[637] リナ・ウェイス – いま、ハリウッドで最も熱い女性 –


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リナ・ウェイスが熱い。脚本家、女優、プロデューサーとしてマルチな才能を発揮する彼女。いまや、ハリウッドの誰もが彼女と組みたがっている。

昨年の『第69回エミー賞』で、脚本賞(コメディー部門)を受賞した初めての黒人女性としてご存知の方も多いのではないだろうか。また、スピルバーグ監督最新作『レディ・プレイヤー1』をご覧になった方には、主人公の親友、エイチ/ヘレンとして馴染みがあるだろう。映画、TV業界でのキャリアの他に、オープンリーゲイで「TIME’S UP」の活動家でもある彼女は、多くの女性、性的マイノリティー、アフリカ系のコミュニティーにとってもキーパーソンだ。

リナは、1984年シカゴ生まれ。母親と祖母に育てられ、暇さえあればテレビを見るテレビっ子だったという。「母は、好きなものを何でも見ていいと言ってくれた。R指定のものもね!ただ、見たことを真似するなと言われただけ。それで、7歳の時には脚本家になると決めていたの。」*1

母親は、リナの夢を叶えるための協力を惜しまなかった。しかし、そんな母親に対しても、自分のセクシャリティを打ち明けるのには時間がかかったという。 そして、リナ自身のカミングアウトの経験をもとに作られたのが、主演・脚本のアジズ・アンサリと共にエミー賞を受賞した、『マスター・オブ・ゼロ』(Netflix)のエピソード、「サンクスギビング」だ。リナが演じるデニースは、毎年「サンクスギビングデイ(感謝祭)」を家族で過ごし、母親とたわいもない話をしていたが、大事なことは言い出せずにいた。エピソードは、彼らのサンクスギビングデイを長年にわたって追いかけながら、デニースの成長や母親との関係を繊細にとらえる。

リナは、「デニースがどうやって、自信に満ちたレズビアンの黒人女性になったかを伝えたかった」という。*2

そんな彼女のエミー賞での力強いスピーチは、多くの人の心を打った。

「この作品を愛してくれた皆さん、そして特にLGBTQIAのみんな。私たちの個性は、スーパーパワーだということを忘れないで。毎朝、心にヒーローマントを羽織って出かけて、世界に打ち勝つ。だって、もし私たちがいなければ、世界は今ほど美しくはないのだから。」*3

しかし、彼女はこれまで自分のカミングアウトについて語る必要を感じたことはなかったそうだ。

「それは、私がそのことを恥じているとか、重要じゃないと思っているわけじゃない。私はただ、有色人種の性的マイノリティとして、自分の話が必要とされていると感じられなかった。エンターテインメント産業ではよくあることだと思う。」*4

「黒人のライターとしてやっていくのに一番難しいことは、白人の上役に黒人の物語を売り込むこと。だいたい、その中に一人は黒人の上役がいるけど、彼らは味方になることもあればそうじゃないこともある。一人でも黒人がいれば私の気が楽になると思っているのか、多様性に意識的な会社だとアピールしたいのかわからないけど、恩着せがましく感じるね。批判したいわけじゃなくて、ただ私が言いたいのは、もっと彼らを増やしてということ。」*5

リナは、デニースのように黒人女性がカミングアウトする物語を一度も映画やテレビで見たことがないという。

「だから、Netflixのキャンペーンでたくさんの人がハッシュタグ”#FirstTimeISawMe(初めて私を見つけた)”をつけて感想を言ってくれたのは感動した。特に、私はレズビアンの中でも変わったタイプだと思うから。女らしくもなければ、男らしくもない。でも、実はそういう女性は世の中にたくさんいると思う。人々に理解されなくても、見えていなくても、みんな間違いなくコミュニティの一部だから。」*6

そんな彼女は、『レディ・プレイヤー1』で演じたエイチ/ヘレンについて、「男の姿でも女の姿でも、中身は変わらず自信にあふれているところ」が気に入っているそうだ。

「彼女は、仮想現実”オアシス”の中で男の姿をして、男らしく振る舞う。現実世界では女性だけど、女らしく振る舞うかと言われれば、そうではない。人は彼女を見た目で判断するかもしれないけど、ヘレン自身は全く変わらない。どんな姿でも、自信に満ちている。」*7

彼女が表紙を飾り話題になった「Vanity Fair」は、彼女を”Game Changer(既存の体制に変革をもたらす者)”だと表現した。

等身大の自分自身でいることを恐れないリナの姿は、多くの人に勇気を与えるだろう。彼女は、「ゲイの黒人女性であることは、革命的なことではない。それを誇りに思うのが、革命的なこと」だという。*8

そんなリナの新作は、シカゴの黒人コミュニティを描いた『The Chi』(すでにシーズン1がアメリカ国内で放送され、シーズン2の製作が決まっている)と、レズビアンの黒人女性とストレートの親友たちの日常を描いた『Twenties』だ。どちらも彼女が長年あたためてきたプロットだという。
これからも、ハリウッドの新しい台風の目であるリナから目が離せない。

*1,5
https://www.vanityfair.com/hollywood/2018/03/lena-waithe-cover-story

*2,4,6
http://www.indiewire.com/2017/08/master-of-none-lena-waithe-emmy-nomination-ready-player-one-1201865049/

*3
http://time.com/4945661/lena-waithe-emmys-speech-master-of-none/

*7
https://www.reuters.com/article/us-people-lenawaithe/a-minute-with-lena-waithe-as-a-guy-or-a-chick-in-ready-player-one-idUSKBN1H41SL

北島さつき World News&制作部。 大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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