[674]カナダにおける女性の映画音楽作曲家たちの現状


Screen Composers Guild of Canada(SCGC)の新たな研究によって、カナダで女性作曲家として働くことの暗い現実が明らかとなっている。
2016年において、映画音楽作曲家の15パーセントが女性であったが、映画音楽の作曲の収入に関して、男性は女性の8倍であった。過去10年の間、女性と男性を比べると、女性が受け取る印税の割合は、着実に減少していた。
トロントを拠点としてる作曲家のジャナル・ベックソールドは、SCGCの女性作曲家の諮問協議会の議長であるが、男性優位の研究結果について以下のように語る。

「数字は芳しくないと予想しましたが、予想以上にひどい結果であるとは思いませんでした。給与の数字は自分にも降りかかってきます。」

ベックソールドは、問題の一部とはどのように注目を集めている女性作曲家が仕事の雇用に影響を与えているのかということであると述べる。

「トップレベルでのとても限られた女性の模範となる人物たちを踏まえて、プロデューサー、映画製作者、雇用に関わる人たちは、誰が作曲家として適任かを考えますが、そこには女性に対する無意識の差別が存在します。」

産業におけるジェンダーの不均衡は、給与の差異や差別を剥き出しするだけでなく、様々な形で現実を突きつける。レポートによれば、調査対象となった61パーセントの女性が、ジェンダーに関連する差別に直面していた。

ベックソールドは、人脈作りのイベントでセクハラを受けていると話す。そのイベントは、映画製作者とプロデューサーと会うための重要な場である。そして、ベックソールドが思ったこととは、男性の映画製作者たちが仕事の昼食会はデートであるとしか考えていないということであった。ベックソールドは、女性がアクションやファンタジー映画のスコアから敬遠されていると聞いた。「男性がより適任である。なぜなら、『男性』のジャンルであるから」と。

トロントの作曲家、歌手、作詞家であるローラ・バレットは、明らかな差別に直面しているとは感じていないと述べる。しかし、バレットは、ジェンダーの格差の影響を見てきた。2014年から2015年に、カナダ・フィルム・センターで、Slaight Music Residencyに参加した際に、バレットには多くの指導者や講師がいたが、女性はひとりだけであった。その女性とは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の音楽を作曲したレスリー・バーバーであった。バーバーもまたカナダ出身の作曲家である。

「産業において女性はかなり過小評価をされていますが、それは必ずしも女性がチャンスを失っているということを知ることではありません。選択肢に相当する、多くの監督の頭の中に自分たちが存在しないのです。自分たちが存在することを知らないのです。不運にも、映画音楽の作曲分野がいまだにボーイズクラブであるというのが正確な見識です。」

Center for Study of Women in Television & Filmの年間レポート(The Celluloid Ceiling)はハリウッドにおける女性の雇用状況を追っているが、それによれば、2017年に興行収益の高かった250作品の映画の内、女性によって音楽が作曲されたのは3パーセントのみであった。アカデミー賞の82年間の歴史において、女性が作曲賞にノミネートされたのはたったの8回のみであり、2人の女性が作曲賞を受賞した。1996年の映画『Emma エマ』の音楽を作曲したレイチェル・ポートマンと、1997年の映画『フル・モンティ』の音楽を作曲したアン・ダッドリーである。

Alliance for Woman Film Composers(AWFC)は、ボーイズクラブに参加するというよりは独自のクラブを創り上げている(詳しくは過去の拙文を参照)。ロサンゼルスを拠点とする非営利団体は、女性作曲家の名簿を通して女性を擁護する。そして、人脈形成のイベントを開催し、ハリウッドで働く女性作曲家のスコアを顕在化させている。

ベックソールドは、カナダで同様の動きを創り上げたいと考えている。プロデューサーと監督が女性作曲家と繋がることができるイベント、著名な作曲家が新たに現れた作曲家が手掛けた映画や音楽を評価できるワークショップを計画している。

一方で、女性に対して不利に選定している産業において、女性たちは、行動を起こすことを模索している。

バレットは、トロントを拠点としているサラ・グッドマン監督の2014年の長編映画Porch Storiesで、ホセ・コントレラスと共に主演をし、作曲を手掛けた。映画の本質に関わる雰囲気をリフによる音楽が彩る。そのスコアは、アコースティックギターとカリンバによるバレットとコントレラスの即興演奏で奏でられる。

バレットは、ピーター・リンチ監督の2018年の映画Birdlandにも取り組んだ。再びコントレラスと一緒に仕事をし、バレットは、「アンビエント・ループとネオ・ノワール・ジャズの間奏曲と共に、方向感覚を失わせるようなシンセスケープ」の音楽を書いた。

もともとはトロント出身で、今はロサンゼルスを拠点としているアガサ・カスパーもまた活躍し始めた作曲家である。最近、カスパーは、トロントのマーク・ラソ監督の『さよなら、コダクローム』の音楽を書いた。この作品には、ジェイソン・サダイキス、エリザベス・オルセン、エド・ハリスが出演している。2017年にトロント国際映画祭でプレミア上映され、Netflixが権利を獲得している(日本でもNetflixで配信中で視聴可能)。コダクロームの最後の現像所に向かうというロードムービーに合わせるために、カスパーによるインディー・ロックのスコアは、アナログ設備の古いスタジオでレコーディングされた。

カスパーは、2014年にロサンゼルスに移り、Alliance for Women Film Composersに加わってから、自分の仕事がサポートされていると感じ、自分のプロジェクトの活動に女性を雇おうと思うようになった。

「昨年の#Me tooの運動で、ジェンダーの表明やハラスメントのいかなる形であっても、多くの機関や組合が女性が直面している状況に意識を向けるようになっています。政治的なエネルギーは、そのことに火を点けます。個人的な視点から、多くの変化を見ています。」

参考URL:

https://nowtoronto.com/music/features/the-celluloid-ceiling/

https://www.laurieralumni.ca/s/1681/15/social.aspx?sid=1681&gid=2&pgid=2574&cid=7317&ecid=7317&crid=0&calpgid=593&calcid=2474

http://screencomposers.ca/gender-advocacy/

http://screencomposers.ca/wp-content/uploads/2018/06/SCGC-Gender-Study-20180621final.pdf

https://womenintvfilm.sdsu.edu/wp-content/uploads/2018/01/2017_Celluloid_Ceiling_Report.pdf

http://www.theawfc.com/

http://www.marcandomusic.com/

宍戸明彦
World News部門担当。IndieKyoto暫定支部長。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程(前期課程)。現在、京都から映画を広げるべく、IndieKyoto暫定支部長として活動中。日々、映画音楽を聴きつつ、作品へ思いを寄せる。


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