

ポーランド人の映画監督アンジェイ・ズラウスキーは1981年公開のホラー映画、『ポゼッション』で世界的に知られるようになった映画監督で、前作『女写真家ソフィー』(2000)から15年、長い沈黙を破って本作が発表された。
『コスモス』は、ヴィトルド・ゴンブローヴィッチの同名の不条理主義をテーマにした小説を原作とし、暗い風刺劇とも評されている。昨年のロカルノ国際映画祭でズラウスキーが最優秀監督賞を受賞したと同時に、『コスモス』が世界初披露された。また、昨年のトロント国際映画祭の公式セレクションにも選ばれている。『コスモス』のあらすじは以下の通りである。
法学部の試験に落ちたヴィルド(ジョナサン・ジュネ)とその連れのフックス(ヨハン・リベロ)は、体が麻痺した女主人が経営するゲストハウスに宿泊することとなる。ヴィルドは女主人の娘のリーナに夢中になるも、彼女は既に他の人と結婚していた。家の近くの木にスズメが吊るされていたのを発見してからというもの、ヴィルドの現実は極度の緊張や芝居がかったしぐさ、不吉な予感、超現実的主義の理論に支配されていく。
Kino LorberのCEOリチャード・ローバーは、「アンジェイ・ズラウスキーの15年ぶりの作品をアメリカの観客に見せられることをとても光栄に思います。彼の独創性、鋭い才能、監督としての情熱はすべて、映画のスペクタクルに集約されています。長く待った価値がありました」と公的に発言している。Kino Lorberは、本作がビデオ・オン・デマンドなどで配信される前に劇場公開することを予定している。
と、ここまで書いて彼の訃報を知った。なんと悲しいタイムリーな出来事であろう。2016年2月17日、75歳にしてがんで亡くなったという。「15年ぶりの新作」として売り出すはずの『コスモス』は、彼の「遺作」として売り出すこととなってしまったのだ。
アメリカで映画が成功し、日本での公開もそう遠くないと確信していたが、作品の話題性よりも「追悼ズラウスキー」として日本で公開されるのかもしれないと思うと気が重くなる。
http://www.indiewire.com/article/kino-lorber-acquires-award-winning-polish-drama-cosmos-20160216
http://variety.com/2016/film/news/andrzej-zulawski-dead-dies-polish-director-1201708470/

原山果歩 World News部門担当。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程所属。ウディ・アレンとウィキッドとチーズと緑色。マイブームはガーリー映画。
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