いよいよ5月8日に開催が迫った第71回カンヌ国際映画祭。先週火曜日にそのラインナップが発表され期待と興奮が高まる中で、リストに入っていないことが驚かれている作品が少なからずある。今回はその中でもリスト外の事実に大きな衝撃が走った、グザヴィエ・ドラン監督の “ The Death and Life of John F. Donovan” (ジョン・F・ドナバンの生と死) についてとりあげたい。

この作品は、架空の人気俳優ジョン・F・ドノバンの人生がゴシップ騒動により暗転する様子を描く風刺劇で、ドラン監督の初となる英語作品でもある。2016年夏に制作が開始され、2017年の初めに撮影が終了した。カンヌ国際映画祭では、同監督の過去6作品中5作品が上映されていて多くの賞も受賞している。
そのため今回も少なくとも上映は確実だろうと言われていた。今年2月にジェシカ・チャステインのキャラクターの出演シーンがストーリーとの適合性の問題でカットされるなど、制作上の変更による遅れはあったものの、同作品はカンヌ国際映画祭に提出され、映画祭側からも招待されていたという。しかし、今回はドラン監督側からの辞退という結果になった。その理由について監督は “まだこの作品には最終的な編集を加える余地があり、カンヌ国際映画祭で上映するのには適していないと感じた” と話している。最終的には今年中の公開を目指しているそうだ。

カンヌ国際映画祭では、19歳にしてデビュー作「マイマザー」を上映してからというものの、数々の賞を獲得してきたドラン監督。「胸騒ぎの恋人」、「わたしはロレンス」の制作後、2014年のカンヌで「マミー」が、ジャン=リュック・ゴダールの「さらば、愛の言葉よ」と共に審査員賞を獲得した。続く2016年のカンヌでは、「たかが世界の終わり」が批評家からのバッシングや反対が多くあったにも関わらずグランプリを受賞。受賞後、ドラン監督は自身のインスタグラムに “次回作はカンヌに出すか分からない。不必要で意味のない煽りや荒らし、そして中身のない多くの嫌がらせは、映画とその批評という冒険の中で切り離せないものであってはならない” との投稿をした。このことが今回のカンヌ国際映画祭の辞退に関わりがあることも懸念されていた。

しかし先週、ドラン監督はカンヌ国際映画祭自体はサポートし続けていることについて明らかにした。”カンヌで生まれたんだ。カンヌ国際映画祭は典型的な矛盾や毒性を含むところがあるにもかかわらず、人々が物語を伝えることやアート楽しむことのできる場所だ”

また、”実は新作はカンヌの風土にぴったりとあっているんだ。名声と賞賛について、そしてアーティストが高潔な人生を歩むことができるかということについても描いているんだ。アートとアーティストを祝福するこの映画祭での上映にぴったりだ” とも話している。今回の辞退はあくまでもタイミングの問題であったことを明らかにした。

オープニング作品と噂されていた今作だが、最終的にオープニング作品となったのは“Everybody knows”。監督はイラン人のアスガー・ファルハディ。ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルスが主演の全編スペイン語の期待の作品である。

日本からは、是枝裕和監督の「万引き家族」と浜口竜介監督の「寝ても覚めても」がノミネートされている。第71回カンヌ国際映画祭の盛り上がりに今年も期待が高まる。

参照記事

Xavier Dolan Says ‘The Death and Life of John F. Donovan’ Was Accepted to Cannes, But They Decided Not to Go — Exclusive

https://www.thestar.com/entertainment/movies/2018/04/12/canadas-xavier-dolan-pulls-his-english-language-debut-from-cannes.html

https://www.pastemagazine.com/articles/2018/04/the-official-selection-for-the-2018-cannes-film-fe.html

Cannes 2018 Wish List: 37 Movies We Hope Make the Cut, From Barry Jenkins to Claire Denis

樋口典華
映画と旅と本と音楽と絵画が、とにかく好きで好きでたまらない、現在、早稲田大学1年生。興味をもったことは、片っ端から試します。


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