『レディ・プレイヤー1』は、ノスタルジーで溢れている。その映画で、作曲家のアラン・シルヴェストリは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の音楽を再考し、映画史を象徴する楽曲を再構築した。

イースターエッグを求めてパーシヴァル(タイ・シェリダン)が率いるチームは、オーバールック・ホテルへと向かう。そこは、1980年のスタンリー・キューブリック監督による『シャイニング』のセットである。彼らは、その場所でオアシスとして知られるヴァーチャル世界を救うために、謎を解き明かさなければならない。

オリジナルのスタンリー・キューブリック監督の映画に登場する場所を再び作り上げるために、オーバールック・ホテルには、実際のセットとCGIが使われている。スティーヴン・スピルバーグ監督は、そのシークエンスで本物を追求することに対しては譲歩しなかった。そして、シルヴェストリの音楽はその鍵となっていた。

「スティーヴンは、オリジナルスコアを求めました。その映画への信頼となるからです。その映画で再構築をし、彼がどのようにショットを映し出すのかを見ることは、とても楽しかったです」とシルヴェストリは述べた。シルヴェストリは、ウェンディ・カルロスとレイチェル・エルカインドの音楽からインスピレーションを得た。カルロスとエルカインドは、『シャイニング』における作曲家である。

未来を表現したセットにもかかわらず、シルヴェストリは映画の年代を定めたり、感情の面で空虚さを感じさせる未来的なサウンドを求めなかった。

「このスコアでは、2045年の音楽がどのようなものであるのかということをまったく考えてはいませんでした。キャラクターの感情を表現し、アクションを重視したのです。それらは、時代を超えた感覚です」とシルヴェストリは話した。

クライマックスのスコアは、特にシルヴェストリにとって挑戦であった。パーシヴァルがオアシスの創設者のひとりであるジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)のアバターと出会うシーンである。ハリデーは、病気であると診断された後に、オアシスの管理権のためのコンテストを設ける。そして、彼は、自分の余命が長くはないことを悟っている。このシーンは、ハリデーの子供時代のベッドルームを再構築した空間である。パーシヴァルへとオアシスの管理権を譲る際の本質に関わっている。

「スティーヴンと話をした後のことです。ハリデーは悪い診断を受けた後、彼はほかの誰かに自分の子供を譲渡しているかのように思いました。オアシスは、彼の創造物です。それは彼の人生の頂点にある作品なのです。彼は、自分がすでに面倒を見ることができなかった子供への新たな親を探し出すために、とても良い方法を考案したのです。そして、ある人物が純粋な心を持っていると分かるのです。その人物は、彼が行っていたようにオアシスにあるかけがえのないものを愛していたのです」とシルヴェストリは語った。

シルヴェストリは、スピルバーグ監督と仕事をすることは、ジョン・ウィリアムズの音楽によって、自分の音楽が脅かされることであると告白している。シルヴェストリは、ウィリアムズのことを「映画音楽を作曲する最も偉大であると考えられるアーティスト」と呼んでいる。ウィリアムズとスピルバーグ監督は、1974年の『続・激突!/カージャック』から2017年の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』までのほとんどの映画作品で一緒に仕事をしてきた。そして、スピルバーグ監督は、シルヴェストリとウィリアムズと共に、同時に『レディ・プレイヤー1』と『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に取り組んだ。『レディ・プレイヤー1』の音楽を作曲する時期に、スピルバーグ監督は、早撮りであった『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に集中しなければならず、そのために、ウィリアムズはどちらか一方の作品のみを選ばなければならなかった。そのスケジュールの関係から、『レディ・プレイヤー1』には、シルヴェストリが抜擢されたのである。
シルヴェストリは、正直に自分がウィリアムズのような熟練したピアノのデモを提出することができないことを明らかにした。それゆえに、スピルバーグ監督は、映画の最初のカットをシルヴェストリに送り、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の撮影が終了した後の丸一日を、オーケストラセッションに充てるという予定を組んだ。シルヴェストリは、完全な自由の中で、スコアを書き始めた。

「スティーヴンは、映画における最初のカットを見せてくれました。それから、彼は『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のために、立ち去りました。その間、私は、30分の音楽を書きました。彼は、そのカットを基にして私が思い付いたことをとても支持してくれました。私たちは、私の初期のアイデアを演奏するライヴオーケストラと共に、スタジオで一日を過ごしました」とシルヴェストリは述べた。

