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就任以来、日々アメリカを、世界を揺るがしているトランプ大統領。賛否両論が巻き起こる中、「トランプ嫌い」で有名なハリウッドに、少しずつ変化が起きている。

ヒラリー・クリントンが70%以上の票を獲得したロサンゼルスでは、たびたび大規模なアンチ・トランプのデモが起きている。*1 選挙前の昨年10月には、スターの名前が彫られた星型のプレートが埋め込んであるハリウッドの歩道「Walk of Fame」のトランプの星が割られる事件もあった。*2 メリル・ストリープやロバート・デ・ニーロなど俳優や、ジョス・ウェドンをはじめとする監督やハリウッドのクリエイターたちも反トランプで有名だ。人種差別や性差別に対して声を上げてきた人が多く、実際に多様な人々が暮らすハリウッドでは、当然といえるだろう。

また、今回のイスラム圏7カ国の入国禁止の大統領令はハリウッドのエンターテインメント産業に特に不安を与えている。今や、かつてないほどグローバル化が進んでいるハリウッドでは、外国のスターを出演させたり、才能あるクリエイターを外国から呼んだり、他国と共作したりすることが当たり前に行われている。人々が自由にアメリカを訪れることができるという前提のもとに、これらはハリウッドの発展の重要な要因の一つとなった。しかし、今回の大統領令はこうした自由を奪うものだ。*3

今年のアカデミー賞で新作の『セールスマン』が外国語映画賞にノミネートされているイランのアスガー・ファルディ監督は、今月26日に行われる授賞式の出席を辞退した。彼は、「世界を『我々と彼ら』に分け、『彼ら』に対して恐ろしいイメージを作り上げ、不安を人々に抱かせるのは、イランの強硬派と同じ考え方だ」と入国禁止令を批判した。*4 一進一退をくりかえすこの大統領令の今後に、ハリウッドも注目している。

このような状況の中、俳優のマシュー・マコノヒーは「そろそろトランプが私たちの大統領となった事実を受け入れ、今後4年間、彼と生産的に付き合っていくことを考えるときじゃないか」とBBCのインタビューで語った。*5

先月の大統領就任式の前には、マコノヒーをはじめとして、エマ・ストーン、アンドリュー・ガーフィールド、エイミー・アダムス、クリス・パイン、ナタリー・ポートマンら俳優たちが、グロリア・ゲイナーの1979年のヒット曲「I Will Survive」を歌い、「トランプ政権下を生き抜いていこう」と前向きなメッセージを発した。*6

実際に、批判的な見方ばかりではなく、ビジネスに重きをおくトランプ大統領が、ハリウッドの映画産業に不利益となるような決定はしないだろうという楽観的な見方もある。例えば、今後、外国人の労働VISAの手続きが見直される予定だが、むしろビジネスフレンドリーになるのではないかという弁護士もいる。*7

ハリウッドは、トランプ政権下の4年間をどう生き抜いていくのか。そして、その姿は私たちに何を教えてくれるのだろうか。

1
http://edition.cnn.com/election/results/states/california#president

2
https://www.nytimes.com/2016/10/27/us/politics/trump-star-on-hollywood-walk-of-fame-is-smashed.html

3,7
http://www.latimes.com/business/hollywood/la-fi-ct-trump-hollywood-visa-20170131-story.html

4
https://www.theguardian.com/us-news/2017/jan/29/oscars-organiser-says-us-ban-on-iranian-nominee-extremely-troubling

5
https://www.theguardian.com/film/2017/feb/03/matthew-mcconaughey-on-donald-trump-time-for-us-to-embrace-him

6
http://www.wmagazine.com/story/i-will-survive-emma-stone-natalie-portman-amy-adams

北島さつき
World News&制作部。
大学卒業後、英国の大学院でFilm Studies修了。現在はアート系の映像作品に関わりながら、映画・映像の可能性を模索中。映画はロマン。


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