先月末発表され盛り上がりを見せたアカデミー賞。過去のIndieTokyoでもその名司会者(*1)、外国語映画賞受賞の『イーダ』(*2)、スピリット・アワード(*3)など知られざる一面について触れてきた。今回は、Varietyに掲載された「今年度のアカデミー賞受賞結果から分かる4つの教訓(”Four Big Lessons From This Year’s Oscars”)」を紹介し、今年度の傾向を総括したい。

 

1.映画祭は侮れない

受賞作品である『6才のボクが、大人になるまで。』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『セッション』など受賞作品8作品はすべて映画祭で既にお披露目されていた作品であった。ここ10年でアカデミー賞授賞式の日程が1カ月ずれたことにより、各映画祭での受賞結果による影響力が極めて強くなったといえる。例えば『6才のボクが、大人になるまで。』『セッション』は2月のサンダンス映画祭で既に受賞済みであるほか、米国各都市の映画批評家協会賞では各15都市による監督賞・作品賞は『6才のボクが、大人になるまで。』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のいずれかが総なめしていた。アカデミー賞前に開催される各映画祭でのお披露目は海外のプレスにも大なり小なり浸透し、業界の投票有権者たちによる「観たい衝動」を掻き立てる。

 

2.熱心な宣伝活動は受賞に直結はしない

例年レセプションや事前上映、Q&Aが精力的に行われるが、受賞結果に直結しているとは一概には言えなさそうだ。助演女優賞のパトリシア・アークエット、助演男優賞のJ.K.シモンズ、主演男優賞のエディー・レッドメインは至る所に出現していたが、作品賞・監督賞・脚本賞受賞のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは多忙その回遊には見られなかった。熱心なキャンペイナーだったリチャード・リンクレイター、マイケル・キートンは受賞を逃し手ぶらの帰宅となった。握手や個人的な親交が受賞までの貴重な一票をいかに左右しているか知る術はないが、たかが一票されど一票の世界、熱心なPR活動も誰もが落としたくない一票のためであることに違いない。

 

3.編集賞と作品賞は一致しない

事前に多くの映画専門家たちから「編集でノミネートすらされていない『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は勝てない」と予測されていたが、実際は異なるものとなった。1980年に作品賞を受賞した『普通の人々』以来、編集カテゴリーで最低1ノミネートがあるかどうかが重要な要素であり、「編集賞=作品賞」が暗黙ルールのようなものとなっていた。また『6才のボクが、大人になるまで。』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』はその高い知名度から、どちらかが作品賞、もう一方が監督賞を獲るという結果になるだろうと推測する批評家もあった。

 

4.オスカー審査員は批評家の好みと異なっている

『6才のボクが、大人になるまで。』は多くの映画批評家賞を受賞した反面、アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞を『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が牛耳る結果となった。ここで注意したいのが、批評家賞を選考する映画批評家とアカデミー賞審査員たちが全く別の投票者であるという点だ。1月まで投票の機会を与えられなかったアカデミー賞審査員たちはきっとより深く考え込むか、また時としてより直感的だろう。

 

*0 http://variety.com/2015/film/news/2015-academy-awards-analysis-87th-oscars-who-won-1201440039/

*1 http://indietokyo.com/?p=543

*2 http://indietokyo.com/?p=547

*3 http://indietokyo.com/?p=553

 

内山ありさ

World News部門担当。広島出身、早稲田大学政治経済学部5年。第26・27回東京国際映画祭学生応援団。特技はおじさんと仲良くなること、80年代洋楽イントロクイズ。今春から某映画会社就職予定だが、心はインディー。

 


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