ハリウッド芸能ニュースサイトのデッドラインに、『君の名前で僕を呼んで』の脚本を手がけ、89歳の史上最高齢でアカデミー脚色賞受賞を果たしたジェームズ・アイヴォリーの次回作についての記事が掲載された。( https://deadline.com/2018/05/james-ivory-alexander-payne-ruth-prawer-jhabvala-the-judges-will-new-yorker-fox-searchlight-1202397714/ )

 

『君の名前で僕を呼んで』の熱も冷めやらぬ中、アイヴォリーは早くもすでに次の作品に着手しているようだ。次回作のタイトルは『The Judge’s Will(原題)』。アレクサンダー・ペインが監督を務める。原作は2013年にニューヨーカー紙上に掲載された同名小説で、作者はルース・プラワー・ジャブヴァーラ。ご存知の方もおられるかもしれないが、実は彼女は過去にアイヴォリーが監督を務めた23もの作品の脚本を担当しており、『眺めのいい部屋』(1985)『ハワーズ・エンド』(1992) 『日の名残り』(1993)などの大ヒット作の脚本をも手がけ、二度アカデミー脚色賞を手にしている。惜しまれつつも2013年に亡くなったため、『The Judge’s Will(原題)』が遺作となった。プロデューサーのイスマエル・マーシャントとともに多くの作品を世に送り出してきた二人がタッグを組むのは2009年の『最終目的地』以来。往年の名コンビ復活の作品ということになる。

 

小説では、デリーのある判事が、家族に自分が死んだ後も彼の若い愛人の面倒を見るようにという遺言とともに病死したことから、残された家族に波紋が生じる様が判事の妻を中心に描かれる。

アレクサンダー・ペイン監督のアイディアで、物語の舞台はインドからシカゴに移されることになった。アイヴォリーはジャブヴァーラもこの提案をきっと気に入るだろうと考えた。

「裕福な男が愛人をもち、自分が死んだ後も彼女の面倒を見ることを望むというのは、非常に普遍的な設定です。」アイヴォリーはデッドラインの記者にこう語った。「(この作品を観れば)彼女の影響を感じるでしょう。ジャブヴァーラが人間や人間関係というものをどう捉えていたか。たとえば、初めて会ったときには彼女の気に入らなかったけれど、時間が経つにつれて彼女にとても好かれるようになった人々というのがいました。彼女は自分がかつてその人たちのことを嫌っていたことに全くこだわりませんでした。愛人の面倒を見なくてはならない家族が、愛人のことを心から気にかけるようになる、というのはまさに彼女らしいものの見方ですよ。愛人に対する家族の憎しみがだんだん和らいでいき、徐々に彼女を受け入れていく、というのは本当にジャブヴァーラらしい展開ですよね。」

アイヴォリーはヨーロッパでバカンスを過ごした後、年末までには原稿を提出する予定。

その後、アイヴォリーの次回作に関するもう一つのアイディアについてFilm Comment誌、IndieWire誌に新たな記事が公開された。( https://www.filmcomment.com/blog/news-james-ivory-alexander-payne-werner-herzog/ )( http://www.indiewire.com/2018/06/james-ivory-daniel-day-lewis-coral-glynn-retirement-1201976044/ )

 

彼はフィルム・コメント誌に以下のように語った。「ピーター・キャメロンの新作小説『Coral Glynn』を脚色することを考えています。私が監督をしたいのです。1950年代のイギリスを舞台に。」「この物語には切れ者の探偵が登場するのですが、この役にはダニエル・デイ=ルイスが最もふさわしいと考えています。他にもヘレナ・ボナム=カーターやジュリアン・サンズ、ルパート・グレイヴスなど、現在50代の彼らにぴったりの役もあります。」

「ダニエルは以前にも引退しましたが、リンカーン大統領を演じるために戻ってきました。今回もこの探偵を演じたくなるかもしれません。そして、古い友人の映画に協力する気になってくれるかもしれません。」

 

ダニエル・デイ=ルイスは現在日本でも公開中のポール・トーマス・アンダーソンの『ファントム・スレッド』が最後の出演作になると発表している。デイ=ルイスはこれまでに『マイ・レフト・フット』(1989)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)、『リンカーン』(2012)でアカデミー主演男優賞を三回受賞している唯一の俳優である。アイヴォリー監督作品では、『眺めのいい部屋』(1985)に出演している。

 

 

『君の名前で僕を呼んで』、『ファントム・スレッド』ともに現在公開中。また、ジェームズ・アイヴォリー監督の名作『モーリス』(1987)も製作30周年を記念して4Kデジタルリマスター版でのリバイバル上映が決定している。

往年の名コンビの復活、そして名優ダニエル・デイ=ルイスのカムバックの可能性に、期待が高まる。

 

 

 

澤島さくら

京都の田舎で生まれ育ち、東京外大でヒンディー語や政治などを学んでいます。なぜヒンディー語にしたのか、日々自分に問い続けています。あらゆる猫と、スパイスの効いたチャイ、旅行、Youtubeなどが好きです。他にもいろいろ好きなものあります。


コメントを残す