[466]衣装で観る『Hidden Figures』NASAを支えた黒人女性


 『ヴィンセントが教えてくれたこと』でおなじみのセオドア・メルフィ監督の最新作『Hidden Figures』が昨年12月にアメリカで限定公開されたのち、先月13日に拡大公開された。本作は、今まで語られてこなかったNASAの有人宇宙飛行計画を裏で支えた3人の黒人女性を描く。彼女たちは計算手として、1962年にアメリカで初めて地球周回軌道を飛行したジョン・グレンを乗せたロケットの打ち上げに貢献した。

 タラジ・P・ヘンソン演じるキャサリン・ジョンソン、オクタヴィア・スペンサー演じるドロシー・ヴォーン、ジャネール・モネイ演じるメアリー・ジャクソンのそれぞれの性格を視覚的に捉えやすくするため、メルフィ監督はレニー・エールリッヒ・カルフスを衣装デザイナーとして起用した。彼女は『アニー』や『ステイ・フレンズ』の衣装デザインを手がけたことで知られている。
 3人の個性を見分けられるような衣装をデザインするために、彼女は以下のような3人の特徴を分析している。
「キャサリンは真の天才でしたが、試験的に仕事に取りかかりました。彼女は数値を扱える唯一の人物であったため、彼女の責任はどんどん大きくなります。そういう意味で、彼女の衣装は徐々にパワフルになっていきます。ドロシーは監督で、政治的な力を持っていました。彼女は身なりの良い服を着た、高い身分の人でした。そしてメアリーは最も若く、前途有能でボヘミアンな雰囲気を表現したかったのです。だからより反抗的なイメージなのです」

 彼女はこの仕事のオファーを受け、NASAの成功を助けた天才黒人女性の逸話を世に広めることに貢献できると興奮していた。それと同時に、映画が1960年代後半から台頭したヒッピー文化を象徴するベルボトムの流行よりも前の時代であることから、保守的な美的センスで衣装を考えるべきであること、それから、当時の政府機関による厳しいドレスコードとアメリカ南部で強いられていたジム・クロウ法(黒人の一般公共施設の利用を制限・禁止した法律)を反映した衣装づくりを求められていると理解していた。また、冷戦時代で、デモ行進や抗議が行われていた時代だということに留意する必要があった。
 また、NASAで働く人たちの仕事のプレッシャーや一般的なエンジニアの服装を鑑みると、ファッションは彼らにとって優先事項ではなかったので、装飾品や手の込んだ衣装はない。カルフスは、男性の普段着として、グレーのスーツ、白いシャツ、黒いネクタイを作った。女性たちのスカートの裾は膝を覆う長さに決められ、控えめなジュエリーを付けていた。
 当時の様子を知るために彼女は、NASAのアーカイブを熟読しただけでなく、アメリカ南部で政治的・社会的動乱の時代に撮られた写真を入手したり、家族のアルバムを探し出したり、エボニー誌(アフリカ系アメリカ人の雑誌)のバックナンバーに目を通したりした。「当時のヘアスタイルやリップの色、ガードルがどんなだったかを知る良い方法でした」と彼女は語っている。
 下着でさえ、時代を正確に捉えるための重要な要素だった。彼女のチームは、弾丸状のブラジャーを作り直し、本物のガードルを調達した。下着が身体的な表出をどう変えるか理解し、適切なシルエットを生み出すために衣服を何度も試してみることもあった。
「それを身につけることで背筋がピンとします。装着したとき、あなたは別の時代にいるような感覚になるでしょう」と彼女は語る。

 カルフスは、大規模にも関わらず少ない予算で正確な表現を求められ大勢の登場人物が出る込み入ったシーンについて、
「それは挑戦でした。多くのエキストラが必要な大掛かりなパレードが2つあり、 を見つけ、調達し、作らなければなりませんでした。真に迫った行程だったけれど、楽しかったです」と語っている。

 当時の様子を細かく分析して細部にわたって衣装に反映したカルフスの功績にも注目したい作品である。

http://www.hollywoodreporter.com/news/hidden-figures-costume-designer-dressing-taraji-p-henson-octavia-spencer-janelle-monae-954273

http://variety.com/2017/artisans/production/nasa-hidden-figures-costumes-1201951915/

原山果歩 World News部門担当。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程所属。エリック・ロメールとロラン・バルトについて考えています。


コメントを残す