世界各国で話題となっていた「君の名前で僕を呼んで」が先月27日ついに日本でも公開された。この作品に心を掴まれ一度に限らず二度三度と劇場に足を運んだ人も多いことだろう。今回は、そんな同作品を監督したルカ・グァダニーノ監督の新作 “サスペリア (原題: Suspiria) “について取り上げたい。


(サスペリア 1977年)

“サスペリア” というと1977年にダリオ・アルジェント監督によって制作された同題の作品が思い浮かべられる。ベルリンのバレエスクールでバレエを学ぶためにドイツに渡ったアメリカ人のダンサーを襲う数々の恐怖が、独特な色使いと、音響立体移動装置によって増幅された恐怖の音楽と共に描かれた、ホラー作品である。

グァダニーノ監督は、このアルジェント監督による”サスペリア”が自身に与えた多大な影響について、こう話している。

“私のつくる全ての映画は、ティーンネージャーの頃の夢に基づいているが、”サスペリア” はわたしが最も著しく、かつ正確に誇大妄想をした夢であったんだ。11歳の時にポスターを目にし、14歳の時に初めて映画を観てとても衝撃を受けた。即座に自分のバージョンのこの映画をつくりたいと思った。”

しかし彼は、今回の作品が1977年の作品の “リメイク” と言い切ることはできないと話す。

“この映画は、少年だった私を今日の私にした作品だ。今回の作品は、あくまでもその時に感じた信じられないほど強烈な感情に対するオマージュである”

“私達は人生の間にいくつの素晴らしい “ハムレット” を観たであろうか。ハムレット、という題の作品はたくさんあろうとも、それぞれは根本的に異なっているであろう。芸術はオリジナルを生み出すことだけではなく、それぞれの新しい見方を見つけ出すことでもあるのだ” と、今回の作品は過去にできたものと”同じ”ものをつくり直したものというよりも、自らの感情に基づく、全く新しいものだとしている。

また、注目すべきは俳優たちである。アメリカからのバレエダンサー、スージーを演じるのは、グァダニーノ監督作品”胸騒ぎのシチリア”にも出演した、ダコタ・ジョンソン。ダコタは”サスペリア”の撮影中、精神的にかなり追い込まれセラピーに通わなくてはいけなくなったほどだと話していて、彼女の体当たりの演技にも期待が高まる。また、今作品にはティルダ・スウィントン、クロエ・グレース・モレッツ、ミア・ゴースなど数々の豪華な俳優、そしてなんと1977年の”サスペリア” でスージーを演じたジェシカ・ハーパーも出演をしている。彼女は今回の作品について、“君の名前で僕を呼んで、からは想像もつかないくらいの恐怖。今まで観たどの映画よりも恐ろしい。いかにグァダニーノ監督が稀有な多才であるかがよく分かる作品だ” と語っている。

また1977年のサスペリアでは、ゴブリンによる不気味で独特な音楽が作品の中でとても重要な役割をなしていたが、今回の作品で楽曲を担当するのはイギリスの人気バンド、レディオヘッドのメインボーカルであるトム・ヨークだ。グァダニーノ監督は彼の音楽を絶賛していて、“トムの独特で奥行きのある音楽は現代を超越するものであり、彼の作り出す音をこの作品で使うことは、まさに夢だった。私たちのゴールは、心をかき乱し、遷移させるような映画をつくることであり、それを実現するのにトム以外に素晴らしいパートナーはいない。”と、話している。

“サスペリア” は2018年11月公開。日本でも2019年1月の公開が予定されている。

樋口典華
映画と旅と本と音楽と絵画が、とにかく好きで好きでたまらない、現在、早稲田大学1年生。


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