[571] ロッテン・アップル -倫理的に映画を判断する-


 

ロッテンアップルー倫理的に映画を判断するー

 

 過去数ヶ月間、ワインスタインに始まる性被害事件の連鎖的な発覚は、私たちが映画を観る際の感覚を変えつつあるのかもしれない。欧米の映画業界では発覚から数ヶ月がすぎた現在もハッシュタグ#me tooとともに自らの性被害をカミングアウトする運動が起きていたりと、当面は業界の中でのこの問題に対する関心は続きそうである。(一連の事件については過去記事を参照*1)

 このような重要な問題について考えるために、非常に有益でユニークなウェブサイトが今週火曜に開設された。検索するとその映画がセクシャルアラスメントや性犯罪と関係があるかどうか調べることができるウェブサイト、その名も”Rotten Apples” 「腐ったリンゴ」である。(このネーミングは明らかに、米映画レビューサイトrotten tomatoesのパロディーである。)*2

 

 いたってシンプルなこのサイトでは、ただ検索バーに調べたい映画を入力するだけで、その映画が「腐っている」のか、「フレッシュ」なのか一目瞭然にする。もしそれがフレッシュであると、そのテレビないし映画は「性的な非行によって告発されている誰とも関係がないとされています。」と表示され、「腐っている」場合には告発されている個人の名前のリストが役職とともに表示される。そして表示される結果は、告発の記事のリンクになっている。

 例えば、ミラマックスやワインスタインと関係する主要な映画を調べてみると、多くの女性に対する性的非行で告発されているワインスタインについてのニューヨーカー紙の記事リンクが表示される。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし発覚途中の事件をフォローすることの難しさもあり、サイトがこうした人物を完璧に網羅しているわけではない。少し前にドキュメンタリー映画製作者であるモーガン・スパーロックが自身のレイプ、セクシャルハラスメントで訴えられていることを告白したことは、14日の時点では反映されていなかった。*3

 ロサンジェルスに拠点をおく広告会社である「ザンベジ」のクリエイティブディレクターを勤め、サイトの4人のクリエイターのうちの一人であるタル・ワックマンは、このツールはロッテン・トマトやIMDBのように純粋に情報を提供するもので、その映画プロジェクト全体を糾弾することは意図していないと述べる。サイトは利益を生み出すことを考えておらず、「パッションのプロジェクト」であるようだ。

 「私たちは断じて誰かの映画をボイコットすることを提唱しているわけではありません。私たちのチームは、むしろこのツールを通して人々が『倫理的な消費の決断』をする助けをすることを望んでいます。」

 
 告発のドミノが倒れ続けるにつれ、それに合わせてサイトが更新されていくことを、ロッテンアップルのクリエイター達は望んでいる。しかし、同時にサイトがいずれ閉鎖されることになると予期してもいる。「ハリウッドをサポートする幅広い法的な権力が何をしてくるのかわからないので。」と名の知れた報道機関の情報のみを用いているということは付け加えつつ、ワッグマンは述べる。

 彼らが重視するのは、メディアの消費者たちが、このツールによって性的非行に鈍感になってしまわないようにすることだ。
毎日続々と新たな被害が明らかになる。しかしそれに無関心になり、日常化してしまわないでいることが大事であると「ザンベジ」のクリエイティブディレクターであり、チームのメンバーのアニー・ジョンストンはいう。「だから私たちはサイトを維持する必要があると考えているんです。」*4

 一連のセクシャルハラスメント、性被害がこんなにも幅広く発覚したことは、私たちに大きな衝撃を与えることとなった。こうした中で当然映画業界の体質に対する疑問が湧いてくるが、一方で映画を鑑賞すること自体についても改めて考えさせる。つまり、ある映画が「腐っている」のか「フレッシュ」なのか、という倫理的な基準が、映画の鑑賞に影響するのかという問題である。この問いに対する答えは三者三様だろう。このサイトを通じて、自分のお気に入りの映画を調べてみることはこうした思考の助けになるはずである。

*1

http://indietokyo.com/?p=6816

http://indietokyo.com/?p=6991

*2

http://www.indiewire.com/2017/12/rotten-apples-sexual-harassment-1201906865/

*3

https://www.vanityfair.com/hollywood/2017/12/rotten-apples-website-weinstein

*4

https://www.nytimes.com/2017/12/13/business/media/rotten-apples-sexual-misconduct.html

 

村上 ジロー 
World News担当。国際基督教大学(ICU)在学中。文学や政治学などかじりつつ、主に歴史学を学んでいます。歴史は好きですが、(ちょっと)アプローチを変えて映画についても考えていきたいと思ってます。


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