[706]イ・チャンドン新作”Burning”ベン役のスティーブ・ユアンがアジア系アメリカ人について語る。


今年5月に開かれたカンヌ映画祭でイ・チャンドンの新作”Burning”が公開され、高い評価を受けた。
原作との出会い、村上春樹の小説を題材に選んだ理由、カンヌ映画祭にて高く評価された演出力について、
監督のインタビュー書き起こしを交え、以前のWorldNewsで詳しく紹介されている。

9月末日に発表された韓国の映画振興委員会によるコメント*1によると、
ユン・ジョンビン監督『The Spy Gone North』、チャン・ジュナン監督『1987、ある闘いの真実』、
ファン・ドンヒョク監督『天命の城』などの作品から本作がアカデミー外国語映画賞の出品作に選定された。
「Playlist誌*2により”Burning”はアカデミー賞の候補の一つであると予想されたことが理由の一つ」と同委員会は明かした。

イ・チャンドン監督の作品がアカデミー賞の外国語映画賞に選ばれたのは、『シークレット・サンシャイン』(2007)、『オアシス』(2002)に続き本作で3度目となる。
同作でメインキャラクターのベンを演じる俳優のスティーヴン・ユァンはIndieWireのインタビューに応えた。
来年に控えるアカデミー賞でオスカー像を獲得することを望んでいるというものの、今後も偉大な韓国人の映画監督と共演することを目標にしているという。
20代の初めに観た『ポエトリーアグネスの詩』については以下のように語った。*3

 まるで祖母がスクリーンに出ているようだった。
 今まで観てきたような映画では生まれなかった深いつながりに気付かされて、心から共感していた。

劇中での役を通して自身のナショナリティについて考えさせられたという。

 映画で見られるような僕の韓国人らしさは、実際の自分と結びついているよ。
 確か映画の真ん中ぐらいに下手な韓国語があるんだけど、役のために実際より下手に見せてしまったんだ。
 ベンは映画の中で誰よりも現代人じゃないかと思う。この瞬間を生きているというかな。
 彼らを見ていると、誰も彼と同じ”今”を生きていないんじゃないかって気がする。

ベンという役はアジア系アメリカ人として活躍するスティーブ・ユアンにとって、
2つの国籍が同時に絡み合った人物でありながらも、その文脈だけでは語りきれないという。

 もし自分はアメリカ人だと思っていても、道を歩いている時に彼らに気付かされるだろう、自分はアメリカ人じゃないって。
 一方で同じように、韓国に行けばアジア系アメリカ人の自分のことを、彼らは同じ韓国人だと思わない。そして気付かされるのは、
 母国のない、ちっぽけな一人の男だということなんだ。それが真実だよ。君が孤独を感じているかもしれない時には、皆も同じだってこと。

来年度のアカデミー賞に向けて、韓国映画初となる外国語映画賞オスカー獲得の噂が囁かれている。スティーブ・ユアンが主演男優賞を獲得することになれば、同時に偉業を達成することとなる。
IndieWireでは高評価なレビューが公開された。『”Buring”を見るべき5つの理由』と題して公開された記事中では、前述のスティーブ・ユアンの知名度に加え、映画で題材となった”怒り”は多くの共感を得るだろうと評している。*4
一方で、パク・チャヌク、ポン・ジュノ、ホン・サンスなどに比べればアメリカのシネフィルには知名度の低いことが懸念点として挙げられている。

明日からはアメリカ東海岸で本作の劇場公開が始まる。IndieWire誌によると「ある衝撃的なシーンは”歴史に名を残す”」とまで評されている。
148分という長編であり、とらえがたく、忍耐を求められる彼の作品が、どう受け入れられるのだろうか。

 

 

伊藤ゆうと

イベ ント部門担当。平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)藤沢オデヲン座で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の勉強中。


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