[649] デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督新作、 『アンダー・ザ・シルバー・レイク(原題)』


『アメリカン・スリープオーバー』、『イット・フォローズ』を監督したデヴィッド・ロバート・ミッチェルの新作、 『アンダー・ザ・シルバー・レイク(原題)』 。ミッチェル監督初のミステリーであり、配給会社にはA24、主演にはアンドリュー・ガーフィールドを迎えた期待の作品である。

今作の舞台はロサンジェルス。そこに住むサム( アンドリュー・ガーフィールド) がある日、ビルのプールで泳ぐ美しくミステリアスな女性(ライリー・キーオ)に出会うところから物語は始まる。彼女の出現により、サムの人生は一変したように思えたが、彼女は翌朝急に失踪してしまう。ロサンジェルスの街中を探し回るサムが、そこで様々な陰謀やスキャンダルに巻き込まれる様子が描かれる。本作は今月22日にニューヨークとカルフォルニアで、その翌週には全米で公開されることが決まっている。

まず、この物語がつくられたきっかけとして妻とのある些細な会話があったと監督は話す。

「ある日、ハリウッドの丘の上にある大きな家について妻と想像しあっていたんだ。その家には一体どのような人物が住んでいて、そこで起こる奇妙なことはどのようなことなのかなどについてだ。そうして妻と話している内に、このミステリーのアイディアがくっきりと頭の中に浮かんできたんだ。そこからは約1日で脚本を書き終えた。大量のコーヒーを飲みながらね。完全に書くのに夢中で、妻に少しクレイジーになっている、と言われたくらいだった。でもとにかく書く手を止めることができなかった。」

『アンダー・ザ・シルバー・レイク』の制作が始まった後も、その完成までには以前経験したことの無いような様々な困難があったと、ミッチェル監督は話す。その中でも、ミステリーの仕掛けの組み合わせ方はこの作品を制作する上で最も重大な課題だったという。

「本当にすることが沢山あって骨が折れたよ。最初から最後までロジックを全て計画しなくてはいけないんだ。それも異なる課に所属しているたくさんの人々とだ。過去作より予算は多かったけれど、スムーズに物事を進めるにはまだ足りなかった。ディテールの全てに気を配る必要があったからだ。サムが手掛かりとして謎解きに使ったものの全てが、実際に機能するものである必要があった。例えば、作中に出てくる任天堂パワーマガジン(アメリカの任天堂が発行している雑誌) の中の地図。あれも本物を使っている。」

『アメリカン・スリープオーバー』、 『イット・フォローズ』、『アンダー・ザ・シルバー・レイク』、同じ監督が制作したとは思えないほどそれぞれジャンルもテイストも全く異なる作品である。異なるテイストの作品をつくることは監督にとってどのような意味をなすのだろうか。

「違うことを試して実験するのが好きなんだ。 『アメリカン・スリープオーバー』は甘酸っぱい成長物語で、『イット・フォローズ』は奇妙で不穏なホラー。今作が何なのか明確にはしたくないけれど、『アンダー・ザ・シルバー・レイク』はミステリーというジャンルに当てはめることができる。若者が主人公であることが共通しているとはいえ、作風も雰囲気も確かに異なる。でも全て私から生まれた作品ではあるから、三作とも観た人なら何かの繋がりを感じる人もきっといるのではないかな。」

「すでに自分の中に異なるジャンルの台本をたくさん持っているんだ。そしてこれからもどんどん冒険して様々なジャンルの映画をつくり続けていきたいと思っている。 『アメリカン・スリープオーバー』を観た後に『イット・フォローズ』を観て驚く人たちの反応をみるのが好きなんだ。今後も観客からそのような反応をみることができるような映画を制作していきたいと思う。でもそれは一度試したジャンルの作品をもう二度とつくらないという意味ではないんだ。またホラーやミステリーをつくる可能性も、『アメリカン・スリープオーバー』のようなナチュラルな作品をつくる可能性も大いにある。伝えたい物語も試したいことも私には溢れるほどたくさんあるんだ。」

今作の主人公サムを演じるのは舞台『エンジェルス・イン・アメリカ』で先日トニー賞主演男優賞を獲得した、アンドリュー・ガーフィールド。彼を選んだ理由として、ミッチェル監督は

「彼は素晴らしい俳優だと思う。魅力的で人を惹きつける強い個性がある。感じのいい一方で時には強烈なことをする、そんなサムを演じるのにぴったりだった。」

と話す。

また本作は、第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されたことでも話題を呼んだ。カンヌ国際映画祭で自身の作品が上映されることについて、監督はこう語る。

「脚本を書いている時から、今作をカンヌで上映したいと思っていた。賞をとるかどうかということではなく、カンヌは映画とは何かということを象徴するような誇り高い歴史ある場所だからだ。カンヌで上映されるということは、私にとってとても意味のあることだった。」

最後に、ミッチェル監督にとって映画とはどのようなものであるのか。

「とにかく、映画が好きなんだ。それがどんなジャンルであろうともね。私にとってそれが何よりもの喜びの原点だ。映画を観るのも、脚本を書くのも、監督するのも、大好きだ。映画の歴史に存在するいくつかの要素を少しずつつまみ出してアレンジしながら自分のアイディアを付け足して、最終的にユニークで自分にとって面白いと思えるものをつくっていきたい。映画監督になることは小さい頃からの夢だった。監督という肩書きではなく、自分が試せることの可能性が広いということが何よりも重要なことだった。またそして自分がつくりあげたものを観客が様々に解釈できるというのも、映画の素晴らしいところだと思っている。だからあえて映画の意味やメッセージを説明したくない。『アンダー・ザ・シルバー・レイク』は前二作よりもさらに多様な解釈ができるような作品となっているんだ。きっと観客はこの作品を何度も繰り返し観て、毎回異なる解釈をして楽しむことができるのではないかな。」

参照記事

https://deadline.com/2018/05/under-the-silver-lake-david-robert-mitchell-cannes-interview-news-1202379532/amp/

http://www.indiewire.com/2018/03/under-the-silver-lake-release-synopsis-david-robert-mitchell-andrew-garfield-1201934032/amp/

David Robert Mitchell’s Under the Silver Lake — Tit Follows

http://ew.com/movies/2018/05/02/andrew-garfield-under-the-silver-lake/

樋口典華
映画と旅と本と音楽と絵画が、とにかく好きで好きでたまらない、現在、早稲田大学1年生。


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