数週間が過ぎ、スピルバーグ監督は、ロサンゼルスに戻り、先がどうなるのか分からないままソニー・スコアリング・ステージに到着した。初めにシルヴェストリが最初のシーンのための金管楽器のファンファーレを指揮をした。その際に、スピルバーグ監督は、8フィート離れて座っていた。

「楽曲が終わりました。そして、スティーヴンは椅子のから立ち上がり、自分の右手を挙げて『いいね!』と言いました」とシルヴェストリは述べた。聖歌のようで、式典を表現したようなファンファーレは映画のメインテーマとなった。

「自分が審査される上で、とても愛情がある方法でした。お互いに抱き合い、一緒に退席しました。『うまくいった。やり遂げられる』と。そして、そのすべてが楽しい一歩でした」とシルヴェストリは続けた。

シルヴェストリは、最初の日に30分の音楽をレコーディングし、その多くはファイナルスコアに残った。

スピルバーグ監督にとって、映画の中で音楽の敬意をポップカルチャーの引用に払うことは不可欠であった。特にロバート・ゼメキス監督の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の3部作においてである。その3部作で、スピルバーグ監督は、プロデューサーを務め、シルヴェストリは音楽を作曲した。

「スティーヴンが述べたことがいくつかあります。『僕は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に似た何かを望んではいません。同じスコアとその固有の部分が欲しいのです。映画の中でそのスコアが存在したような使い方でそのスコアを求めています』と。スティーヴンは、そのスコアをとても楽しんでいました」とシルヴェストリは語った。また、シルヴェストリによれば、スピルバーグ監督はVRテクノロジーが人間らしさを解釈し得るという前向きな見方を存在させようと考えた。

「この映画では、とても希望に溢れていて、楽観的なヴァーチャル・リアリティを見ることができます。人間性から離れたり、気が紛れる道具とは違って、愛と交わりに基づいて、ヴァーチャル・リアリティを扱っています」とシルヴェストリは語った。

スピルバーグ監督は、シルヴェストリが「多くの気分を引き立たせてくれる推進力」を映画に与えてくれたことを賞賛した。「シルヴェストリの音楽は、背後にあるのではなく、中心の特色であり、大きな部分を担って意識させるように意図されています。ジョン・ウィリアムズのように、アランはテーマ曲を合わせていく目的を理解しているのです。映画から離れても、キャラクターを思い浮かべるために口ずさむことができるテーマ曲であり、そして、幾分、オペラのように作られた映画において、エピックな楽章でもあるのです」とスピルバーグ監督は述べた。

「美しいメロディで、オーケストラで演奏され、テーマ曲がある音楽を書く機会を得られたことは驚くべきことです。このような音楽をいまだに必要としてくれているのですから。映画において、ジョン・ウィリアムズ氏が明確にテーマ曲の力を示してくれたことに幾度となく感謝しています」とシルヴェストリは話した。

ウィリアムズは86歳を迎えた。ある日、彼はスコアリングステージに現れ、シルヴェストリが自分のスコアを指揮している間、スピルバーグ監督と共に座っていた。その時のことをシルヴェストリは次のように表現する。

「私は2人にとても支えられているように感じました。私は自分の仕事をやり遂げました。それは、自信となっているように思います。スティーヴンは、本当に私がしていたことを気に入ってくれているようでした。それは、いつも通りの仕事でしたが、同時に自分にとって夢のようなことの連続でした。このような経験をする上で招かれて、今、そこに2人が座っているのを見ています。それは心が躍る夢すらも遥かに超えていました。」

参考URL:

https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/ready-player-one-what-is-james-hallidays-motivation-1098908

https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/ready-player-one-premiere-featured-a-back-future-reunion-1097777

http://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-ready-player-one-alan-silvestri-20180330-story.html

https://www.facebook.com/alansilvestrimusic/posts/10155865521432370

http://www.classicfm.com/radio/shows-presenters/classic-fm-chart/ready-player-one-chart/

http://www.classicfm.com/radio/shows-presenters/classic-fm-chart/ready-player-one-holds-no-1/

https://www.philstar.com/entertainment/2018/04/20/1807488/ready-player-one-has-hot-new-movie-soundtrack

http://www.alansilvestri.com/

宍戸明彦
World News部門担当。IndieKyoto暫定支部長。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程(前期課程)。現在、京都から映画を広げるべく、IndieKyoto暫定支部長として活動中。日々、映画音楽を聴きつつ、作品へ思いを寄せる。


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