ジョン・デイビッド・ワシントン扮する黒人警官ロン・ストールウォースが白人刑事とコンビを組み70年代のアメリカのクー・クラックス・クランの襲撃を防ぐスパイク・リー監督の新作『ブラッククランズマン』は5月のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、8月10日のリリース以降すでに2600万ドルを売り上げるなど今年特に注目を集めている作品である。その映画における警官の描かれ方について『ソーリー・トゥ・ボザー・ユー』の監督ブーツ・ライリーがツイッター上で一投した批判が話題となっている。


 ライリーによると、「(公民権運動から)40年もの間警官についてのドラマや映画を作ったのにまだ私たちには新しいものが必要なのか?この映画のテーマは人種主義についてであり、この映画のなかで警官は実際ヒーローとして描かれている。果たしてそれ(警官を描くこと)は実際人種差別問題にに対して有効な手段なのか?」ライリーはこれを修辞学的な質問であると断りながら答えは「NO」であると言った。彼は警官は人種差別問題の領域ではヒーローにはなり得ないという。
 ライリーはのちにツイートを消去した。なぜツイートを削除したのかというフォローワーの質問に対して彼は「しばらくボックスオフィスではよくやってほしいから」と答えている。
 同じ週、ライリーは実際存在した黒人警官ストールウォースを「悪者」と形容し批判を重ねた。「ストールウォースが3年間潜伏したのは黒人過激組織で、映画で描かれているようなのとは違う。これはFBIの資料に残っていて今でも確認できる事実だ。そして彼が実際やったことは、ほとんど暴力的な行動をしない組織を阻害したことだけである。反して白人至上主義の組織にも白人の警官が潜伏したが、それは組織の行動を把握して阻害するための潜伏ではなかった。彼らを利用して黒人過激組織を脅したり物理的に攻撃したりするために行われたものだった。白人至上主義組織を妨害する行動などはそもそも無かった。」
 ライリー本作を「巨匠の作品」と称し、さらにはスパイク・リーがそもそも自身が映画学校に行く理由になったとして讃えつつ付け加えた。「スパイクが黒人警官を人種差別のヒーローにするためにでっち上げられたストーリーを書いたことには失望した。控えめに言ってね。」

それについてリーがイギリスの”The Time”のインタビューで返答した。
 「私の初期の作品を見て欲しい。警察に対して非常に批判的なのがわかるだろう。しかしながら私は全ての警官が腐敗しているとは思わない。全ての警官が有色人種を嫌っているわけではないんだ。残念ながら、私たちには警察が必要だ。法を遵守しない警官もたくさんいる。警官は法を犯してきた。」
 1992年の『マルコムX』にて同じような批判を経験したからだろうか、リーはこの批判を冷静にこなしているように思える。最後に彼は加える。「一つ言わせてくださいよ。「黒人」だって完璧に統一された集団では無いんだ。一度黒人にこんなことを言われたことがある。『スパイク・リーみたいなブルジョワジーがなんでマルコムXをやれるんだ?』ってね。」

新作を公開するたびに論争を巻き起こすことで有名なスパイク・リーだが今回も例外ではなかった。
スパイク・リー監督の“BlacKkKlansman” とブーツ・ライリー監督の”Sorry to Brother You”両作は現在アメリカで劇場公開中。

[参考] ・https://www.hollywoodreporter.com/news/spike-lee-responds-boots-rileys-blackkklansman-criticism-1137276
・https://www.thetimes.co.uk/article/spike-lee-trump-is-a-racist-i-dont-care-if-you-wear-a-hood-or-suit-thats-who-you-are-q7fdf6w0l
・https://www.indiewire.com/2018/08/spike-lee-responds-boots-riley-criticism-blackkklansmen-1201997463/
・https://www.indiewire.com/2018/08/boots-riley-blackkklansman-spike-lee-cops-racism-1201993595/
・https://www.indiewire.com/2018/08/boots-riley-blackkklansman-spike-lee-criticism-1201996032/
・https://pitchfork.com/news/spike-lee-discusses-boots-rileys-critique-of-blackkklansman/

(本文)

奥村耕平
WorldNews部門。旅してます。


1 Comment
  1. 70年代のアメリカの人種問題を描いた面が面白かったが、厳しく見ると映画として絶賛ものだとは感じなかった。上に描いてるようにヒーローもので善悪と分かれている。最後が問題無事解決でみなさんハッピー、というアメリカ特有のコマーシャル映画という感じであった。

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