[662]映画批評とジェンダー


 性別の違いが収入の格差を生み出し、さらには役職の割り当て、職業の選択にさえにも影響するというジェンダー問題は、2018年において恐らく先進国ならばどの国でも繰り返し議論されているテーマだろう。それは一般の仕事だけでなく「映画批評家」という職業でもその隔たりは例外ではない。#Metoo運動で「ジェンダー」に揺れる映画業界について、興味深い研究結果がThumbs Down 2018から発表された。

 研究はサンディエゴ大学のCenter for the Study of Women in Television and Filmの支援で、Dr.Martha M. Lauzenによって牽引され、2018年の春の間に341人の批評家による4,111の批評を調査した。出版物、テレビ放送からRotten Tomatoesなどを含むオンラインの媒体など多様なメディアで発表された批評がその対象となっている。

 

 

 

 研究は映画批評家の人数の割合が、メディアの形式を問わずおよそ2:1の比率で男性が女性を圧倒している現状を示した。詳しい数字は男性批評家が71%で女性批評家は29%となっている。さらに興味深いことに、女性の批評家は女性が主人公/監督の作品について述べるとき、より監督の名前を述べる傾向にあり(89%女性批評家は女性監督の名前を批評中に入れるが、男性批評家の場合はそれが81%にとどまる)、 さらにその監督の技術や作品、そして視点についてより肯定的な意見をする傾向があることがわかった。そして彼女たちはそもそも女性が主人公/監督の作品そのものに対してより肯定的な評価をつける傾向があるそうだ。却って、男性の批評家は男性が主人公/監督の作品をより高く評価する傾向があるということも明らかになった。

 

参考

・女性が主人公の作品に対して、女性批評家の評価平均74%,男性批評家の批評62%

・男性が主人公の作品に対して、女性批評家の評価平均73%,男性批評家の批評70%

 これによって懸念すべき点は、女性の批評家が少ないという現状が女性が監督/主人公の映画が、男性が監督/主人公の映画ほど注目を得ることが出来ない状況を作り出しているということである。すなわちこの男女アンバランスな状況が本来なら評価されるべき人たちが「発見」されるのが難しくなる状況を作り出している。

 Lauzen氏は、男性映画監督たちは男性批評家たちのこのような傾向を「享受してきた」と指摘する。すなわち男性が男性中心の作品を評価し、男性の映画監督を実際の彼自身より大きく、時には神話のように語ってきたという。

 そして多様性という観点から言えば、映画業界には人種の多様性にも課題を抱えている。

参考

 ・男性批評家の82%は白人で、9%がマイノリティー,9%が人種、国籍不明

 ・女性批評家の83%は白人で、14%がマイノリティー、3%が人種・国籍不明

 映画業界が積極的に女性やマイノリティーを起用するにつれて、映画を批評する側にも多様性が広がっていくのだろうか。

 

 

[参考]

https://womenintvfilm.sdsu.edu/wp-content/uploads/

2018/07/2018_Thumbs_Down_Report.pdf

https://womenintvfilm.sdsu.edu/research/

https://www.fastcompany.com/90203678/study-male-film-critics-outnumber-women-two-to-one

https://www.nytimes.com/2018/07/17/movies/male-critics-are-harsher-than-women-on-female-led-films-study-says.html

https://www.indiewire.com/2018/07/female-film-critics-minority-new-study-1201984259/

奥村耕平
WorldNews部門。旅してます。


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