[574] イーストウッド新作について

先日、2018年2月9日全米公開のクリント・イーストウッド監督の最新作『The 15:17 to Paris』のトレーラーが公開され（＃１）、『15時17分、パリ行き』という邦題で2018年3月1日に日本公開されることが発表された。この記事では主に現時点で日本に紹介されていない情報をまとめる形で、本人によるインタビューも引用しつつイーストウッド新作について紹介したい。すでに紹介されている情報については日本版の作品サイトを参照されたい。（＃２）
https://www.youtube.com/watch?v=IC_lnyn2R2Q

まずこの作品はもともとR rating（17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要）を受けていた。このレイティングはThe Hollywood reporterによれば映画の中核をなすtrain attackシーン（作品のモチーフである「タリス銃乱射事件」は英語では”2015 Thalys train attack”と呼ばれる）に対して与えられたもので、CARA（Classification and Ratings Administration　映画分類基準審査委員会）はこれらのシーンを「暴力と血なまぐさいイメージによるシークエンス」として述べている。しかし結局この作品はR ratingを免れることになり、PG-13 Rating（13歳未満の子供の鑑賞は注意が必要）としてアメリカでは公開されることになった。（＃３）

またこの作品は周知のように実話をもとにしているのだが、厳密にはJeffrey E.Stern（及び当事者である３人）による『The 15:17 to Paris: The True Story of a Terrorist, a Train, and Three American Heroes』（＃４）という自伝に基づいている（＃５）。Le Figaroによれば事件の後、当事者である３人はフランスにおいての英雄となり、そして３人はJeffrey E.sternというライターとともに彼ら自身の物語を伝える本を書いた。そしてこの阻止されたテロに関する物語に魅了されたイーストウッドはこの本を映画化することを決心したのだという。（＃６）

最後にEntertainment WEEKLYによるイーストウッド自身のインタビューを紹介したい。（＃７）

記者：何があなたをこの物語に惹き付けたのですか？
イーストウッド：それは大衆に向けた贈り物です。これらの物語は旅に出ていたただの若い人々についてであるが、テロリストが電車に乗り込んだ時、彼らは積極的に行動に移り、潜在的にたくさんの命を救ったのだ。
あなたはどうして映画の主役として実際の人々をキャスティングしたのですか？
私はおそらくきちんと仕事を成し遂げてきたはずのとても優れた俳優たちを見た。しかし私はこれらの若い人々（主役の３人）の顔から視線をそらすことができなかった。「boys」と彼らを呼んだ。彼らの顔は唯一無二であると思ったのだ。そしてすぐにこれは面白い実験になるだろうという考えが私を打ちのめした。やり方によっては大胆で無謀なものになるだろうとは思ったが、とにかく彼らはやる気であり、だから私は彼らとともに撮ろうと思ったのだ。人々は少し驚くだろうがね。しかし事態が進むにつれ、私は他の関係者にも目を向け始めた。私は思ったんだ、彼らはcome backしたいのではないかとね。そのようにして物事は次々に進んだのだ。
あなたは事件が起こった場所で撮影したのですか？
我々はまさにその通りの場所で撮影したんだ。例えばあるカップル、モンゴル人のMarkとIsabelleだが、彼（Mark）は首を撃たれ、ほとんど死にかけていた。その事件の場所に戻り、当時の人々とともに再び訪れることは、彼らのとってある種のカタルシスをもたらすのではないかと思う。そしてそれはおそらくあらゆる人々にとってもカタルシスとなりうるものであろう。