去る3月2日、『BPM ビート・パー・ミニット』が満場一致で作品賞に輝き、第43回セザール賞授賞式が幕を閉じた。本作での好演で有望若手男優賞に輝いたナウエル・ペレーズ・ビスカヤートを始め、司会のマニュ・パイェットや最優秀女優賞を受賞したジャンヌ・バリバール、ヴァネッサ・パラディ、ダニー・ブーン、ペネロペ・クルスなど多くのスターが「クロスした白いリボン」を胸につけていた。これは一体…

 セザール賞授賞式を数日後に控えた2月27日、リベラシオン紙は性的暴力による被害者支援を呼びかける映画界の女性たち(女優・監督・プロデューサー・コメディアンら)が団結したことを伝えた。今回発足したのは、女性のための財団「Fondation des femmes」とフランスで活躍する著名人らによる≪#Maintenant on agit≫(今こそ動くとき)という新しいムーブメント。当誌に掲載されたこのムーブメントの経緯を以下に引用する。


 言葉は解き放たれた。では、行動は?ワインスタイン騒動の中で、女優たちは男尊女卑思想と女性への性的暴力について徹底的に非難の意を表した。そして今、彼女たちは行動を求めている。女優と行動、これらは切っても切れない関係にある。女性のための財団「Fondation des Femmes」と組んだ女優たちは、このムーブメントの発表の場としてリベラシオン紙を選んだ。そしてセザール賞受賞式に際して、慎ましくも確固たる信念を表明することを宣言した。

 世界中に広まったフランス発の#balancetonporc(豚を告発せよ)やアメリカ発の#metooというハッシュタグ。この爆発的事態を受けて、女性を擁護する団体らは対応不足に陥っている。すべてに対応するには対策の見直しが必要だ。トニー・マーシャル(監督、代表作は『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』)とジュリー・ガイエ(女優、日本では前大統領フランソワ・オランドのパートナーとしての方が有名かもしれない)を中心とした女優やプロデューサー、監督たちで構成された小さなグループは、「Fondation des femmes」と連結することを決め、彼らに協力を求めた。「Fondation des femmes」とは2016年パリに設立され、男女平等の実現と女性への性的暴力と闘うことを目的とした財団。女優たちの思いに応えるには、また多くの被害者たちを救うには、時間と資金が不可欠である。そのためにも、セザール賞授賞式という世間の注目を一挙に集める場で、“ある方法”を用いて意思表明を行うことには大いに意味があるのだ。そのある方法とは、「白のリボン」を身に着けること。話そう、これが最初の一歩だ、変わるチャンスだ。行動するときが来た。

 

NOTRE APPEL(私たちの呼びかけ)※

On a subi. 私たちは受けた。
状況、職業、背景は違えど、私たちは受け、性差別や暴力の目撃者であった。

On a enduré. 私たちは耐えた。
あれは過去のこと、本当は何もなかったんだ、と自分に思い込ませた。声にならない怒りを殺して。

On s’est tu. 私たちは黙った。
多くの場合、私たちは何も言わなかった。恐怖のせいで。忘れるためにはそうするしかなかった。それに、私たちは例外なんだと思いたかったから。

On a crié. 私たちは叫んだ。
長い間誰にも届くことのない叫びを発していた人も多い中、数か月前、ある女優が沈黙を破った。

On a balancé. 私たちは発した。
彼女たちがついに口を開いた。世界中の何百万人の女性がそれに共鳴した。ソーシャルネットワークのおかげで、彼女たちの体験を共有することができた。

On a dénoncé. 私たちは咎めた。
こうして多くの女性は、初めて告発する勇気をもった。

On a rassemblé. 私たちは集めた。
私たちは確信したから。明日を、今日とも昨日とも違うものにしていかなければと。

On a polémiqué. 私たちは言い争った。
私たちはあらゆる性差別を経験してきたが、対処法については全員一致ではない。それぞれの意見を持っているから。

Maintenant on agit. 今こそ動くとき。
私たちはそれぞれ違う。しかし目的は同じ。今まさに苦しんでいる人のためにもっと優しい今日を作りたい。そして、私たちの息子や娘のために落ち着いた未来を作りたい。性的暴力による被害者たちは、彼女たちに寄り添う組織によって尊厳をもって対応されるに値する。正義を前にしたとき女性の立場は弱いため、誤った導き方をされていないかを懸念している。今こそ動くとき。彼女たちを、そして既に行動している人を一緒に皆で支えよう。#MeTooという声が聞こえなくなる日まで。さあ、募金を。

 

賛同者一部:
ジャンヌ・バリバール、サンドリーヌ・ボネール、ザブー・ブライトマン、マリオン・コティヤール、ジュリエット・ビノシュ、イザベル・カレ、アナイス・ドゥムースティエ、 エマニュエル・ドゥヴォス、ヴァレリー・ドンゼッリ、ジュリア・デュクルノー(『RAW~少女のめざめ~』監督)、 サラ・フォレスティエ、ジュリー・ガイエ、アデル・エネル、ミシェル・アザナヴィシウス、セドリック・クラピッシュ、ダイアン・クルーガー、イジルド・ル・ベスコ、トニー・マーシャル、キアラ・マストロヤンニ、アナ・ムグラリス、ヴァネッサ・パラディ、クレマンス・ポエジー、セリーヌ・サレット、レベッカ・ズロトヴスキ、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズ(歌手)、ソコ(歌手)、マリ=アニエス・ジロ(バレエダンサー)、レイラ・スリマニ(ゴングール賞受賞作家)など。

※「Fondation des femmes」公式HP(https://fondationdesfemmes.org/)から引用・翻訳。賛同者一覧はこちらをご覧ください。


参考URL:
http://www.liberation.fr/france/2018/02/27/maintenant-on-agit-les-femmes-du-cinema-francais-s-engagent_1632572

https://fondationdesfemmes.org/

https://www.facebook.com/pg/FondationDesFemmes/about/

http://www.elle.fr/Loisirs/Cinema/News/Maintenant-on-agit-le-cinema-francais-s-engage-contre-les-violences-sexuelles-3633929#

田中めぐみ
World News担当。在学中は演劇に没頭、その後フランスへ。TOHOシネマズで働くも、客室乗務員に転身。雲の上でも接客中も、頭の中は映画のこと。現在は字幕翻訳家を目指し勉強中。永遠のミューズはイザベル・アジャー二。


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