先日アカデミー賞が発表されて日本でも大いに盛り上がりましたが、皆さんはインディペンデント・スピリット・アワードをご存知でしょうか。この賞は毎年アカデミー賞の前日に、いわばアカデミー賞に対抗して、インディペンデント系の映画を評価するべく発表されます。開催の理念的な説明は以下のようにされています。
「30周年を迎えたインディペンデント・スピリット・アワードは、毎年、単純にインディペンデントであり、かつオリジナリティーがある監督たちの作品を讃えてきました。スピリット・アワードはこれまでに、アメリカそして世界のインディペンデントな監督たちの功績を評価し、そのなかで最も優れた作品をより多くの人に広めようと努めてきました。賞はフィルム・インディペンデントとインディペンデント・フィルムメーカー・プロジェクト(通称IFP)のメンバーによる投票で決まります。」(*1)
http://www.filmindependent.org/…/congratulations-to-the-2…/…
http://ja.wikipedia.org/…/%E7%AC%AC30%E5%9B%9E%E3%82%A4%E3%… (wikipediaには日本語でまとめられています)

今年の受賞作は上のリンクの通りですが、面白いのはアカデミー賞と多くの作品が被り違った賞や同じ賞を与えられているということです。『バードマン』、『6歳の僕が大人になるまで』、『アリスのままで』、『CitizenFour』などの中で、例えばアカデミー賞ではアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが監督賞を受賞したのに対し、スピリット・アワードではリチャード・リンクレイターに対して監督賞が与えられました。今度は主演女優賞はアカデミー賞と同様にジュリアン・ムーア(『アリスのままで』)に与えられる、などです。
アカデミー賞と何が違うのでしょうか。しかし、ここまで被ってくるのは今年が特別なだけです。それだけ今年のアメリカ映画が、インディペンデント的に優れた映画が前に出てきた状況を示していると言えるかもしれません。
実際には2000万ドル以下の作品が選考基準となっています。したがって、そこにはアカデミー賞では選ばれない多くの作品がノミネートされているということになります(逆に言えば除外される作品も多くあります)。そして、オスカーを逃したベネット・ミラーの『フォックスキャッチャー』が特別賞で拾われていることなども注目に値します。
ただし、重要なのは以下の1990年にマーティン・スコセッシが示した基本方針だと思われます。「インディペンデントであるということは、スタジオ制作の下で行わない低予算の映画を意味するわけではない、インディペンデントであることは出来る限りのインスピレーションからイノベートしていくための、単なる手段に過ぎない」(*2)
そもそも、選考基準が2000万ドル以下の低予算でありながら、インディペンデントな作風を持った優秀な作品が、多くの観点から評価されるのは喜ばしいことです。それだけ多彩な評価が映画の多様性を広げていくことにも繋がるからです。となれば、アカデミー賞以外での映画評価の枠組みを広げていく試みとして、スピリット・アワードは上手く機能しているのではないでしょうか。
最後に、ジョン・カサヴェテス賞という50万ドル以下の制作費で撮られた映画に与えられる賞があることを記しておきます。今年は、『Land Ho!』という作品が選ばれました。監督はアーロン・カッツとマーサ・スティーヴンスのふたりです。アーロン・カッツ監督はマンブルコア派の中心的監督の一人として有名です。
(*1)
http://www.filmindependent.org/…/2015-film-independent-spi…/
(*2)
http://www.spiritawards.com/30-years/

三浦 翔
https://twitter.com/eggfalcon3
映画雑誌NOBODY
http://www.nobodymag.com/
横浜国立大学人間文化課程
http://hs.ynu.ac.jp/


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