もしこのような事態を受け入れたら、次はアルコールを禁止し、セックスを禁止し、暴力を禁止し、、、。喫煙に関して戦わなくてはならないのは映画の中でのことではなく、あくまで実生活においてである。」
参考URL

嵐大樹
World News担当。東京大学文学部言語文化学科フランス文学専修3年。好きな映画はロメール、ユスターシュ、最近だと濱口竜介など。いつも眠そう、やる気がなさそうとよく言われます。
コメントを残す